〈定食のススメ〉ただいま!サザエさんの町で40年、「きさらぎ亭」の海老クリームフライ

写真拡大 (全10枚)

手軽で美味しくて、栄養バランスもしっかりおさえられる定食は、独身サラリーマン&ウーマンの強い味方。これまでも多く1970年代に創業した定食屋を紹介しているが、この時代に大衆食堂は最も成長した。その一方で消えゆく店も多い。今回紹介する「きさらぎ亭」は幸運にも根強い地元ファンに支えられ、クラウドファンディングで復活。街に愛され続ける老舗の魅力をご紹介。

定食王が今日も行く!Vol.35


地元で愛されて40年の老舗がクラウドファンディングで復活!


昨年、ビルの老朽化で閉店

クラウドファンディングで復活!

「きさらぎ亭」はこの連載が始まった当初から、ぜひ紹介したいと思っていた食堂だ。サザエさんの舞台となる桜新町でちょうど40年前の1978年に創業し、学生たちや地元の人々にも愛され続けた地域のコミュニティスポットといえるお店だ。2017年末、そんな憩いの場所が閉店するというお知らせが貼り出され、地域に衝撃が走った。駅から5分の好立地で夜24時まで(移転後は22時まで)作りたてのお袋の味を食べられる場所はやはり東京全体でも希少だからだ。

理由は店舗が入るビルの老朽化。40年を超える多くの老舗食堂が近年直面している問題だ。地元に愛され成り立っている食堂は、場所を移転しては意味がない。同じ地元で同じ規模でビジネスを続けられるテナントを探すのは至難の業だ。閉店直前にTwitterでアカウントが立ち上がり、クラウドファンディングサイト「Readyfor」では移転復活に急遽必要となった800万円の一部を集めるためファンディングが始まった。

もちろん、定食王として参加しない理由はない。写真がファンディング参加者に送られるオリジナル千住札と定食券だ。そして2018年2月8日、桜新町に復活! オープン初週は行列ができるほどの盛況ぶりだった。「まるで実家のようにふらっと帰ってこられる」のが、この店の魅力で、その空間を味わうために寒空の下並んでいる多くの人々を見ると目頭が熱くなった。特別なことをしない。変わらない。ただそこにある。ずっとある。ということの大切さと同時に難しさを感じた。

変わらないのに斬新!

名物は海老クリームフライ

定食は14種類。それ以外にもサイドメニュー、小鉢やビールも揃っている。創業当時から変わらないが、この店ならではの看板メニューといえば、「海老クリームフライ」だ。一見すると、カニクリームコロッケの海老バージョンかと思えるが、出てきた見た目は海老フライそのものだ。

通常の海老フライより肉付きがよく太めな理由は、海老をクリームシチューで包んで揚げているからだ。

サクサクの衣の下に、とろ〜りとクリームが隠れており、海老のプリプリへとつながる。食感の三重奏が美しい。日本昔話のようなツヤツヤの山盛りご飯もあっという間に平らげてしまえるボリューム感もうれしい。おそらくここでしか食べられないメニューなので、桜新町が普段行動範囲にない人も、ぜひこれを目当てに訪れてほしいほどの逸品だ。

すき焼き丼にチキンカツ!

体育学生もよろこぶパワー飯が揃う

桜新町は、近隣に日本体育大学、駒澤大学、東京農業大学と大学が多く、体育系の学生が多い。そんな学生の食欲に応えるボリューム満点のパワー飯が多く揃う。大衆食堂の定番のチキンカツは、皿からはみ出さんばかりの大きさだ。

そして雑誌やテレビなどで紹介されているすき焼き丼は、たっぷり味がしみた牛肉と野菜に紅生姜をトッピング。別皿盛りにして、すき焼き定食として楽しむお客さんは結構多い。しるだくのご飯をかき込むか、ご飯と別にして、納豆や卵などの小鉢を追加して、ちょっと贅沢な定食を楽しむか、自分なりの楽しみ方ができるのも定食の魅力だ。

どの定食も1000円以下で、学生にも一人暮らしのサラリーマン&ウーマンの財布にもやさしい。

これからますます増えていくであろう、老舗の大衆食堂の老朽化による閉店や移転。「ふらっと立ち寄れる実家のような空間」を作るのは、並大抵のことではない。40年以上、いい意味で変わらず、私たちを待ち続けているお店がこれからも変わらず、温かい定食と空間を提供できるように、ファンとして通い続けたい。