最近、注目を集めている「糖質制限」。糖質を制限することでダイエットを目指すものですが、どのくらい制限すればいいのか、どんな食材がOKなのか、わからなくなっている人も少なくないのでは?

前回に引き続き北里大学研究所病院の山田 悟先生に、糖質制限の正しいやり方について話を伺いました。

美容ダイエットにカロリー制限は禁物。その理由とは?

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前回は、糖質がなぜ太るのかというお話を山田先生に伺いました。糖質は、体の中で消費されずに残った場合に、インスリンというホルモンの働きで脂肪となり、体内で蓄積されます。脂肪が多く蓄積されると、インスリンの働きが悪くなり、結果として糖尿病のリスクを大きく上げることになります。

「そこで生まれたのが『糖質制限』という食事法です。糖質制限は高血糖や血糖値の激しい上下動を抑えるための食事法として生まれたものですが、糖尿病の方への食事法はこれまで主にカロリー制限の方法が推奨されてきました」(山田先生)

カロリー制限は、ダイエットの経験がある方なら誰しも一度はやったことがあるものでしょう。しかし、それには危険性が伴うと言います。

「病的な肥満ではなく、美容のためにダイエットするという場合、カロリー制限は決してやってはいけません。カロリーの摂取を減らすと、人間の体は一定の状態を保つために、カロリーの消費を落とす方向に働きます。いわゆる代謝が悪くなるのです。

そのとき、もっともエネルギー消費が大きい筋肉から削ってしまうのですが、カロリー制限に耐えきれずに食べてしまうと、今度は体脂肪で増えていきます。さらに最近では、骨粗鬆症のリスクも大きくなることがわかっており、アンチエイジングという意味でも悪影響のほうが大きくなるのです。そこでおすすめしたいのが、私が提唱する緩やかな糖質制限である『ロカボ』です」 (山田先生)

主食を減らして、おかずをたくさん食べるロカボダイエット

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ロカボとは、低糖質を英訳したローカーボハイドレートを略したもの。糖質制限と同じようにいわれる言葉として、低糖質や炭水化物抜きなどがあります。ロカボはそれらとどのように違うのでしょうか。

『ロカボ』は、糖質を一食20〜40g、それとは別に一日10gまでのスイーツ、間食を食べて、一日の糖質摂取量をトータルで70〜130gにする糖質制限の方法です。現在、日本人の糖質摂取量は1食あたり平均で90〜100g、一日では270〜300gぐらいだといわれていますので、ロカボではその半分〜3分の1程度に抑えるようにとお話しています。

いわゆる『糖質制限』といわれるものの中には、糖質の摂取量を限りなくゼロに近づけるものも含まれるのですが、あまりに激しい食事法のため、ほとんどの方がドロップアウトします。またその場合、体は脳のエネルギーとなるブドウ糖の代わりにケトン体という物質を出します」(山田先生)

山田先生は、極端な糖質制限を推奨する人たちの中には、ケトン体は出れば出るほどいいと言う方もいますが、脳にとってはよくても体にとってはあまりよいとは言えないと話します

「ケトン体が出てくるような極端な糖質制限で、血管機能の障害などが起こる可能性を示唆する研究データがあります。また、悪玉コレステロールが上昇する可能性も示されています。

また、繰り返しになりますが、極端な糖質制限では食べられるものが限られてくるので、食事の幅も狭くなりますが、ロカボならば食べられるものの幅はぐんと広く、継続しやすいです。そのうえで極端な糖質制限と緩やかな糖質制限とで体重減量の有効性に差異はないとする論文もあるのです」(山田先生)

一食で摂取できる糖質40gをごはんに換算すると約100gほど。おかずの糖質量を考えれば、ごはんは70gにするとベストです。ごはん70gは、茶碗で約半分くらいの量になり、食パンだと6枚切りの食パン1枚程度になります。糖質制限をやったことがある方なら「意外とたくさん食べられる」と思ったのではないでしょうか。

主食を減らして物足りないと感じたらその分はカロリーは気にせず、おかずをたくさん食べてOK(食べねばならない)とのこと。

ロカボで工夫すべきは、主食とスイーツです。主食とスイーツ以外はカロリーを気にせずどんどんお腹いっぱいになるまで食べてください。

積極的に摂ってほしい食品は、肉や魚、豆腐などの大豆製品、野菜、ナッツ類です。野菜でもいもやかぼちゃといった飢饉で主食とされた食べ物は糖質が多いので、食べ過ぎに注意しましょう。またナッツは糖質が少なく、脂質の多い食材でとてもいいのですが、大豆以外の豆類は糖質を豊富に持っていますので、こちらも注意が必要です」(山田先生)

ロカボを実践する上で、意外と知られていないのが果物だそう。果物はビタミンが豊富という点からも、積極的に食べる方が多いですが、たくさんの糖質も含んでいるので注意が必要と言います。

「特に日本で売られている果物は、甘みを強くする方向で品種改良が進んでいますから、糖質量もそれに比例して増えていると考えてください。

『果物は野菜』『果物は美容にいい』というイメージがありますが、どちらかといえば果物はお菓子としての側面が強くなっています。朝はただでさえ血糖値が上がりやすくなっています。『美容のために朝食はスムージー』というのは間違いで、むしろ危険極まりない食事なのです」(山田先生)

脂肪を筋肉に変えてくれるロカボ

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ロカボを実践していくと、筋肉は落ちにくくなり、体脂肪だけが落ちて体重が減っていくとのこと。山田先生ご自身もロカボを実践して、体重は10キロ近く落ち、体脂肪も25%から14%まで下がり、現在もその数値を維持しているそうです。

「以前、糖尿病の患者さんに指導してきたのと同じ食事法を実践してみようと、カロリー制限食を始めたところ、体重は72キロから68キロまで落ちましたが、そこからはいくらがんばっても減らず、あるときから空腹をがまんできなくなり、結局リバンドして元の体重に戻ってしまいました」(山田先生)

ロカボを実践するとBMI(体重(kg)÷{身長(m)✕身長(m)})18以下の痩せ型の方は、体重が増える可能性があるそうです。しかし、気にしなくていいと山田先生は教えてくださいました。

「それは筋肉がついたと考えられるので、すっきり締まった理想的な体型に近づいていると言えます。ロカボでは、主食とスイーツを工夫するということを意識すれば、あとは満腹になることを恐れず、カロリーも気にせずどんどん食べてください。そうすることで、いつまでも若々しく、理想の体型を維持することができますよ」(山田先生)

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山田 悟(やまだ さとる)先生

医学博士。内分泌・代謝内科部長、糖尿病センター長、予防医学センター長、予防医学科部長、人間ドック科部長、透析センター長、医療社会事業部部長、医療福祉相談室長、医療連携室長。1994年、慶應義塾大学医学部卒業。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では、食べる喜びが損なわれている事実に直面。患者の生活の質を高められる糖質制限食に出会い、積極的に糖尿病治療へ取り入れている。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医・研修指導医、日本糖尿病協会療養指導医、日本医師会認定産業医。『緩やかな糖質制限 ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎単行本)、『糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて』 (幻冬舎新書)、『忙しい人こそ知っておきたい 糖尿病がわかる本』(法研)など著書多数。

取材・文/大場真代