ビッグバン後、宇宙に生まれ始めた「1番星」のシグナルを初観測。見えなかった初期宇宙の謎解明の可能性

米アリゾナ州立大学、マサチューセッツ工科大学などの天文研究グループが、宇宙の誕生の瞬間とされるビッグバンから1億8000万年後に生まれ始めた星々、つまりこれまでで最も古いと思われる星々からの電波シグナルを観測したと科学誌Natureに発表しました。ビッグバン直後の宇宙というのは、まだ光もなく、非常に高温なエネルギーの粒子で満ちていたと考えられています。宇宙の暗黒時代と言われるその頃から約38万年が経過すると、宇宙の温度は次第に低下し、電子と原子核が結合して原子が生成されるようになります。そして光子は電子との相互作用を逃れて長距離を移動できるようになりました。これが、宇宙が遠くまで見渡せるようになった「晴れ上がり」と呼ばれる時期です。


この晴れ上がりの時期に発せられた電波がマイクロ波背景放射(CMB)と呼ばれ、ビッグバンを裏付ける証拠とされるもの。研究者らは、宇宙に星が形成され始めると宇宙空間にある水素ガスが集まり過熱することで、CMBの放射が吸収されるようになったと推測しています。そして、この時の水素が発した電波シグナルを観測できれば、宇宙最古の星々が生まれた時期について知ることができるというわけです。

ただ、問題はこのシグナルを観測するのが非常に難しいということ。アメリカ国立科学財団のPeter Kurczynski氏は、この観測の難易度を「ハリケーンのど真ん中でハチドリの羽音を聞き分けるようなもの」と例えています。

今回の研究成果の発表はそのとてつもなく受信が難しいとされた水素由来の電波を初めて観測したということ。Judd Bowman氏は「この小さな信号の発見は、初期の宇宙を覗く新たな窓を開いたようなもの」と説明します。

驚くのは、われわれ素人ならさぞかし巨大な施設で観測したのだろうと思うところを、実際はダイニングテーブルほどの平面アンテナを使い、それを街から遠く離れ電波干渉の少ないオーストラリアの砂漠に置いて、シグナルを受信したのだとか。宇宙はなんとも奥深いものです。



チームは、アンテナの位置を調整したり別のアンテナを使って受信し直したり、さらに受信機器のキャリブレーションをやり直したりしてそのシグナルが間違いなく本物であることを確認したとのこと。しかもかなり微弱だと思われていたそのシグナル強度は予想の2倍ほどもあったことがわかり、当時の宇宙が予測よりも低い温度だった可能性があるとしています。

同じくNatureに掲載された別の論文では、イスラエル・テルアビブ大学研究者が宇宙の暗黒物質(ダーク・マター)について「より冷えた宇宙」を説明できると主張しており、チームの研究者Judd Bowman氏は「それが確かならば、宇宙に存在する物質の85%を占める暗黒物質と通常の物質との作用に関する新しい物理が垣間見えたことになるかもしれない」と語りました。

もちろん、この観測結果はまだ様々な実験や検証繰り返して確認される必要があります。他の研究者らによっても同様の観測が行われ、同様の結果が得られるならば、これまでわからなかったごく初期の宇宙の研究が活発化するはずです。

少々気が早い気がするものの、ハーバードの天体物理学者Avi Loeb氏は今回の研究に関して、2つのノーベル賞授賞の可能性を指摘しています。ひとつは、これまで観測できなかった生まれ始めた星々の兆候を観測したこと、もうひとつは新たな物理学の発見。今後の研究の進捗が楽しみでなりません。