スーツの格好がだらしないと、第一印象も悪くなってしまう。それを防ぐためにも着こなしの基本をマスターしておいたほうがいいだろう(写真:kikuo / PIXTA)

「クールビズが当たり前の時代、就活生だってガチガチのスーツを着なくてもいいのではないか?」、「そろいもそろって、黒いスーツを着る必要なんてないでしょう」、「漫画『カイジ』の帝愛グループの黒服にしたいのか(ざわ…ざわ…)」。


いよいよ3月1日。就活生の服装の話題となると、巷には否定的な声が目立つ。確かにダイバーシティ(多様性)の重要性が叫ばれる今、もっと多彩な服装で就職活動をしたほうがいいかもしれない。企業の側も多様な人材を採用でき、メリットもありそうだ。

ただ実情は、まだまだ学生のほとんどがお決まりの「リクルートスーツ」スタイルで、就活に臨んでいるはずだ。あえて大勢から抜け出し、違う服装でこれから始まる企業説明会や面接に行くのは、やっぱりリスキー。「みんなと違う格好をして、評価が上がるならいいが、“悪目立ち“はしたくない」と考える学生が多いのは当然だろう。

スーツで大事なのは「着こなし方」だ

もっとも、就活ファッションで“悪目立ち”を気にするなら、別の部分にこそ、注意したほうがいいかもしれない。

それはスーツの“着こなし方”だ。

紳士服最大手で「洋服の青山」や「THE SUIT COMPANY」などの店舗を運営している青山商事では、大学などで就活生向けに「スーツの着こなしセミナー」を数多く開催している。その担当者で法人部課長の後藤康文さんは言う。


男性の場合は袖からシャツが見えるくらいがベスト。下のボタンは留めないのが正解だ (写真:Ushico / PIXTA)

「学生の方々はビジネススーツを着慣れていない方がほとんど。その結果、スーツを着るときの“基礎知識”が欠けていることが多い。そのために『だらしない人かな』『清潔感が足りないな』と、面接官や採用担当者の第一印象を悪くするリスクがあるわけです」(後藤さん)。

心理学に「メラビアンの法則」と呼ばれるものがある。人が目の前の誰かの印象を決めるときの要素として、”見た目”を表す視覚情報が全体の55%を占め、聴覚情報(話し方)が38%、話す内容は7%に過ぎない、というものだ。寝ぐせなどが残ってたり、だらしがないシャツやスーツの着方をしていると、見た目の印象も悪くなってしまう。

では、そんな誤解を生じさせないように、覚えておきたいスーツ着こなしの“基本のキ”とは? 「だらしがない」、「清潔感が足りない」と思われてしまう、NG着こなしを紹介しながら、ひもといていきたい。

だらしないのは、それだけでもったいない

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「ガラケーならいいのかな?」という話では、当然ない。思わずやりがちなNGの代表がこれ。携帯電話に限らず、「スーツのジャケットのポケットに、モノを入れて着てしまう」ことだ。スーツはそもそもウールの平織り生地を中心とした薄手の生地を使っている。そこに存在感の出るスマホや財布、キーホルダーなどを入れたら、シワが寄るだけではなく、シルエットも大幅に崩れる。結果、本人が思っている以上に、だらしなく映ってしまうわけだ。

「よく言われることですが、テーラードジャケットのポケットは小物入れではなく、“飾り”だと認識しておきましょう。何か入れるとしても、目立ちにくい胸の内ポケットに、名刺入れを入れるくらいにしておきたいですね」(後藤さん)。

普段着ているカジュアルウェアのノリで、「上着のポケットにスマホを入れていた」だけで、「だらしがないな」という第一印象を持たれるのは、あまりにもったいない。スーツのときは、スマホや財布は、バッグの中にしまっておこう。

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細かすぎるようで、大きな差を生むのが、この着こなしだ。ジャケットの袖丈は、まず手を下ろしたときにくるぶしが隠れるくらいがちょうどよく、かつシャツの袖が1cmほどジャケットの袖から見えていると、とても清潔感が出て、美しく見える。ショップの店員のジャケット姿が、なんだか洗練してみえるのは、実は袖元の差にあるといってもいい。

諸説あるが、この着こなしのルーツは「もともとシャツが上着を汗や脂で汚さないための“肌着“の役割を果たすものだったから」だという。


女性はスーツを着る際、袖のシャツは出さず、ボタンはしっかり下まで留めておくほうがいい (写真:cba / PIXTA)

