2017年末に発売されたiMac Proは、デスクトップ型のMac Proを凌ぐと言われる性能を備えたフラッグシップモデル。既に様々な検証が行なわれているが、ここではフォトグラファー・ビデオグラファーとして活動する御園生氏が、実際の仕事で使用したデータを使い、その実力をテストした。
解説:御園生大地

iMac Pro

img_products_review_imac_01.jpgプレミアム感あふれるスペースグレイのiMac Pro。ディスプレイ:27インチ(対角)Retina 5Kディスプレイ / プロセッサ:8コア 3.2GHz Intel Xeon W / メモリ:32GB / ストレージ:1TB SSD / 価格:558,800円(税別)

プロが望むのは4000万画素超え画像にも4K動画にも対応するマシン

2017年のNikon D850の発売により、プロ用一眼メーカー各社の高画素機は、本格的に4000万画素オーバーの時代に入った(2018年3月現在、Canonの5Ds=5060万画素、NikonのD850=4575万画素、SONYのα7R III=4240万画素と、各社4000万画素以上の高画素機が出揃っている)。

カメラの進化と共に、画像処理マシンの性能も進化している。フルサイズ一眼クラスの機材での撮影を主戦場とするフォトグラファーであれば、画像処理マシンの性能は、多くの場合ノートPCで十分。そうお感じの方も多いかもしれない。

ところが、静止画と動画の撮影も両方手がけるとなると、より高性能なマシンの必要性が視野に入ってくる。筆者も近年、ビデオグラファーとしての4K動画撮影の割合が年々増えているので、現在はメインマシンはデスクトップ型を使用するようになっている。

特に今年からはα7R IIIをメインカメラとしており、静止画と動画の垣根のない撮影に磨きをかけることに日々取り組んでいる。そうなってくると、データを持ち帰ってからの作業にも静止画・動画の垣根がなくなっていく傾向が強まっている。多くの撮影素材を組み合わせて4K動画の編集作業を行ない、編集後にエンコードを走らせる。そしてそのまま同時に静止画のレタッチを快適に行ないたい…。こういった場面では、よりハイスペックのマシンが欠かせないと感じている。

一眼ムービーの世界は静止画以上に発展途上中で、状況が流動的だ。2018年はいよいよ4K60Pの一眼カメラが本格的に登場してくる可能性もある(現状はPanasonic GH5シリーズが先行している分野だ)。HDR動画やRAW動画の普及も、どの程度加速するのか予想が難しい(現時点では、4K60Pのムービーや、HDRのムービーの納品が必須とは個人的には感じていないが…)。

もし今、動画も手がけている、もしくは手がけていくことを視野に入れているフォトグラファーが、新しい画像処理マシンの導入を検討しているとしたら…。今後の動向をにらんで、少し余裕を持ったセレクトをしておいた方が良いかもしれない。

そんな折、Appleから非常に気になるマシンが発売された。言わずと知れたiMac Proである。

img_products_review_imac_02.jpg

img_products_review_imac_03.jpg従来のiMacRetina 5Kとサイズは変わらず、性能は大幅にアップ。付属のキーボードとマウスは、セットアップ手順に従っていくだけで簡単にペアリングできる

img_products_review_imac_04.jpg現時点で単体発売はなく、iMacProを購入しないと入手不可能なキーボード。「Tab」「shift」「Ctrl」など、一部のキーは記号でデザインされている。好みは分かれるかもしれないが、筆者的には好みだ

圧倒的なスペックを誇るマシンとして登場したiMac Proは、プレミア感のあるスペースグレーのボディに、8コア以上のXeon Wプロセッサーを搭載。最低構成でも558,800円(執筆当時)からという。Appleの"本気"を感じるマシンだ。

このマシンに関しては、様々な記事でベンチマークテストが行なわれており、基本性能でMac Proを上回ることが既に伝えられている。そこで当記事では、筆者がフォトグラファー・ビデオグラファーとして、実際に今までの実際の仕事で使用したデータを扱ってみたい。実際の現場で使用した場合、iMac Proがどれくらいの性能・快適性を発揮するのかを中心に検証していこうと思う。

iMac Proの特長

キャリブレーション

まずは、念のため、基本のキであるキャリブレーションの結果について言及しておきたい。

筆者も立場上、色々なマシンのキャリブレーション結果を見ることがあるのだが、総じてApple製品のモニターキャリブレーション結果は安定していて、ばらつきがほとんどない印象がある。そして当然と言うべきか、iMac Proのキャリブレーション後のモニター結果も従来どおり、非常に良好であった。

