潮凪洋介(原著)、うげっぱ(著)『漫画 もう「いい人」になるのはやめなさい!』(KADOKAWA)

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「ルール」や「常識」に従ったままでいいのでしょうか。人間関係に気をつかって「お人よし」を演じていれば、心はどんどん疲弊していきます。エッセイストで講演家の潮凪洋介氏は、「ときにはルールや常識を無視して、自分本位な生き方をすることが大切だ」と説きます――。

■「いい人」は人生に対する努力を怠っている

私は作家であり講演家でもあるという職業柄、非常に多くの方々から生き方に関する相談を受けています。その過程で、「いい人」であるがゆえに、仕事にも恋愛にも人生そのものにも自信が持てず、萎縮してしまう人を何百、何千と見てきました。それはたとえば、次のような人です。

・やさしいと言われるけど、それが弱さの裏返しではないかと不安を持つ人
・「お人よし」なせいで損な役を押しつけられ、悩んでいる人
・愛想笑いが得意だけど、実は自分に自信がない人

いずれも他人のことを思いやり、「いい人」として生きています。しかし、ここで1つの事実を言いましょう。「いい人」とは「どこにでもいる人」であり、ワクワクするような人生を歩むことは、なかなかできません。「いい人」でいる限り、その人には限界があるのです。

「いい人」を抜け出して、本来の自分をとり戻した人は、仕事・恋愛・人生のすべてがうまくまわり出します。反対に「いい人」のままでいると、仕事においても恋愛においても人生においても、大きな損をします。これが私の実感です。

多くの人は年齢を重ねるごとに「いい人」になっていきます。会社や地域コミュニティーなどで人生経験を積むうちに、物わかりのいい分別のつく人物でいるほうが波風を立てずにすむ、すなわち、楽に生きられることを知るからです。

■「年相応のことしか」しないのは寂しい

ところが、「いい人」になって楽に生きれば生きるほど、人生に不満が募っていきます。自分に自信が持てず、仕事や恋愛の大事な局面で萎縮してしまいます。それは当然のことでしょう。楽に生きているだけで、より充実した人生を送ろうという努力を怠っているのですから。

どこにでもいる「いい人」でいると、仕事・恋愛・人生のすべてにおいて損をすることは男女問わず当てはまるのですが、ここでは話をわかりやすくするために、男の生き方を例にしましょう。

世の中には2種類の男がいます。1つは「もう年(大人)だし」が口癖の男。もう1つは「まだまだこれから!」が口癖の男。前者は「わかりやすくオヤジ化」していきます。後者は「キラキラした大人の少年」になります。

「もう年(大人)だし」はとても便利な言葉です。「ルールを守る」や「迷惑をかけない」といった方向に使用される場合、この言葉はしっくりきます。「もう年(大人)だし」のひと言の中には、自立心と信頼感がありますし、社会的な評価も自然と高くなるのです。

ところが、これを連発することは男からおもしろみをはぎとることになります。一歩間違えれば「情熱」「ユーモア」「躍動感」「型にはまらない考え方」「バカげた夢」などの、男の魅力を構成する重要な要素を眠らせてしまうのです。もちろん、年相応の仕事観、考えを持つのは悪いことではありません。しかし、「年相応のことしか」しないのは寂しいのではないでしょうか。

■休日ゴルフを最高の楽しみとするのは残念なこと

繰り返しますが、「いい人」は、「どこにでもいる人」です。また、「いい人」は損をします。つまり、損をしたくないのなら、「どこにでもいる人」をやめればいいということになります。

30代、40代になってゴルフの楽しさに目覚める男性は多くいます。接待ゴルフが盛んだった時代は仕事のためにゴルフを覚えるという人が多くいましたが、近年は接待ゴルフが減っていますから、ゴルフを始める動機は、年相応の趣味を身につけたいという自主的なものがほとんどでしょう。

ゴルフは体力が多少衰えても楽しめるスポーツであり、そこが大きな魅力でもあります。70代、80代になっても楽しめるスポーツというのはなかなかありません。その点で、私もゴルフのすばらしさを認めていますが、サラリーマンが休日ゴルフを最高の楽しみとするのは残念なことだと考えます。

平日には同僚と居酒屋でお酒を飲んで、休日はゴルフか家でゴロゴロというライフスタイルからは「どこにでもいる人」しか生産されません。年相応の趣味を楽しむという「社会の大きな流れ」に乗ることは悪くはありませんが、それ「しか」ないのでは、人生を謳歌することはできないのです。