ジャケットの袖がシャツより長いと、肌が直接ジャケットに触れてしまう。が、中に着たシャツのほうが長ければ、袖を汚してしまうことがない。そのなごりなのか、結果的に、ダークスーツを着ていても、袖から白いシャツを”チラ見せ”させているほうが「清潔感がアップ」して見える、ということなのかもしれない。

ただしこれは、男性のテーラードジャケットに限った着こなし。女性の場合、手首が隠れる程度の長さを目安にし、さらに中にきたブラウスの袖も出ないほうが美しいとされる。

NG パンツをしっかりとウエストで履かない

股上の浅いスキニーパンツや、腰で履くワイドパンツなどに慣れすぎて、なかなかウエスト部分でボトムスを履くことをしない、なんていう学生も多いはずだ。カジュアルならばそれでいいが、ビジネススーツではNG。そのクセが抜けずに、正しいウエスト位置でパンツを履いてないと、これまただらしない印象を与えてしまう。試着するときは、へその下あたりにウエストがくるようにして履こう。もちろん腰履きはやめておきたい。

男性は一番下のボタンは留めない

このときにウエストサイズの目安は、片手をパーの状態にして、すっと上から入るくらいがベスト。手の平が入らないくらいだとキツ過ぎて、ポケットが開いたり、ヒップがパツパツになったりして、みっともない。逆に緩過ぎる場合、ベルトをすれば履くことができるが、余計なシワが寄ってしまい、シルエットが台無しになる。

ちなみに、女性の場合はウエストだけではなく、特にヒップのゆとりもチェックしておく。セミタイトのスカートが基本なので、ウエストだけであわせるとヒップがキツい……などということもありうる。基本はヒップ重視でサイズをあわせて、ウエストは場合によっては購入店で直しに出す、という手もある。

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シングルスーツならば、ジャケットのボタンは、2つか3つが今の主流だ。きちんとした印象を与えるなら、当然、ボタンは留めて着たくなるが、ここにも落とし穴がある。

「一番下のボタンは留めない」というのが基本ルールだからだ。スーツのジャケットは、着丈がヒップの部分までかかってくる。そのため、ジャストフィットしたジャケットほど、ボタンを下まで留めてしまうと、形がいびつになってしまう。やはり、余計なところにシワがよるし、何より動きにくくなる。

テーラードジャケットの一番下のボタンは、前出のポケット同様、「飾り」だと認識しておくのが正解である。

もっとも、女性の場合は、ジャケットを下まで留めるデザインのものが多い。これは男性と違って、女性用のジャケットは、よりコンパクトなサイジングで仕立てられているから。着丈がヒップまで干渉しないため、下まで留めてもスッキリ見える。

「おしゃれ」と「身だしなみ」は違う

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肩のサイズもばっちりあったジャケットに、パンツもウエストでしっかり履いている。そんなスーツスタイルでも、細部のツメが甘いと、それだけで緩い印象に見られることがある。

・シャツの衿が、ベロンと反り返っている。
・ジャケットのフラップ(ポケットについたフタ)が、ウインクしたように片方だけ中に入っていて、片方は外に出ている(フラップは出すか、しまうか、どちらかに)。
・ネクタイの締め方が緩く、くたびれたおじさん感を醸し出してしまっている。
・靴が黒なのに、ベルトが茶色でそろっていない。
・ジャケットのセンターベントや、サイドベンツの“しつけ糸“を、そのままにして着ている。

​こうしたちょっとしたところでも、なんとなく清潔感は損なわれることがある。まさにもったいないとしか言えない。会社説明会や面接のときは、家を出る前に、鏡でしっかりチェックを。あるいは家族や友人に見てもらう習慣をつけてもいいだろう。

「おしゃれと身だしなみは違うもの。おしゃれは好きな格好することで、すてきに見せることができます。しかし、身だしなみは人に不快感を与えないために、服装を整えること。就活では身だしなみにウエイトをおくことだと思います」(後藤さん)。

以上、いくつかの就活におけるNG着こなしと、正しい着こなしを説明してきた。「就活用のスーツはネイビーか黒か」だとか、「あわせるシャツはレギュラカラーがいい、いやワイドカラーがいい」といった論争はひとまずスルー。まずは、しっかりと清潔感と好印象を醸し出せる、スタンダードな着こなし法を覚えておきたい。