2月15日、都内で開催されたサウンドムーブズの発表会。左からDmetProducts社長の楠氏、サウンドムーブズを発掘したエンジニアのニコリッチ氏、DmetProducts最高執行責任者の佐合氏(筆者撮影)

人の動きにあわせて音を奏でる新しい発想の楽器

人の動きにあわせて、さまざまな音やリズムをスマホなどの端末を通して奏でる、新しい発想の楽器が誕生した。すでに世界17カ国で40万台出荷されているヒット商品で、DMM.comが日本での販売代理店となり2月15日に発売した。

商品名はSoundMoovz(サウンドムーブズ)。手首や足首につけられるリストバンド型で、スマホやタブレットとBluetoothで接続し、アプリで操作を行う。音はスマホのほか、スピーカーからもアウトプットできるので、大きな音でも楽しめる。クラウド上に蓄積された約400種類のデータのなかから好みの音を選んで、あとは装着した機器を動かすだけ。1台のスマホにつき、デバイスを4種類登録することができ、それぞれ違う音を奏でることも可能だ。

たとえば、両手首、両足首につけてリズム系とメロディ系の音の組み合わせを選ぶと、右手と右足を同時に→左手だけ→左足だけというふうに動かすことで、1フレーズ分を奏でることができる。同じ動作を繰り返してもいいし、動作を変えると、また違うフレーズをつなげることができる。複数人でダンスを楽しんでもいい。

そのほか、自分の声など好きな音を録音して同じように奏でられるほか、スマホなどの端末に登録されている音源を使って、音楽に合わせてダンスや演奏を加えることも可能だ。さらに、DJのように音にエフェクトをつけたり、リズムゲームをしたりと、さまざまな音遊びが楽しめる。

開発したのは、DmetProducts社長で、ダンサーでもある楠太吾氏だ。同社は関西の老舗鉄鋼商社の社内ベンチャー。もともとプログラムについて何の知識も経験もなかった楠氏が、2016年6月に立ち上げた。開発拠点として、ハードウエア開発のための機材やシェアオフィス機能を備えたモノづくり施設DMM.make AKIBAを活用したという。

「何のアイデアもなかったのですが、頭がちぎれるぐらい考えて思いついたのが、『今までと逆の発想』でした」(楠氏)

つまり、音楽に合わせて踊るというのは普通の発想。それをひっくり返し、踊ることで音楽をつくれるガジェットがあれば、売れるのではないかと考えた。


音は、スマホと接続したスピーカーからも出力できる(筆者撮影)

「あとは会う人会う人に、アイデアを話しまくっていきました」(楠氏)

そうしたなかで、エンジニアであり現在、同社で最高執行責任者を務める佐合秀昭氏との縁ができ、アイデアの具体化や技術的なブラッシュアップが可能となったという。

開発の過程で重視したのが、小型化、省電力化、そして、遅延(機器を動かしてから、音が出るまでのタイムラグ)を極限までなくすことだった。スピーカーを通すことなどでどうしても生じてしまう遅延をコントロールするのは難しい技術だそうだが、最終的には、ドラムを鳴らす感覚ぐらいまで縮めることができたという。詳細は企業秘密だが、プログラム上の工夫により実現したそうだ。これにより、違和感なくダンスに合わせて音を楽しむことができるようになった。

海外市場を狙った理由

このように、着想からわずか1年で完成、海外ですでに40万台を販売している。しかしなぜ、先に海外市場を狙ったのだろうか? 「もともと主戦場は欧米。売れたら日本に持ってこようと思っていた」という楠氏だが、偶然の要素も多分に大きかったようだ。

商品が完成すると、楠氏は「踊りながらいろいろな人に見せまくった」そうだが、真っ先に食いついてきたのが英国のエンジニア、ニコ・ニコリッチ氏だった。

「『グレイトプロダクト! これは売れます。2カ月後にある商談会に行きましょう』と言われて、急ピッチで準備を進めました。これが2017年の1月です。またも踊りながら商談をし、1週間で20万個以上のオーダーを受けました」(楠氏)

楠氏自身が体を使って商品の魅力を伝えられたのが、商談において功を奏した。以降、おもちゃの展示会に出展するほか、テレビCMやSNSでの発信、イベント開催など、宣伝にも力を入れた結果、米国トイザらスの「2017 HOLIDAY HOT TOY LIST!」に選出されるなど大きな話題となった。

そしてついに、今回日本での発売が実現したわけだ。価格は、2本ペアで7800円(税別)。欧米の人は日常生活のなかでダンスを楽しんでいるイメージがあるが、実際には、子どもの需要が大きな部分を占める。日本でも、まずは子どもや、ダンス好きといった2通りのユーザーに訴求していきたいという。販売チャネルは、アマゾンプライム限定で先行販売し、3月15日以降にヨドバシカメラといった量販店で販売予定。


サウンドムーブズは、パープル、ネイビー、ブラック、ピンクの全4色展開(筆者撮影)

また欧米以外では、アルゼンチンでの販売が決まっているほか、オーストラリアやアジアでの市場展開も具体化しつつある。

さらに、1〜2カ月以内に機能のアップグレードも予定している。今はもともとインストールされている音か、自分で録音した音しか使えないが、たとえばネットで公開されている音を自由に追加できるようになる。また、ライブ配信機能を追加し、オンライン対戦も可能にするそうだ。ネットゲームと同様、海外の人と交流を楽しむことができる。アプリのデータはクラウド上にあるので、商品を追加購入する必要がなく、自動的にアップグレードしてくれるのも魅力だ。

音楽業界からの注目度も高い

このサウンドムーブズ、今は子どもとダンス好きが想定されている2大ユーザーだが、実は音楽業界からも注目度が高いようだ。その1つとして、DJ機器として音楽シーンでの利用も視野に入れており、3月9日から米国で開催されるSXSW2018トレードショーでの展示に向けて開発を進めているそうだ。

また、電子的な音であり、出せるのが単音なので限界はあるが、ピアノから和楽器までさまざまな楽器の音が登録されているため、特にダンスが好きでなくても、楽器のような感覚で使うこともできる。今後好きな音を使えるようになるとすれば、汎用性はさらに高まる。楠氏にはSNS上やリアルでのダンスコンテストの構想もあるそうだが、さまざまなプレイヤーがアイデアを投入していくことで、遊びや音楽、ダンスに限らず、フィットネス、教育など、いろいろな分野で話題を呼びそうだ。