(EIZOのモニターと厳密に比較してみると、Macのモニターはキャリブレーション後のコントラストがほんのわずかに高い傾向があるため、厳密な精度が必要な印刷原稿を作成する場合は、外付けモニターの使用が安心ではある。)

世にあるフォトグラファーの仕事の多くを、iMac Proのモニターだけで完結することはもちろん可能であると思う。また、5Kのモニターは非常に見やすく、表示している写真の拡大縮小を行なう回数や、モニタ ーに目を近づけて細部を確認する回数を大幅に減らせる。長時間の詳細なレタッチでも、疲労がたまりにくい印象を受けた。(ハードな現場ほど、こういった基本の部分がクオリティに直接響いてくるので、重要な部分だ。)

動画の再生

次に、過去ノートPC時代には少々厳しかった作業を、iMac Proで試してみた。

筆者は4KムービーをDaVinci Resolveというグレーディングソフトで色調整後、非圧縮QTという形式で書き出してPremiere Proに引き渡すという作業を行なうことがあるのだが、この非圧縮QTの再生が、静止画用のマシンでは少々厳しいことがある。

今回は、実際に仕事で使用した、1ファイル25GBの非圧縮QTファイルを再生してみた。結果はコマ落ち(動画の全コマがきちんと再生されず、カクカクとした表示になってしまうこと)は一切なく、余裕がある印象だった。

そして次に、GH5の4K60Pの動画の再生を行なってみたが、これも全く問題なく再生可能だ。静止画用のマシンでは過去にコマ落ち等が発生したような動画でも、iMac Proは余裕でこなしてくれることがわかった。

img_products_review_imac_05.jpgキーボードとマウスは基本ワイヤレスのため、ポートは贅沢に使える。α7R III使いの筆者としては、UHS-II対応のSDXCカードスロットが嬉しい

Core-i7機との性能比較

しかし、ここまでは予想の範囲内とお感じの方も多いかもしれない。そこで、

「Core-iプロセッサならば、カタログスペックからある程度性能の予想がつく。しかしXeonプロセッサ+RadeonのGPUが、現場でどれくらいパワーを発揮するかイメージしづらい」

という方向けに、Core-i7機との性能比較を行なってみた。過去のMacと比べて性能的に上回ることは確実だろうということで、あえて比較対象は筆者所有のマウスコンピューター DAIV-DGZ520M2-SH2というマシンとした。CPUは第8世代Core-i7 8700K(6コア12スレッド)、メモリは32GB、GPUはNVIDIA GeForce GTX 1070Tiという構成。iMac Pro、DAIVとも作業ファイルは内蔵SSD上に置き、総合的な実力を比較した。

静止画テスト

まずはα7R IIIの4240万画素のRAWファイル(実際に仕事で撮影したもの)100枚をPhotoshopで現像してみた。

[PhotoshopによるRAW現像] ※α7R IIIのRAWファイル/4240万画素/100枚

iMac Pro2分47秒
DAIV4分02秒

最新のCore-i7機と比較しても、明確な性能差(約1.45倍高速)があることが判明した。

念のため、Lightroom Classic CCでも、α7R IIIの4240万画素のRAWファイル(違う現場で実際に仕事で撮影したもの)100枚を現像してみた。

[LightroomによるRAW現像] ※α7R IIIのRAWファイル/4240万画素/100枚

iMac Pro3分03秒
DAIV4分03秒

Lightroomでも、ほぼ同様の結果(約1.31倍高速)であった。

動画テスト

次に、仕事で撮影したα7R IIIの4K動画100cutを、全てフルHDに縮小エンコードしてみた。使用ソフトはAdobe Media Encoder CC。

[Media EncoderのフルHD縮小エンコード] ※α7R III/4K動画/100cut

iMac Pro22分18秒
DAIV24分04秒

どちらも十分速いのだが、両機の差は予想よりは大きくなかった(iMac Proが約1.08倍高速)。

最後に、仕事で撮影したα6500の4K動画素材をもとに、実際に編集して納品したフルHD30Pの編集動画のエンコードを行なってみた。この仕事は、ノートPCで無理してエンコードを行なったところ10時間以上かかってしまい、筆者がタワー型PCの導入を決心するきっかけとなった案件だ。