■「自分を好きになれない人生」でいいのか

「社会の大きな流れ」には、人を型にはめようとする力があります。あなたは学校や社会の中で、「人に迷惑をかけないようにしよう」「人のことを思いやって、やさしくしよう」と教えられてきたはずです。確かにこうした「ルール」や「常識」は大切ですが、たった一度の人生を楽しみ、充実させるには、ときには「ルール」や「常識」を無視しましょう。他人の目など気にせず、いい意味で「自分本位な生き方」をするべきです。

世の中には30代、40代になっても「どこにでもいる人」にはならずに、ワクワクする夢を膨らませている人がいます。たとえば、カフェを友人と共同で副業運営して、仲間に憩いの場を提供する人。ダンスチームを結成し、定期的に公演する人。副業でオンラインショップを立ち上げ、将来的な独立を目指してがんばる人。1200年続く寺院に生まれつつも、お寺では行われないような斬新なイベントを企画プロデュースする住職。まだまだ数え切れない彼らは、間違いなく自分の人生、そして自分自身が大好きです。

私はあなたに、「自分を好きになれない人生」を過ごすことだけは避けてほしいのです。あなたも少年時代には「あんなしぼんだ、つまらないオヤジにはなりたくない」と思ったはずです。どんな仕事をしていようと年収がいくらであろうと、「男の人生」を輝かせることはできます。輝かすことができないとすれば、諦めたときだけです。そして、人生がしぼんでいくか、それとも、年をとるごとにロマンに満ちたものに輝きを増すかは、今、この瞬間にかかっているのです。

「もう年(大人)だし」と小さくしぼんだり、当たり前すぎる型にはまったりするよりも、もっとロマンを持ちましょう。自分自身を「憧れの存在」にできるような、そんなライフスタイルを楽しみましょう。

■耐え続けてもご褒美は待っていない

自分自身を「憧れの存在」にするためには、どこにでもいる「いい人」から抜け出し、「お人よし」をやめることです。たとえば、会社や職場、仕事に対するスタンスをあらためることが、「お人よし」から脱却する第一歩になることもあります。

戦後、高度経済成長期においては、「1つの会社に骨をうずめるつもりで働く」という考え方があるべき姿として捉えられました。その考え方の背景には、忍耐が美徳とされ、会社が一生の食いぶちを守ってくれるものという共通認識が存在していたのです。

しかし、今は違います。より良い条件の仕事場を求め、賢く転職・独立してステップアップしてゆくことは、すでに当たり前のことになっています。かつては信頼できない生き方の例をされていた「度重なるキャリアシフト」が新しい生き方として前向きに捉えられるようになってきたのです。

ところが、現代流の「お人よし」で変化を恐れるただの「いい人」は、小さな安定と、職場での混沌としたしがらみを「宝物」のように扱います。その「宝物」自体も、心の底から望み、手に入れたものではありません。

■自分の財産は会社の中にではなく、自分の中にある

「お人よし」は、小さな現状を維持するためだけに、「しっくりこない仕事」や「ストレス満点の人間関係」に身を投じ続け、「耐え続ければご褒美が待っている」と勘違いするのです。そして、もし、その会社からリストラされようものなら、それを「コースアウト」としてマイナスに捉えてしまいます。「新しい可能性へ挑戦する時間とチャンスが芽生えた! 人生の新しいステップアップの機会を得た!」とは思えないのです。

そんな人になりたくなければ、「自分の財産は会社の中にではなく、自分の中にある」と考えることです。会社に忠誠を尽くすことよりも、自分のキャリアを磨くことに視点を置きましょう。これまで積み重ねてきたキャリアやビジネスノウハウはあなたの中に秘伝のタレとして存在します。秘伝のタレがもっとおいしく引き立つ仕事場を探すことです。器(会社)にこだわってはいけません。

「平日は居酒屋、休日はゴルフ」というライフスタイルは、終身雇用・年功序列の旧日本型経営が行われていた時代の産物です。つまり、会社の側も社員に対して「お人よし」だった時代のライフスタイルであると認識しましょう。

現在は、かつては生涯の安定を約束する就職先として人気を集めた銀行ですら大規模なリストラを断行する時代です。かつては「お人よし」だった会社も、現在は姿を変えて、社員に牙をむいています。「お人よし」になって会社に忠誠を尽くしていては、ある日突然、生活に困窮するかもしれません。あなたが今、会社に勤めているのなら、社員としての立場を利用して自分のキャリアを磨くべきです。

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潮凪 洋介(しおなぎ・ようすけ)
エッセイスト・講演家
早稲田大学社会科学部卒業。主な著書に、『もう「いい人」になるのはやめなさい!』『それでも「いい人」を続けますか?』(ともにKADOKAWA)、『「バカになれる男」の魅力』(三笠書房)、『「男の色気」のつくり方』(あさ出版)などがある。

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(エッセイスト・講演家 潮凪 洋介 写真=iStock.com)