今週末4日、中山競馬場で3歳重賞・GII弥生賞(芝2000m)が行なわれる。このレースは、4月15日の牡馬クラシック第1弾・GI皐月賞(中山・芝2000m)のトライアルレースで、1〜3着馬には同レースの優先出走権が与えられる。

 今年の弥生賞は、本番を前にして大注目の対決が実現する。無敗の2歳王者ダノンプレミアム(牡3歳・中内田充正厩舎)と同じく無敗のワグネリアン(牡3歳・友道康夫厩舎)、いずれもディープインパクト産駒である。



2歳王者ダノンプレミアム。弥生賞が今季の始動戦となる

 ダノンプレミアムは昨年6月の新馬戦(阪神・芝1800m)を4馬身差で快勝して、続くGIIIサウジアラビアロイヤルC(10月7日/東京・芝1600m)も2歳コースレコードの1分33秒0の好タイムで完勝。そして、前走のGI朝日杯フューチュリティS(12月17日/阪神・芝1600m)でも2着に3馬身半差、1分33秒3のレースレコードで勝利し、最優秀2歳牡馬のタイトルを獲得した。このレースで2着に3馬身半差以上をつけたのは1993年(当時は朝日杯3歳S)の勝ち馬で、のちの三冠馬ナリタブライアン以来24年ぶりのことだった。

 今回はそれ以来、約3カ月ぶりの実戦で、初距離の2000mがポイントとなりそうだ。新馬戦で1800m戦(1000m通過1分01秒9)を快勝しており、200mの延長は大きな問題ではないと思うかもしれないが、1000m通過で1分を切る1600mの速いペースに慣れていると、スローペースになった時に抑えきれるか、やや不安ではある。

 ちなみに、カデナが勝った昨年の弥生賞は1000m通過が1分03秒2のスローペースだった。スローペースになると、スピードのあるダノンプレミアムは逃げる形になることも考えられる。人気を集める立場でそういった展開になると、他馬の目標にされてプレッシャーをかけられるという不利が出てくるのだ。

 母インディアナギャルはアイルランドで走り、芝8F(ハロン、約1600m)、10F(約2000m)のGIIIで2着するなど、重賞戦線で活躍。祖母の父にデインヒルを持つのは同じディープインパクト産駒で昨年の英GIレーシングポストトロフィーを勝ったサクソンウォリアーと同じで、世界的にもトレンドの配合と言える。

 一方のワグネリアンの戦績を振り返ってみよう。デビュー戦の7月の新馬戦(中京・芝2000m)は評判馬ヘンリーバローズに次ぐ2番人気だったが、同馬との壮絶な叩き合いをハナ差制して初勝利。上がり3F32秒6は何と、古馬を含めた中京競馬場の最速タイムだった。

 続くOP野路菊S(9月16日/阪神・芝1800m)は重馬場にも対応し、2馬身半差で快勝した。GIII東京スポーツ杯2歳S(11月18日/東京・芝1800m)も3馬身差の快勝で3連勝を飾っている。この馬の素晴らしいのは初戦の超スローペース(1000m通過1分07秒0)、2戦目の重馬場、3戦目のハイペース(1000m通過58秒5)とまったく異なる展開と条件のレースに難なく対応し、いずれも強い競馬を見せたことだ。距離も経験済みだし、今回のレースにおける不安はほとんど見当たらない。

 血統は全姉にOPアネモネSを勝ち、GIIIフェアリーS3着のテンダリーヴォイスがいて、祖母はダートの鬼脚で有名なブロードアピール(GIIIガーネットSなど、重賞6勝)。ブロードアピールの孫が牡馬クラシック戦線の有力馬になるというのは意外に思う方もいるかもしれないが、スプリント戦で優れたスピードや瞬発力を見せた牝馬が、クラシックホースを送り出すことはよくあるケースである。

 さて、この2頭、はたしてどちらが勝つのだろう。どちらが勝ってもおかしくないハイレベルな戦いになりそうだが、今回は距離経験があり、後ろからダノンプレミアムをマークできる展開になりそうなワグネリアンを上に見たい。

 今回の状況は2016年の弥生賞を思い起こさせる。当時も、無敗の2歳王者リオンディーズと、3戦3勝のマカヒキの争いとなったが、先に抜け出したリオンディーズを、後方追走のマカヒキがゴール前でかわすという展開だった。奇しくも、ワグネリアンはマカヒキと同じ友道康夫厩舎のディープインパクト産駒で、馬主の金子真人ホールディングス、生産者のノーザンファームも同じだ。

 2年前の再現となるのか、それともダノンプレミアムが2歳王者の貫禄を見せるのか、はたまたオブセッション、ジャンダルムなどが2強の争いに待ったをかけるのか。興味は尽きない。

◆あのワグネリアンが「よりダイナミックになった」との情報をキャッチ>>

◆その強さ、ナリタブライアン級。王者ダノンプレミアムは何がすごいのか>>

◆弱冠20歳にして各地を行脚。藤田菜七子ジョッキーは何を見たのか?>>