日本のマスコミが長らく続けている慣行の問題点とは?(写真:Wellphoto / PIXTA)

記者クラブを通じて世の中に伝わる情報は多い

記者クラブ。政府や自治体、業界団体などを継続的・網羅的に取材活動するために新聞社や通信社、テレビ局などの大手メディアに属する記者が中心となって構成される組織だ。誰もが情報を発信できるインターネット時代になっても、ニュースリリースや共同会見など、記者クラブを通じて世の中に伝わる情報はいまだ多い。

新聞にせよ、テレビにせよ、記者クラブからの配信記事だということは、一般の読者や視聴者にはわかりにくいかもしれない。菅義偉官房長官が1日に2回やっている記者会見なども、普通の人は政府が開いていると思うかもしれないが、実は「首相官邸記者クラブ」が開催している。

かつて、財務省出身の元官僚が「官僚にとって記者クラブほど便利な存在はない。ペーパーひとつで自由に操作でき、国民の世論操作だって簡単にできる」という趣旨の発言をしていたことがある。

たとえば、ある分野で大幅な規制緩和を推進したいと思ったら、その担当省庁は新聞記事やテレビのニュース番組で取り扱いやすい体裁に情報を集めて構成し、「文書(ペーパー)」を作成。記者クラブ主催の定例記者会見で配布する。

翌日の新聞には、似通った内容の新聞記事が掲載され、テレビはニュースとして放映する。通信社も地方新聞や地方のローカル局などに同じ内容のニュースを配信する。国民は、一夜にして規制緩和の動きを認識し、その主旨を知ることになる。

国会が解散するときも、どこからともなく解散間近といったスクープがあって、世論の反応を探るのがいつものパターンだ。国民が認めるようなら解散に踏み切る。世論が大きく反対するようなら見送り、という具合になる。

しかも、こうした一連のニュースや記事は記者クラブから出たものなのか、それともまったく異なるところから出たものなのかがはっきりしない。

こうした手法が日常的に行われているのが日本の報道機関だ。残念なことに、日本の記者クラブでは加盟各社が政府や自治体、業界団体などから提供された情報を報道する際にその検証が不足していると感じることが多い。とりわけ、選挙や世論の誘導に使われているのではと感じている人も少なくないはずだ。

米国のホワイトハウスにも、日本の記者クラブと似たような仕組みはある。ただ、米国の場合は記者会見で発表されたニュースや数字などに対しては、必ず記者個人や報道機関としての「検証」が入る。

とりわけトランプ政権のように、就任式に集まった人の数を平気で大幅割り増しするような報道官に対しては、厳しい質問を浴びせかける。記者クラブとはいっても、そこは政府とプレスとの「バトル(戦闘)」の場になっている。

実際、日本の記者クラブ制度が、日本国民の「知る権利」を阻害する存在になっているのではないか、という指摘が後を絶たない。

海外では通信社が情報を集める

海外では、速報性の高いニュースなどは、ロイターやAP(ともに米国)、AFP(フランス)といった通信社が集めて来て、その情報をベースにして新聞社は誌面を作り、テレビ局はテレビ番組を作る。

米国では、通信社の記者と新聞記者とでは、その役割やスキルが大きく異なっており、日本で新聞記者が記者クラブで集めて来るような情報の大半は、海外では通信社が新聞社やテレビ局に提供していると考えていい。

米国の新聞記者は何をするかといえば、通信社がかき集めた情報の裏を取り、異なる意見を収集し、事実を分析、検証するという役割を担っている。ニューヨーク・タイムズのように、毎日100ページを超える誌面を供給しているのも、そうしたシステムができているからだ。

ところが、日本の場合は通信社と新聞社、テレビといった垣根がほとんどなく、ニュースの現場にはどっと押しかけていく。災害現場にヘリコプターが10機以上も飛び交って、よく批判を浴びるが、通信社が数社飛べば済むことを大手報道機関が全社でやっている。それが日本のシステムというわけだ。

日本では、新聞にせよ、テレビにせよ、同じ内容の記事がやたらに多い。発言する関係者の顔ぶれも一緒ならコメント内容も同じ。一時期テレビ東京が、他社と違う番組構成をかたくなに守る姿勢が高い評価を受けたが、問題なのは「大手メディアはなぜ他社と同じでなければならないのか」ということだ。

最低限ライバルと同じ横並びでなければいけない――という発想は日本特有のものなのかもしれないが、海外のメディアでは逆に恥ずべきことであり、許されないことといってよい。

かつて某省庁の記者クラブに属したことがある経済誌の記者は「取材内容を互いに共有するメモ合わせの習慣があった」と話す。これは現在も続いているとされる。記者クラブがカバーする領域のスクープ情報がわかっていても、あえて加盟他社に配慮してどのメディアも先に報じないというケースもある。記者クラブのメンバーの多くは、ジャーナリズムに携わる人間である以前に、メディアの特権を守ることを最優先しているように見える。

記者クラブ制度を改善、もしくは廃止しようという動きは、これまでにも数多くあったことは事実だ。2001年5月には長野県の田中康夫県知事が「脱・記者クラブ宣言」を発表し、2006年には北海道が「道政記者クラブ」に対して記者クラブの水道光熱費など250万円の支払いを求めたことがニュースになった。

記者クラブ制度は、業界団体や経団連といった経済団体でも健在だ。かつて個別企業の中にあった記者クラブは今はなくなっている。

記者クラブ内には、国民が知らない秘密が数多く存在しているとみられる。かといって、メディアは記者クラブ制度を廃止するつもりもなければ、いまの仕組みを改革しようという気もないだろう。記者クラブが今後も存続するという前提で、ニュースをどのように読んだらいいだろうか。いくつかポイントをピックアップしてみよう。

ニュースを読むポイント

ゝ者クラブ発のスクープを鵜呑みにしない

判断は難しいが、政権に近いメディアからのスクープは鵜呑みにせず、その背景を分析した記事を探してチェックすることが大切だ。

記者クラブに加盟していない海外メディアや雑誌の報道もチェックする

記者クラブに加盟していない外国通信社や週刊誌などがどんな伝え方をしているのかを見るといいだろう。別の視点でチェックすることが大切だ。

事件報道が多いときは、裏に何かがあるかも

NHKニュースにせよ、民法のニュースにせよ、日本の場合は殺人とか交通事故といった警察の記者クラブからの発表報道が多い。その背景には、警察の記者クラブに配置されている人員が多いためと指摘されているが、大きなニュースがないときにはこうした警察発表の事件報道が多くなる。しかし、その一方で大きなニュースを隠すために使われる場合もあるといわれる。

さ者クラブのない役所・団体の情報もチェックする

国民の生活に密着した役所や団体にも直結した記者クラブがない場合がある。そうした情報などもある程度把握しないと、情報を発信されないために重要な法案の通過などが見落とされるかもしれない。