日本のことを英語で相手に伝える際のコツとは?(画像:『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』より)

2020年に東京オリンピック・パラリンピックも控え、世界から日本への注目度が高まっています。訪日する外国人(観光客)の数も記録的に伸びていることは、ニュースでもよく報道されています。
そのような時勢をくみ、英会話に対してにわかに興味が出てきたり、日本の文化・事象を英語で外国人に説明したい、と思われたりしている日本人も増えているかもしれません。
そこで今回は、『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』の英文監修・解説を手掛け、イギリス英語通訳者・翻訳者で、英語関連の著書も多く持つ川合亮平さんに、そんな日本人の方に向けて、日本のことを英語で相手に伝える際のコツと、具体例(英語の使い方)を紹介いただきます。

まずなじみのある分野を攻略するのがコツ

日本のことを外国人に英語で説明(紹介)する、と聞いて、僕がまず思い浮かべるのが、国家資格の全国通訳案内士(通訳ガイド)です。

僕は20年ほど前、この資格に挑戦したもののまったく歯が立たず、あきらめてしまった過去があります。かなり難しかったと記憶しています。

もちろんこの資格は“真剣度”がかなり問われるものなので、“英語で日本を紹介したい”という希望を持たれている方でも「そこまで労力をかけるつもりはない」と思われる方が大半ではないかと想像します。

では、この資格を取らなければ、外国人に日本のことを英語で説明するのは無理なのかと言われれば、もちろんそんなことはないと思います。

大切なのは、自分の今の英語力(それがどんなレベルであれ)を最大限発揮して、気持ちを込めて相手に伝えることだと僕は信じています。完璧な人なんていませんからね。

では具体的に、いったいどこから手をつければいいか? まず“自分が好きな・なじみのある日本(文化・事象)”の英語知識を増やすことから始めるのはいかがでしょうか。

その理由は極めて簡単。“自分が好きなことなら、集中力も自然に高まり、たとえ、英語に対して苦手意識があったとしても身に付きやすい”からです。

具体的な方法として、そもそも興味がある(場合によってはある程度知識もある)もの・ことに関する英語を、できるだけたくさん、そして精密にインプット(読む and/or 聞く)することが、とても有効です。

検索エンジンで、キーワードを英語入力

では、どうすればそのような素材を見つけられるか? これは簡単です。検索エンジンで、キーワードを英語入力すれば、自分のお目当ての英語文章が(ほとんどの場合)出てきます。

たとえば、温泉に興味がある、温泉について英語で説明してみたいという場合は、“hot spring Japan”のように検索します。すると数多くの英語で書かれた温泉の説明ページがヒットします。


たとえばGoogleで、“hot spring Japan”と検索した場合(画像:キャプチャ画面)

簡単な裏技としては、Googleの“すべて”という検索結果だけでなく、“ニュース”という項目の検索結果もしっかりチェックすることです。海外のニュース記事で、その項目(この場合は”日本の温泉“)がどのように報道されているかもチェックすることができます。そして、英語で書かれたその事象の知識を深め、関連するボキャブラリーを増やし、その特定の分野に関するアウトプット力(話す and/or 書く)を高めるのに非常に役に立つからです。

この方法は、“日本紹介”に限らず、自分の好きなことを通して英語力を上げる、という一般的な方法としてももちろん役に立ちますよ。

「日本(文化・モノ)」の紹介に使える表現

では、ここからは、『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』に登場する場面・セリフを題材に、日本(文化・事象)を英語で紹介・説明するのにすぐに使える表現を紹介していきます。

この作品は、明治初期の日本を旅した、実在のイギリス人女性旅行家イザベラ・バードをモデルに、彼女が日本の「奥地」を踏破していく軌跡をコミック化した『ふしぎの国のバード』を、さらにバイリンガルコミック化したものです(Tokyo Business Todayでは、第1話を無料公開しています)。


バードの通訳者である伊藤が、バードに対し、“行李”を説明する場面(画像:『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』より)

■ポイント1:まずは名前(名称)を伝えよう

It’s called a kori. (行李という名前です)

It’s called …(〜という名前です)は、固有名詞を紹介するときによく使われる表現です。なお、固有名詞は、ゆっくり・ハッキリ発話するのがポイントです。

"It"と"One"

■ポイント2:誰が使うものなのか伝えよう

I use one myself.(私自身も使っています)

✴ 不特定多数の代名詞は、oneを使います。Itと混同しがちですが、itだと“今目の前にあるその物”という意味になります。ほかには、It’s used mainly by children.(子どもたちが主に使います)といった表現でも誰が使うものなのかを伝えられます。

■ポイント3:素材を伝えよう

It is made of wicker.(柳細工です)

be made of …(〜で作られています)という頻出表現です。

■ポイント4:相手が知る何かと比較しよう

It’s not as heavy as a trunk.(トランクほど重くないですよ)

It’s not as A as …「〜ほど、Aでないですよ」という表現です。

例文:

Kimono is not as light as most western style dress.(キモノは多くの欧米のドレスほど軽くないです)


伊藤が、日光東照宮の麒麟(きりん)を説明する場面(画像:『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』より)

■ポイント5:否定文を使い、より明確に事実を伝えよう

The kirin is not a monster. It’s a sacred creature.(麒麟はモンスターではなく、聖獣です)

A is not B. It’s C. (Aは、BではなくCです)。あえて、違う(間違えやすい)対象を持ち出すことで、Aのことをより鮮明に表現することができます。

何でできているのかを伝えよう


伊藤が、“蝉退”(せんたい)の原料を説明する場面(画像:『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』より)

■ポイント6:原料を伝えよう

It’s a medicine made from ground cicada shells.(蝉の抜け殻をあぶった薬です)

be made from…(〜が原料です)で、何で作られているかを伝えられます。ポイント3のbe made ofは生製品に元の材料の性質・形状が残っている、このポイント6のbe made fromは元の材料の性質・形状を留めないで加工されている、という違いがあります。

例文:
- This chair is made of wood.(このいすは、木でできています)
- Paper is made from wood. (紙の原料は、木です)

お菓子を説明してみると


伊藤が、“包み煎餅”を説明する場面1(画像:『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』より)


伊藤が、“包み煎餅”を説明する場面2(画像:『バイリンガル版 ふしぎの国のバード 1巻 UNBEATEN TRACKS in JAPAN』より)

まず大まかな種類を述べてから…

■ポイント7:より多面的に伝えよう 


Tsutsumi-senbei is a sweet that contain a tiny toy.(包み煎餅は、色々な豆玩具が入っているお菓子なんです)

A is B that …:まず大まかな種類分けをBで述べて、それから、thatを続けて、“どのようなBなのか”、より詳しい特徴を追加で述べる構文です。

例文:

Zori are like sandals that are normally made of rice straw.(草履は、通常、わらでできているサンダルのようなものです)

いかがでしょうか。“英語で日本を紹介する”といっても、範囲はあまりにも広いので、何か自分の得意分野を深く掘り下げるのが、より手軽に、英語インプットと英語アウトプットの質を上げるコツだと思います。

自由な発想で自分の好きな分野を学習し、そして伝えることができれば、言語(英語)スキルが少々心もとなくても、相手にはきっと十分に伝わるはずです。