報告書はあとで書くものという思い込みを捨てる(写真:Greyscale / PIXTA)

今年度も残すところ1カ月。4月から新しく管理職になる人は、そろそろ内示を受けたころでしょう。
ですが、「管理職1年目」には失敗がつきものです。特に、プレイングマネジャーの場合、部下を管理しながら自らの成果も求められるため、仕事量が急激に増えるケースがほとんどです。
日米両方のグローバル企業での豊富なマネジメント経験を基に、『管理職1年目の教科書』を上梓した櫻田毅氏が、高速で仕事を処理し、かつ確実に成果を出す外資系マネジャーの仕事術を紹介します。

前回の記事「仕事を「爆速で終える人」は何をしているのか」は、多くの読者より反響をいただきました。とりわけ、部下を管理しながら自らの成果を求められる管理職の方から好評だったようです。


今回は、多くの仕事を抱える管理職のために、業務を効率的にこなし、かつ仕事の質を向上させることによって生産性を高めることができる、とっておきの考え方、方法について紹介します。

管理職の役割の1つは、チーム全体の単位時間当たりのアウトプット、すなわち仕事の生産性を高めることです。

生産性を高めるためには、仕事の時間短縮を狙った「効率性」の視点だけではなく、仕事の質を高める「効果性」の視点が必要です。たとえば、出張報告書の作成ひとつとっても、「効果性」の視点から作成方法を少しだけ工夫することで、仕事の質が大きく高まっていきます。

出張前に半分書いて論点整理を図る

出張報告書を書くのは、はっきり言って面倒くさい仕事です。口頭報告で済ませるのが一番ですが、提出が義務づけられている場合は従うしかありません。

しかし、書き方を少しだけ工夫することによって、生産性を高めるためのツールとして十分に活用することができます。その秘訣は「出張前に半分書いてしまうこと」です。

一般的な出張であれば、いつ、どこで、誰と会うのかなどの予定は事前に決まっています。そこで出張前に、体裁を気にせずに、これらのことをワード・ファイルなどにベタ打ちしてしまいます。

次に、打ち合わせの内容についても書けることを書いてしまいます。たとえば、Aさんとの打ち合わせでは、何の案件についてなのか、その背景は何か、議論のポイントや現時点でわかっていること、関連する情報、クリアすべき課題や注意点、決めたり合意したりすべき項目などについて、書けることはたくさんあるはずです。

これは、とりもなおさず、出張報告書という様式を借りた論点整理にほかなりません。事前にわかっていることや自分の考えを文字にすることで、何のためにどのような方針で出張に臨むのかといったポイントを明確にしているのです。

何の準備もせずに、手ぶらで出張先に乗り込むような人でないかぎり、私の経験上、ここまでで、報告書の半分は埋めることができます。複数の人と違った案件で会うときは、案件分だけ同じように書いておくことができます。

「空欄効果」でゴールを明確化する

さて、ここまで書いてから報告書の体裁を整えます。そうすると、議論の内容や結論など、現地でなければ書けない箇所が空欄としてぽっかり浮かびあがってきます。それが、出張で手にすべき情報、すなわち出張のゴールなのです。

人は穴があったら覗きたくなりますし、裏返しのものはひっくり返してみたくなります。同じように、空欄があったら埋めたくなるものです。当日は、空欄が順番に埋まっていくように気をつけながら議論を行うことで、わき道にそれずに内容の濃い打ち合わせをすることができます。

「出張→報告書」といった順番どおりに報告書はあとで書くものという思い込みを捨て、「報告書(1/2)→出張→報告書(1/2)」のように少し順番を変えるだけで、事前に論点整理ができ、「空欄効果」によってゴールに的を絞った打ち合わせができるなど、仕事の質が高まるのです。

報告書を事前に半分書くことで出張の質が高まる効果は、仕事全体へと波及していきます。

論点整理をしてゴールを明確にした打ち合わせを行うことで、必要な合意がしっかりと得られたり、期待していた情報を確実に手にすることができたり、あるいは、今後の方針を誤解なく共有することができたりします。その結果、関係者間の認識の違いによる仕事のやり直しや、合意の詰めが甘くて再度の打ち合わせを余儀なくされることなど、余分な仕事が発生する可能性が減ります。

すなわち、仕事全体がより確実に、より迅速に動いていくため、単位時間当たりのアウトプットである生産性が向上していくのです。

この考え方は、出張だけでなく、日々の業務日報や顧客との打ち合わせ報告、営業会議や商品開発会議の報告書など、何らかの業務活動のあとに報告書の提出が求められている仕事に対してほとんど適用できます。

やはり事前に報告書を半分書いて論点整理を行い、空欄効果でゴールに焦点を当てることによって、顧客との打ち合わせや会議などの質が高まり、さらにその先の仕事へと効果が波及していきます。

圧倒的に仕事の速い人は「効果性」を意識している

生産性を高めるためには、同じ仕事をより短い時間で行う「効率性」の視点と、仕事の質を高める「効果性」の視点があります。

たとえば、お客様への提案資料を作成する場合、プロセスのルーチン化やシステム化によって、作成時間を短縮するのが「効率性」です。それに対して、より強く相手の琴線に触れ、心を動かすことができる内容へと工夫することが「効果性」です。

「効率的にプレゼン資料を作成する」と「効果的なプレゼン資料を作成する」は、まったく別物であることを考えればその違いがご理解いただけるでしょう。

ここで紹介した例は、報告書作成にかける時間を短縮する「効率性」の話ではなく、仕事の質を高める「効果性」の話です。普段、何げなくやっている仕事の順番を工夫するだけですが、その効果が仕事全体に波及して、生産性向上に対してより大きな影響を与えることになります。

圧倒的な速さで仕事をして、しかも質の高いアウトプットを出している人は、「効率性」だけでなく「効果性」を強く意識した仕事のやり方に心血を注いでいるのです。