店員に絶対服従!「Supreme男子」の不思議な生態|辛酸なめ子

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【いまどきの男を知る会 ファイルNo.10 Supreme男子】

 ストリートカルチャーから生まれたスケーターのカリスマ的ブランド、Supreme。1994年に設立されずっと不動の地位を保ち続けています。需要が供給を上回り、転売されて高値で取引されることも多いSupremeのアイテム。たしかにデザインはかっこいいですが、身に付けている人はドヤ感漂わせがちです。

 先日電車で見かけたSupreme男子も印象的でした。アイテムを周りに見せつけていて、とくに膝にわざわざ置いている財布が不自然でした。スケーター感が皆無なポッチャリ体型でしたが、お金は持っていそうでした。

 カウンターカルチャーの象徴だったブランドが、ハイブランドとのコラボなどを経て巨万化し、経済力の象徴に……。そういえば工藤静香もSupremeのスマホケースを愛用しているそうです(木村拓哉もキャップを愛用)。ブランドイメージ的にはどうなのでしょう。志村けんのAPE愛用のように、メジャーなザ・芸能人とストリート系との相性は難しいです。

 Supremeの店員さんには今もメジャーなものへの反骨精神があり、「Yahoo!知恵袋」に投稿された、3代目JSBのファンの女子がメンバーと同じものを買いに行ったら「ねぇよ」と突き放された挙げ句、店員にディスられた、という切ないエピソードや、某女優が店員の態度の悪さにキレてツイッターに書き込んだ、という件もありました。

 媚びない精神を持つ店員さんに憧れる男子は多いようです。ネットで、店員の態度の悪さへの文句の書き込みの中、「店員がかっこいい」とリスペクトの言葉が混じっていました。たまにSupremeで買い物するという20代男性に話を聞くと、確かに態度は気になるけれど、店員が着ているものが欲しくなる、という話でした。

◆Supreme男子は羊のように従順!?

 実はSupreme男子は羊のように従順なのかもしれません。シーズンごとの立ち上げや、コラボアイテム発売の時には転売ヤーや外国人なども集結し、長い列が発生。前日から並ぶ人も多いのですが、体験談のサイトを見ると厳しいルールがあるようです。お店からちょっと離れた所定の場所に並ばされるのですが、徹夜の場合はご飯休憩30分、トイレ休憩は5分という暗黙のルールで、時間が超過したら最後尾に並ばされる。

 また、その場にいない人をはじくため、1時間に1回ほど並びの「再整列」が行われるそうで、だんだん頻度が高まり5分に1回再整列させられたケースもあったとか。軍隊のようです。店員に馴れ馴れしく質問したり話しかけるのはNG。買ってもらっているのではなく、買わせてあげているのです。並んだだけでは人気の限定商品は購入できず、そのあと抽選がある場合もあります。

 さらに、昨年、列の中でSupremeのアイテムを身につけていない人は弾かれる、ドレスコードがあったお店も。キャップだけかぶっていても弾かれたそうで、店員には絶対服従です。Supremeのレア商品は、努力や忍耐、忠誠心の証でもあるのです(もしくはプレミア価格で買える経済力)。
 Supreme店員に知り合いがいるという40代男性は「威嚇っすね。本当は普通の人ですよ」と言っていましたが、実際お店に行ってみると愛想がなくてやっぱり怖かったです。イカつい男子が目を光らせ、黒いキャップには黒タオルのオラオラ系ラーメン屋と共通しているものが……。

 でも、イカつい兄貴に従いたい、という男子は結構多いのかもしれません。平日だったのでしばらく並んで入店できました(お客はストリートファッションの男女が多く、中には会社帰りのスーツ男性も)。でも、夜19時20分頃になると外の列が途中で打ち切られました。「もう買えないんで」「明日もあるんで」と、まだ閉店まで30分以上あるのに20人くらい、素っ気ない口調で帰らせられていました。

「打ち切りっすか」と、店員に言われるがまま帰るSupreme男子は、不満げというよりどこか嬉しそうです。イカつい店員とのプレイが楽しめるストリート系ブランド。他のブランドでも店員が怖い店がいくつかあるようなので、通過儀礼や肝試しで訪れても良さそうです。

<TEXT&ILLUSTRAION/辛酸なめ子>

【辛酸なめ子 プロフィール】
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。