阪神春季キャンプ、紅白戦でナックルカーブを投げる秋山拓巳=2018年2月12日、かりゆしホテルズボールパーク宜野座(写真:日刊スポーツ新聞社)

プロ1年目の2010年にいきなり4勝を挙げながら、その後は一軍に定着できなかった大器が2017年にやっと覚醒――
阪神タイガースのエース候補が9年目のシーズンに大きく羽ばたこうとしている!
秋山拓巳(あきやま たくみ)投手の故郷・愛媛県で創刊されたスポーツマガジン『E-dge』で今シーズンの意気込みを語った。

2017年はチームトップの12勝

阪神タイガースは2005年以降、リーグ優勝から遠ざかっている。金本知憲監督が就任して3年目を迎える2018年シーズンの目標はV奪回。そのカギを握っているのがプロ9年目の秋山拓巳だ。

2009年ドラフト4位で入団した188センチ96キロの大型投手は、そのスケールの大きさからほかの投手以上の期待を集めてきた。プロ1年目の2010年に4勝を挙げ、大器の片鱗をのぞかせたものの、2年目からは一軍と二軍を行ったり来たり……。

しかし、2017年はそれまでの秋山とは違っていた。オープン戦の好調さをシーズンに入ってからも維持し、勝ち星をひとつずつ増やしていった。

秋山は昨シーズンをこう振り返る。

「やっと迷いがなくなって、それなりに自信がついて、積極的に投げられるようになりました。そこがいちばん大きかったですね。それまでは、『どうしよう、どうしよう……』のままで投げていたんですが、いまはそういうことはありません。マウンドで『いま、何をすべきか』がわかっているので、目の前のことをひとつずつやるだけです。『この状況なら、これをしよう』と思えるようになりました。『やるべきこと』と『そうでないこと』の整理整頓ができ、優先順位を付けられるようになったので、一つひとつ、少しずつ、それを片付けていきました」

4月12日に1勝目をマーク。その後、順調に勝ち続け、オールスターゲーム初出場も果たした。シーズンが終わったときには、12勝6敗、防御率2・99。11勝のメッセンジャーを抑え、タイガースの投手陣のなかでは勝ち頭になっていた(投球回数もチーム1)。横浜DeNAベイスターズとのクライマックスシリーズでは第2戦の先発を任された。

何を変えて、何を変えないのか

2005年以降、優勝から遠ざかっているチームのなかで、秋山にかかる期待は大きい。昨シーズン12勝を挙げ、チームの勝ち頭となったエース候補のさらなる成長がなければV奪回は難しい。

「去年は途中から週頭に投げさせてもらえるようになって、ピッチャー陣のなかでの順番が上がってきたのかなとは感じていました。しかし、ローテーションをしっかり守ることを心掛け、1週間に一度投げることに集中して、そこで自分の力を出すことだけを考えていました。

今年も「タイガースのローテーションの中心で」と期待されていると思います。そこで『オレが』という気持ちが出てきたときに、自分をどうやってコントロールできるのか――それが課題です。去年の開幕前とは立場が変わったと感じていますが、おごらないように」と秋山は言う。

データ全盛のプロ野球界で、前年の成績を維持することは難しい。何を変えて、何を変えないのか――秋山は難題に直面している。

「去年もシーズン中に『投球パターンがばれているな』と感じることがありました。おそらく今年は、各チームにかなり研究されるはず。でも、大事なのは、自分が何かを変えることよりも、ストレートの強さを身につけることではないかと思います。もちろん、スピードを求める気持ちもあって、150キロを投げたいのですが、同時にスピードだけじゃないとも考えています。とにかく、強いストレートを投げたい」

秋山は、140キロ台のストレートとスライダー、フォークをコントロールよく投げ分ける。2017年に与えた四死球はわずか16個。これは、両リーグ最少だった。ストレートに磨きをかけながら、さらにコントロールの精度を上げていくつもりだ。

「今年ダメなら…という危機感がある」

「これまでの8年間、ローテーションに入ることを目指してキャンプからアピールするということをやってきました。今年もポジションが確約されているわけではないので、のんびりするわけにはいかない。これまでどおり、同じ気持ちでキャンプに臨みました。

僕はタイガースに入団してから、一度も優勝をしたことがありません。昨年のクライマックスシリーズで悔しい思いもしました。日本一を目指して、日本シリーズのある11月まで野球をしていたいですね。

8年目でやっと数字を残せましたけど、若手がどんどん伸びてきているので、今年ダメなら……という危機感はあります。これまで結果が出なくてもユニフォームを着させてもらえましたから、これからチームに恩返しをしないと。少し成績を残したくらいで浮かれているわけにはいきません。また今年、結果を出せるようにしないといけない。どうやって結果を出すかをずっと考えています」

3年続けて活躍して初めて一流選手と認められるのがプロ野球の世界だ。やっと覚醒したタイガースのエース候補にとって、2018年が勝負の年になることは間違いない。秋山が抱く危機感がチームにも本人にもきっとプラスに働くはずだ。

(文中敬称略)