仕事のファイルのため詳細をお見せできないのが申し訳ないのだが、タイムライン上に複数素材を編集し、Premiere Pro上で変形やカラーコレクションを行なっている。どちらも驚くべき短時間でエンコードが終了した。

[フルHD30Pの編集動画のエンコード] ※α7R IIIの4K動画素材を編集

iMac Pro1時間40分
DAIV1時間37分

両機とも十分高速であるが、こちらもそこまで大きな差は開かなかった、とも言えるかもしれない(iMac Proが約1.03倍高速)。

結果としては、静止画ではiMac Proの圧勝。Premiere系の作業では、CUDA対応のWindows機が敗れたものの善戦する形となった。

今回はあくまで実作業上の性能差、という部分にこだわった。CUDA(DAIV)・Open CL(iMac Pro)と、条件が異なるテストはiMac Proにとってアンフェアだったとも言えるし、それでも勝利してしまうのは素晴らしいとも言えるのではないかと思う。

CPU使用率

もうひとつ、言及しておきたい点があった。作業中は両機のCPU使用率を常に監視していたのだが、DAIVは常に90%付近であったのに対し、iMac Proは40%から60%(ごくまれに75%)といった状態で、iMac Pro側は、まだまだ余力を残している印象であったことだ(この状態にも関わらず、静止画現像ではCore-i7 8700Kの1.45倍の速度が出ていることになる)。

img_products_review_imac_06.jpgCPU性能に余裕を残したままで、Core-i7 8700K機に圧勝

そこで、iMac ProのCPU使用率をフル活用してみることにした。

冒頭で述べたとおり、静止画と動画を両方撮影して帰ってくると、複数の重いソフトを同時に走らせたくなることが多い。そこで、仕事で使用したファイルで、以下の作業を同時に行なってみた。

1). Media Encoderで4K30Pの動画を大量にリサイズ(あえてフルHD24Pに)

2). QuickTimeプレイヤーで「GH5の4K60P動画」と「α7R IIIの4K30P動画」の2本をエンドレスでリピート再生(動画リサイズしつつも、特定の動画ファイルが気になってチェックしたくなることがあるだろう。という想定)

3). Premiere Proで4K動画のタイムラインをフル画質で再生(上記作業中に編集作業に突入してしまうこともあるだろう。という想定)

4). Lightroom Classic CC でα7R IIIの写真の色調整を行なう(動画編集中に、動画内で使用した写真の色を再調整するケースを想定)

ここまで同時に行なって、やっとCPU使用率が90%代後半で高止まり状態となった。

この状態では、さすがにGH5動画の再生とPremiere Proの再生に「少々の」コマ落ちが見られた(とはいえ、カクつきとまでは言いにくい程度の軽微なコマ落ちで、動画の内容は十分確認できるレベルであった)。

驚くべきは、この状態でもファンが大変静かであったことだ。排熱系にはかなりの余力を感じられた。

img_products_review_imac_07.jpg排熱性能は非常に余裕のある印象。モニター下部のスピーカーも好印象であった

この状態でも、Finder(Mac OS)操作での動作の引っかかりやソフトの起動の遅れ等は一切なく、トータルな快適性は保たれたままであった(DAIVはパワーには信頼があるものの、Macと比較して、こういった快適性がたまに怪しくなる印象が、個人的にはある)。

何というか…CPU使用率は100%近く使っているものの、iMac Proの持つ更に底なしの安定感を感じるのだ(ここがiMac Proの限界、とは感覚的にどうしても思えない!)

もちろん、実際の作業でここまで多くの作業を一度に走らせることは、なかなかまれであろう。よって、4000万〜5000万画素機の静止画と、4K30P、60Pの動画を取り扱っている範囲内では、静止画・動画を取り混ぜてかなり多くの作業を同時にこなしても、iMac Proの性能限界を感じる場面はほとんどないと言って良いだろう。

iMac Proはどんなマシンか。

「多くのフォトグラファー・ビデオグラファーに、完全な自由と快適性をもたらすマシン」

である。検証を終えてみて、素直に浮かんだ言葉であった。