米ウォールストリート・ジャーナルや米ニューヨーク・タイムズなどの米メディアの報道によると、米アマゾン・ドットコムは、このほど、ホームセキュリティー機器を手がける米国の新興企業を買収した。

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買収金額は、1070億円超

 アマゾンは詳細について明らかにしていないが、買収金額は、10億ドル(約1070億円)以上と見られている。同社はこれまで、ゲームプレイのネット実況を手がけるトゥイッチ・インタラクティブ(Twitch Interactive)や、アパレルの電子商取引企業ザッポス・ドットコム(Zappos.com)、倉庫内の自律型ロボットシステムを手がけるキバ・システムズ(Kiva Systems)などを買収しているが、それらの買収金額はいずれも10億ドル未満だった。

 アマゾンは、昨年、米高級スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを137億ドルで買収したが、今回の買収は、それに次ぐ規模で、同社としては過去2番目に大きな企業買収だと、米メディアは伝えている。

 今回同社が買収したのは、米カリフォルニア州サンタモニカに本社がある、リング(Ring)と言う企業。セキュリティーカメラ付き玄関ドアチャイムなどを手がけている。

 これら製品のいくつかは、アマゾンの音声アシスタントサービス「Alexa」に対応している。例えば、Alexaを搭載するディスプレー付きスマートスピーカー「Echo Show」や、映像配信端末「Fire TV」に、「アレクサ、玄関前を見せて」と言えば、機器のディスプレーやテレビ画面に、リアルタイムの画像が表示されるとともに、音声も聞くことができる(リングの発表資料)。

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12月にもホームセキュリティー企業を買収

 これに先立つ昨年12月、アマゾンは、ブリンク(Blink)という米国の新興企業を買収した。こちらも、ビデオドアホンや防犯カメラを手がける住宅用セキュリティー企業。その製品はアマゾンのAlexaに対応している。

 2社の製品に共通しているのは、価格が100〜200ドル程度と比較的安価なこと。カメラで捉えた映像は、スマートフォン用アプリで見るといった使い方も同じで、大掛かりな設備は不要だ。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、世界のホームセキュリティー市場は、2020年に515億ドル規模に達すると見られている。このうち、製品価格が安く、取り付けも容易な、DIY(ドゥ・イット・ユアセルフ)市場の成長が最も速いと、専門家は予測している。

 これまでのアマゾンの動きを見ると、同社が狙っているのは、このDIY市場と言えそうだ。

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eコマースとホームセキュリティーの連携

 この分野における同社の戦略を知る上でヒントとなるのは、昨年10月に米国で発売した屋内用セキュリティーカメラ「Amazon Cloud Cam」と言えるのかもしれない。

 これは、有料プログラム「Prime」の会員向けに始めた、不在時宅内配達サービス「Amazon Key」に用いるカメラ。

 米国では、商品配達時に受取人が不在の場合、荷物を玄関ドアの前に置いていくのが一般的。しかし、この方法では、商品が雨に濡れたり、盗難に遭ったりするといった問題がある。そこで考えたのが、Amazon Keyだ。

 配達ドライバーが、顧客自宅の玄関ドアの鍵を開け、商品をドアの内側に置き、再び施錠していくというもので、スマート電子錠と、屋内用セキュリティーカメラ、スマートフォン用アプリの3つを組み合わせて、セキュリティーを確保する。

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 そして、アマゾンはこの仕組みを、家庭向けサービスにも使おうと考えている。

 アマゾンには、「Amazon Home Services」と呼ぶ家庭向けサービス事業がある。同社のサイトから、ハウスクリーニングや、住宅リフォーム・修繕、水道工事、大型家電の取り付け、家具の組み立てといったサービスをプロに依頼することができるというものだ。

 当然ながら、これらサービスを受ける際、我々は自宅にいる必要がある。しかし、Amazon Keyの仕組みがあれば、顧客不在時でもサービスが提供できるようになるとアマゾンは考えている。

 果たして、我々消費者は、不在時に見知らぬ人を家に入れることができるのだろうか? このサービスが多くの消費者に受け入れられるのかは、今のところ分からない。しかし、アマゾンはeコマースの障壁となっている顧客不在時の問題を、ホームセキュリティーシステムで解決できると考えている。

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筆者:小久保 重信