他人の前で緊張してしまうとき、どのように対処すればいいのでしょうか(写真:EKAKI / PIXTA)

就職活動の面接や、会議でのプレゼンなど、初対面や大勢の相手の前で話をするのは緊張するものです。精神科医の名越康文先生は、こうした緊張の奥には、無意識のうちに作られた「他人=敵」という認識があると言います。
最新刊『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』より、他人を味方に変える3つのアプローチをお届けします。


私たちは無意識のうちに、他人=敵だと感じていることがある(イラスト:伊藤美樹)

緊張をほぐすには「他人=敵」という認識を変える

自分を否定されたらどうしよう、無視されたらどうしよう、仲良くなれなかったら嫌だな……。私たちは初対面の相手や、少し苦手意識のある人に会うとき、無意識のうちに不安を覚えています。


当記事は夜間飛行が運営する「プレタポルテ」の提供記事です

それは言わば、他人が「敵」として感じられている状態と言えるでしょう。

大学受験、就職活動、仕事でのプレゼンや商談……。どんな場面でも、接する相手のことが「敵」だと感じられているうちは、無意識のうちに身体と心は緊張し、パフォーマンスも落ちてしまいます。

この緊張をほぐすには、「周囲の人やモノを、味方に変えていく」のが近道です。

もちろん、初対面でも、相手がにこやかに、フレンドリーに接してくれれば、こちらの緊張は自然とほぐれてくるでしょう。しかし、そんな恵まれた出会いを、最初から期待するべきではありません。

可能な範囲で、自分のほうから緊張をほぐし、相手を「味方」に変えていく方法を、自分なりに作っておくことが必要です。

その1 挨拶

他人を味方に変えるというと、大げさなようですが、日常のちょっとした行動から変えていくことが可能です。

たとえば「明るく挨拶をする」ということを、いつもよりも気をつけてみる。

「え? それだけ?」と言ってしまいそうになるぐらい単純ですが、これをやっている人とやっていない人では、他者に対する無意識レベルの緊張度が、ずいぶん違ってくる。そういう意味では、相手を自分の味方に変えていく、なかなか有効な方法なのです。

朝、同僚や友人に「おはよう!」と明るく挨拶をすることだけを心がける。それを一か月も続けていれば、だんだんと周囲の人とのコミュニケーションが、スムーズになっていくことを実感できるでしょう。

その2 分かち合う

ある程度、周囲の人が自分の味方に変わってきたと感じられたら、次は「分かち合う」ということにチャレンジしてみてください。分かち合うと言っても、大げさなことをする必要はありません。たとえば頂き物のお菓子があったら、その場にいる人で分け合うようにする。

「良かったら一緒に食べない?」と気楽に口にできるようになると、対人関係のストレスが大きく軽減されるでしょう。

分かち合うというのは、もちろん「物」に限りません。コンビニのレジに、ほとんど同じタイミングで並んでしまったときに「どうぞ」と譲ることも、「分かち合う」ということです。

あるいは、混んだバスに乗っていて、目の前の席が空いたとき、何も考えずに「お、空いた。ラッキー!」と座らず、「座りたそうな人や、辛そうな人はいないかな」と周囲をうかがってみる。これも、「分かち合う」ということの一つです。

ほんの少しだけ頑張るのがいい

これは、簡単に言えば「少し背伸びして、周囲に貢献する」ということですね。この「少し背伸びする」というのって、生きていくうえで大事なことなんです。めちゃくちゃにがんばりすぎると、すぐに燃え尽きてしまいますから、ほんの少しだけ、がんばるのがいいんです。

朝、会社に行ったら同僚がどんよりとした顔をしていたとします。そういうときに、自分のコーヒーを淹れるとき、あえて二杯淹れる。しかも「淹れてやったぞ」というのではなく、「ついでに淹れたんだけど、良かったらどうぞ」とさりげなく差し出す。

あるいは、挨拶するときの声のトーンを少しだけ明るく、さわやかにする、というのも、ちょっとした背伸びと言えるでしょう。

その3 他人に貢献し、そのことをすぐに忘れる


こうした「他人に馴染む」努力をするときの注意点は、「この人にこれをしてあげた」と恩着せがましい気持ちにならないよう、何かをやったら、すぐに忘れる、ということです。

「やってあげた」と執着していると、人はどうしても相手からの返礼を求めてしまいます。でも、そのことに執着しているうちには、相手と「仲間」になることができないんです。

他人と何かを分かち合い、次の瞬間にはそのこと自体を忘れる。これができるようになってくると、対人関係にそれほどエネルギーを割かなくても、群れの中で生きていくことが、ずいぶん楽しく、過ごしやすくなってくるはずです。