今年も大学生の就活が解禁になった。この時期になると毎年「学歴フィルター」が話題に上がるが、今年も早速、「満席だった説明会が、大学名を変えたら空席になった」というツイートが注目を集めている。

帝京大学に通うある学生は、就活ナビサイトから説明会の予約をしようとしたが満席と表示された。しかし、大学名を早稲田大学に変更したら全部空席だったという。「Fラン大学の仲間のみんな〜!強く生きていこうな〜!」とツイートしている。

数年前も、大学名を「日東駒専」で登録したら説明会が満席だったが、東京大学にしたらどこも空席だった、というツイートが話題になったことがあった。理不尽に感じる学生もいるかも知れないが、学歴フィルターはどういった経緯で設定されているのか。新卒就活サイトの元運営者に内部事情を取材した。

下位校にも良い人材いるとわかりつつ「手が回らない。学歴で切らざるを得ない」


学歴フィルターは古くから存在している。郵便での資料請求が就活の第一歩だった1990年代以前でも、「企業は大学名でふるいにかけて、対象校の人にだけダイレクトメールを打っていた」と言う。

これが就活サイトの登場で変わっていく。誰でも自由に応募できるようになり、企業には、それまでにない数の応募が来るようになった。採用数が数百、数千人のところに数万単位のエントリーが来ると、採用側は、エントリー開始から次の選考段階までに数万人を落とさなければならない。結局は、手間を省くために水面下でフィルタリングが行われていたと言う。

「ある大手メーカーは『学歴不問』を大々的に謳ったため、多くの募集が殺到しました。しかし実際には採用支援会社が応募者を選別していたため、選考には上位校しか残っていませんでした」

今年のスケジュールでは、面接解禁は6月1日。しかし「大手企業は6月1日に内定を出したい」のが本音だと言う。採用担当者は3か月間で、書類選考も面接も終わらせなければならない。

「下位校でもポテンシャルの高い人がいることは、企業も分かっています。しかし、大量の応募があると、そうした人を選びたくても手が回らない。短い期間で人を選ぶには、まずは学歴で切るしかないのが現実です」

大手企業の主戦場は「リクルーター」採用 ナビ経由の説明会からのルートは数合わせ

学閥の存在も、学歴フィルターがなくならない理由の1つだ。

「後輩が同じ学校出身者だと、どうしても可愛がりたくなりますし、仕事も進めやすくなります。大手企業に限った話ではなく、地方でも銀行等では学閥は顕著です。出世にも影響します」

そもそも、ツイッターで明らかになった学歴フィルターは氷山の一角でしかない。大手企業では採用活動の主な場を「リクルーター制度」に定めていて、ナビサイトで募集しているような説明会は「そこで足りないと困るから実施する」ものだという。いわば数合わせのようなものだ。

「リクルーター制度は、採用対象校に良い人材がいないか社員が探しに行く制度で、金融業界を中心に大手企業で顕著です。ここでの採用実績が個人の業績になる企業もあります。リクルーター経由とそれ以外の人では、選考ルートが違うんです。とはいえ、説明会経由であっても、良い人材を採りたいことに変わりはありませんから、企業はここでも更に、学校ごとに人数の枠を設けています」

採用対象校の受付人数を多めに設定し、それ以外には「その他枠」を作って対応するところ、対象校以外の応募は一切受け付けないところなど、設け方は様々だ。上位校でないと、枠が少なくて早々と「満席」表示になってしまったり、そもそも枠自体がない、というケースもある。

学校によって、マイページの内容が違うこともある。上位校、採用対象校の人には、同社で活躍する先輩の紹介例が表示されるのに対し、それ以外の人には先輩紹介のコンテンツ自体ないといった具合だ。

無事説明会に参加できても、書類選考や面接の段階で、出身高校が明暗を分けるケースもある。

「大学全入時代になり入学者のレベルが下がったため、大企業の中には高校名を見ているところもあります。高校と大学のレベルに差がありすぎる場合は、懸念材料になるでしょうね。面接でライン上に並んだら、落とされると思います」

学歴フィルターを設けるかどうかは企業風土にもよる。中には、数万のエントリーシートすべてを数人の採用担当で見る大手企業もあると言う。ただ、フィルターの存在は覚悟の上で臨んだほうが、就活生の傷は浅そうだ。