食品の売り上げが増加する裏側には、廃棄量の増大もあるという。


 ここ数年、恵方巻の大量廃棄が問題になっており、兵庫県のスーパーマーケットがこの現状に一石を投じた広告が反響をよんだ。さて、大量に廃棄された恵方巻はどうなるのだろうか。

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スーパーの「もうやめにしよう」が波紋を呼んだ

 兵庫県のスーパーマーケットが「もうやめにしよう」というキャッチコピーのもと、恵方巻を「今年は全店、昨年実績で作ります」とする広告を出し、反響を呼んだ。節分の食べ物として定着しつつある恵方巻の大量廃棄が問題視される中、一石を投じることになった。

 スーパーマーケットやコンビニエンスストアでは、恵方巻などのイベント商品は、前年の売り上げ実績より多くの数を用意し、売り上げ増加を狙うことが多い。しかし、店頭にたくさん並べたものの売れ残った恵方巻は、賞味期限が短いため廃棄せざるを得ない。ここ数年、恵方巻の売り上げが伸びるに従い、大量廃棄が問題になっていた。食品事業者が廃棄した食品は産廃業者に引き取られることが多い。

 食品の産廃と言えば、2016年に産廃業者が廃棄を依頼されたカツを食用として横流しした事件が思い出される。このとき、まだ食べられる食品が大量に廃棄されている事実を知って、驚いた人も多いのではないだろうか。このような、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことを「食品ロス」という。

 環境省及び農林水産省が公表した「食品ロスを含む食品廃棄物等の利用状況等」では、2014年の食品廃棄物は約2775万トン。このうち、食品ロスは約621万トンと20パーセント以上を占めている。この量は、日本国民が1人あたり毎日茶碗1杯のご飯を廃棄していることに相当する。

 2015年の国連世界食糧計画(WFP)の食糧援助量は約320万トンなので、日本人はその2倍近くの食料を廃棄していることになる。世界の栄養不足人口は減少傾向にあるものの8億人と推定され、依然として高水準だ。

 食品ロスに対する国際的な関心も高まっており、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」でも、食料の損失や廃棄の削減が目標として設定された。農林水産省は食品ロス削減に向けた「食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)」を展開している。

飼料化、肥料化、油脂として工業利用も

 食品廃棄物には、加工食品の製造や流通などの過程で生じる売れ残りの食品や、消費段階での食べ残し、調理くずなどがある。以前はこうした廃棄物を焼却や埋め立て処理をしていたが、廃棄物処分場の不足や処理コストの増大から、2000年に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」という法律を制定し、食品廃棄物の発生や削減を目指している。

 食品リサイクル法では、食品製造業や卸売業や小売業、外食産業などの食品関連事業者を対象にし、まず発生を抑えることを基本にするが、発生した廃棄物はリサイクルが優先される。

 食品廃棄物は有機物が多く、栄養価が高いことを特徴とする。その栄養価を有効に活用できるのは、畜産や水産養殖用などの飼料にすることだ。食品関連事業者から出された食品廃棄物は、産廃業者などの飼料化施設に運ばれ、飼料の中間製品や飼料にする。

 一方、初期投資が少なくて済み、技術のハードルがあまり高くないのが肥料化だ。学校給食センターなどの公共施設、集合住宅、スーパーやデパート、ホテル、レストランなど生ごみがたくさん集まるところでは、生ごみ処理機を設置して堆肥にしたり、機器を設置せずに、生ごみをそのまま堆肥メーカーや農家などに引き渡していたりしている例がある。スターバックスコーヒージャパンは複数の業者と共同で、大量に出るコーヒーの豆かすを飼料や肥料にし、さらにそれを自社で使う牛乳や野菜の生産に用いるという、リサイクルループを完成させている。

近郊の農園などでは、生ごみ処理機により堆肥をつくる様子も。


 食品リサイクルで古くから行われているのは、てんぷら油やサラダ油など食用廃油を回収し、飼料や工業用油脂として利用する仕組みだ。工業用油脂は塗料や石鹸、燃料の一部として利用されている。

注目されるメタン化

 食品廃棄物のリサイクルの難点は、廃棄物につまようじや紙、プラスチック容器などが混じることだ。食品製造工程の廃棄物や調理クズでは、このような夾雑物が混じることがないので肥料や飼料にしやすいが、売れ残りや食べ残しなどの廃棄物には、夾雑物が混じることが多い。分別もかなりの手間で、大量の廃棄物の中に混じったつまようじを取り除くことなど、不可能に近いだろう。

 しかし、メタン化なら飼料化や肥料化に比べて、比較的分別が粗くても行える。

 メタン化とは、動植物性残渣(ざんさ)など有機性廃棄物を、嫌気性細菌によってメタン発酵させることである。メタン発酵により発生するバイオガスは、メタンを約60パーセント含み、熱源や発電用の燃料として利用できる。また、バイオガスで発電した電気は、2012年度から開始された再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)を利用して、売電できるようになったこともあり、メタン化に対する注目が高まっている。

 ただし、メタン化の設備を導入するにはコストがかかる。メタン化の残渣である消化液は液肥として利用できるが、農作地の少ない場所では液肥の使い道はあまりないだろう。利用できなければ排水処理をして放流することになり、コストがかかるので、消化液の利用法の検討が求められている。

 こうした食品リサイクルにより、2014年の食品関連事業者が排出した食品廃棄物1953万トンのうち、1350万トンは飼料や肥料などにリサイクルされた。おそらく、廃棄された恵方巻も飼料や肥料になっているはずだ。

進んでいない家庭系食品廃棄物のリサイクル

 実は食品リサイクルが一番進んでいないのは、一般家庭から出される家庭系廃棄物だ。先の環境省と農水省の公表によれば、2014年の家庭系廃棄物は822万トンあり、そのうち3割以上にあたる282万トンがまだ食べられる食品だった。さらに、再生利用されたのは、わずか55万トンに過ぎず、ほとんどが焼却・埋め立てされている。

 家庭系食品廃棄物は、市町村など自治体の取り組みに任されているが、家庭系食品廃棄物は事業系に比べて格段にリサイクルしにくい。一般廃棄物は多くの場所から少しずつ排出され、それぞれの廃棄物の組成も雑多だからだ。

出されるごみ袋の中には、まだ食べられる食品が含まれているかもしれない。


 多くの人が住む地域ではごみの分別を徹底することも難しい。そのため、多くの地域ではそのまま燃えるごみとして回収されている。ただし、市町村によっては、生ごみを分けて出したり、生ごみ処理機やコンポスト容器の斡旋や購入補助制度を実施したりして、肥料化を進めているところもある。

 また、廃食用油の集団回収を行い、バイオディーゼルにする市町村もある。京都市は、1997年からバイオディーゼル化事業を始め、今では、回収した廃油を燃料にしたゴミ回収車やバスが走っている。最近では、メタン化を導入する市町村も増えている。

無駄買いしない、食べ残さない、私たちの努力も必要

 恵方巻で注目された食品廃棄物の問題だが、家庭系食品廃棄物の3割以上も食品ロスが占めており、リサイクルは進んでいなかった。私たちも努力をしなければ、食品廃棄物の量を減らすことはできないだろう。

 日本は世界中からたくさんの食品を輸入し、豊かな食生活を実現しているが、世界では人口が増え続けており、日本がいつまでもこの食生活を続けられるかどうかは分からない。せめて無駄な買いものをしない、食べ残さないなど、私たちの心掛けも必要だ。

筆者:佐藤 成美