生きていくうえで軸となる、仕事と恋愛。そのどん底からの抜け出し方を、数多の荒波を乗り越えてきた漫画家・西原理恵子さんが指南。迎え撃つのは、人生の流れに身を任せてきたという、チームナックスのメンバーでもある俳優・安田顕さん。捉え方次第で、ピンチはチャンスに!

波瀾万丈な西原理恵子さんの人生。転んでも、立ち上がる。その濃厚で逞しいサバイバル経験を、安田顕さんとお聞きすることに。

西原:私が最初につまずいたのは、19歳で美大の予備校に入った時ですね。

安田:どうされたんですか?

西原:課題で描いたデッサンが、成績順に貼り出されたんですけど、私は最下位。その時点でプライドはぺしゃんこだった。それなのに、いざ武蔵美に入ったら、まわりはもっとスゴい人たちだらけで…。その上には東京藝大っていうのがあって、さらに院とかになるとチョモランマみたいなものでしょ。でも、予備校で最下位からスタートしたおかげで、自分の実力がどんなものか、もうわかっていたんですよね。だから、卑屈にならず、「そんな自分にできることは何なのか」って、考えることができたんです。

安田:冷静ですね。

西原:で、始めたのが、1カット500円のエロ本のカット描き。本当は、芸術家とかイラストレーターとか、かっこいいのになりたかったんですけど、私はとにかく絵で食べていきたかったから、身の程知らずの夢にはしがみつかなかった。“自分には才能がある”と思っている人たちが絶対にやらないことにこそ、自分にできることがあるんじゃないか。そう思って行ったのが、エロ本でした。

安田:でも、それが今の足掛かりになったんですよね。

西原:はい。ただ、その頃、男でもつまずいています(笑)。

安田:そうなんですか!

西原:当時、大学の学費から生活費まで自分で稼がないといけなくて、居酒屋とかいろんなアルバイトをしていたんです。歌舞伎町で水商売のバイトもしていたんですけど、お客さんにセクハラされたり、「バカ女」扱いされたり。時給1400円もらえるからいいやって思ってたはずなのに、なんか寂しくて…。そういう時に、無職の男が転がり込んでくるという(笑)。もともと田舎でヤンキーと付き合ってたから、無職ってわりと平気だったんです。

安田:免疫があったんですね(笑)。でも結局、無職はダメだと?

西原:そう。自分が稼いだら、相手も稼いでくれるなんて思い込むのは大間違い! むしろやらなくなっちゃう。私がバイトでへとへとになって家に帰ると、ぐちゃぐちゃに汚した部屋で無職の彼が待っていて、「靴下どこ?」って。

安田:それはイラッとしますね。

西原:でも、そんな男でもそばにいてほしかったのは、自分に自信がなかったから。「いらない」って思えるようになったのは、絵の仕事で食べていけるようになった時。引っ越そうと部屋を片づけていたら、そこに“働かない男”っていう粗大ごみがあることに気づいて。ただ、その後もそういう“腐れチポ”ばかりと付き合っちゃうんですけどね(笑)。

安田:腐れチポ!?

西原:ダメ男のことです。

ユーモアをまぶした勢いある西原さんの語り口に、少々押され気味の安田さん(笑)。そんな中、ちょっと聞いてみたいことがあるようで…。

安田:西原先生は、刺激的な言葉で人を惹きつけて、本質に持っていくっていう印象を受けたんですけど、それはもともとの感性なのか、あるいは生きていくうえで必要な技術として作り上げてきたものなのか、気になります。

西原:典型的な、南方のウソつき文化です。

安田:え!?

西原:南国の人って、陽気な感じでウソついたりするでしょ? かまして、ウソついて、笑わせて。私の地元の高知では、そういう黒潮文化が染みついているというか。何しろ、人を笑わせたら勝ち。

安田:そういえば、僕らチームナックスが人生相談に乗るっていう企画をやったとき、「人見知りが直りません」という相談に対して、うちの大泉洋は、「おもしろければ、なんとかなる。それを磨けばいい」って言ってたんですよね。僕は真面目に、「相手と真摯に向き合う」なんて答えたんですけど、今の西原先生のお話を聞いて、大泉のほうが正解かなっていう気がしてきました(笑)。

西原:確かに、“おもしろい”はサバイバル術の一つになるかも。わが家でも大事にしているのは、笑いだったりしますしね。いくらどん底の状況でも、エグるようにツッコんで笑いに変えちゃう。それが明るい方向に向かっていくためのコツなんだと思います。

安田 顕さん 俳優。1973年12月8日生まれ、北海道室蘭市出身。

西原理恵子さん 漫画家。1964年11月1日生まれ、高知県高知市出身。

※『anan』2018年3月7日号より。写真・芹澤信次 スタイリスト・村留利弘(安田さん) ヘア&メイク・西岡達也(安田さん) 高松由佳(西原さん) 取材、文・保手濱奈美

(by anan編集部)