デジタルコンテンツスタジオ/ブロードキャスターのリトル・ドット・スタジオ(Little Dot Studios)。テレビ番組のYouTube配信事業からスタートした同社は現在、自身のYouTubeドキュメンタリーチャンネルのひとつ、リアルストーリーズ(Real Stories)にて、オリジナルドキュメンタリーを毎週配信することを予定しており。目下、この番組のスポンサーとなるブランド探しに、同社は注力している。

Facebook上でオーディエンスを一気に増やすのが当たり前のパブリッシャーにしてみれば、YouTubeは難攻不落の牙城だが、YouTubeのオーディエンスは概してロイヤルティとエンゲージメントが高く、それゆえ昨今、後者に焦点を合わせるパブリッシャーが増えている。

1日100万回再生



リトル・ドット・スタジオは約30分のオリジナルドキュメンタリーを9本用意しており、間もなくリアルストーリーズで週刊配信を開始する。まずはオーディエンスの反応を見定めるため、あえて多様なトピックを選んだという。たとえば、イングランド南部で行方不明になった女子学生、骨粗鬆症を患うエミネム・ファン、ペットボトルの筏でミシシッピー川を下る旅など、さまざまなテーマ、切り口の作品を揃えている。

同社はすでに、アーカイブされていた1時間もののドキュメンタリーを週に3本配信し、過去1年半で120万人を越える登録者を獲得している。同社によれば、1日の再生回数は60万から100万回だという。メディア調査会社チューブラー・ラボ(Tubular Labs)の調べでは、同チャンネルの2017年12月におけるYouTube動画再生回数は1670万回に上ったという。

「これがリアルストーリーズのドキュメンタリーだ、という独自の視点を確立したい」と、リトル・ドット・スタジオの共同創設者にしてCEOのアンディ・テイラー氏は語る。さらに、今後の動画作品はスポンサーを付けて配信するとともに、テレビパイロットとしても売り込む方向で考えているという。

また、YouTubeに留まらず、同社は昨年夏以来、オリジナル動画作品を定期的にFacebookにアップしている。チューブラー・ラボによると、その再生回数は月間1870万にも及ぶと報告されている。それらの動画は今後、メディアストリーム端末のAmazon Fire(アマゾン・ファイア)やロク(Roku)でも視聴可能になる。同社はさらに先頃、iOSおよびAndroid用アプリも発表している。

ドキュメンタリーが人気



リトル・ドット・スタジオは英最大の独立系映像制作配給会社オール3メディア(All3Media)に属し、『グレアム・ノートン・ショー(The Graham Norton Show)』などのテレビ番組や、英大手放送局のBBCやチャンネル4が有するゴードン・ラムゼイの番組を流すYouTubeチャンネルも運営している。同社はそれらのチャンネル網を通じて、YouTubeでは子ども向けコンテンツに次いでドキュメンタリーの再生回数が多いことに着目した。そして、このデータを基にリアルストーリーズを立ち上げ、「マイ・サン・ザ・ジハーディ(My Son the Jihadi)」や 「アメリカズ・プア・キッズ(America’s Poor Kids)」といったヒューマンドラマ系ドキュメンタリーの配信を開始。以降、SF専門のスパーク(Spark)と歴史専門のタイムライン(Timeline)というドキュメンタリーチャンネルをさらにふたつ設立している。

「単品のドキュメンタリーは、テレビ業界ではバリューの高いジャンルではない。実際、この3年間は、台本のある番組が業界を動かしている」と、テイラー氏。「ここに面白いズレがある。現在のテレビ市場は台本第一だが、我々のデータには、もっとも人気が高いのはドキュメンタリーだと出ている」。

テイラー氏が率いる同社は動画をサーバーに上げ、アルゴリズムに則って表示させるために正確にタグ付けをして、再生回数が最大限になるようできる限りの手を尽くしている。再生は米国と英国に集中していると、テイラー氏は分析する。あくまで一般的目安だが、YouTubeで100万回再生されると、YouTubeの取り分45%を差し引いたプレロール収入が1000ドル(約10万円)になるという。アップするドキュメンタリー作品は制作会社から買い取るか、配給して収益を分配する。昨年、リアルストーリーズは350万ドル(約3.7億円)をパートナーに支払い、対前年比200%の増収を達成している。現在のところドキュメンタリーは収入のごく一部に過ぎず、大半はブロードキャスターに代わるチャンネル運営と、フォーミュラEレースやペプシマックス(Max)といったブランドの動画制作に依拠している。

長時間視聴される場所



Googleは、英国における YouTube視聴のうち15%はリビングルームで行なわれていると喧伝する。しかしリアルストーリーズの場合、20%以上がスマートテレビでの視聴であり、しかも動画1本当たりの平均視聴時間は20分と、テイラー氏は語る。

「アルゴリズムがかなり複雑なため、1、2分も流せれば十分という説が業界関係者のあいだでいまだに横行している。しかし、それを信じていては、アルゴリズムにチャンスを潰されてしまう。YouTubeはオーディエンスが長時間過ごす場所なんだ」。テイラー氏の挑戦は続く。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)