パチンコ店の様子(写真:ロイター/アフロ)

写真拡大

 2017年のパチンコホールの倒産が前年比2.4倍の29件となり、3年ぶりに前年を上回った。

 出玉の上限を約3分の2に抑える新規則が18年2月から適用されたこともあり、事前に「出玉規制による客離れや売り上げ減少の波を乗り切れない」と判断したホールが多くても不思議ではない。この新規則は、発表された時点で多くのユーザーが一斉に「パチンコは勝てない時代になる」と悲観するほど、業界に大きなインパクトを与えた。

 実際に新規則が適用された今、ホールはどんな状況なのだろうか。そして、ホール側は現状および今後をどう考えているのか。大手パチンコチェーンの東京都内の店舗で店長を務めるAさんに話を聞いた。

●意外に平穏?パチンコホールの現場

「来客数や(パチンコ・パチスロ台の)稼働率は、確かに落ちているよ。でも、そもそもここ数年はずっと右肩下がりだし、想定の範囲内。2月になったからといって、劇的に何かが変わったということはないよ」(Aさん)

 新規則は3年間の経過措置が設けられており、2月1日になったら急に旧規則の台が撤去されるわけではない。そのため、店内のラインナップは1月までと変わっていないのである。

「『2月になったら、すべての台が大当たり出玉の少ない新規則の台に入れ替わる』と勘違いした人たちが、ネット上で騒いでいただけ。あとは、専門知識のない人が『規則が変わるからパチンコ業界はヤバい』って騒いでいたんじゃないかな(笑)」(同)

 2月から、台は新規則に沿ったスペックで保安通信協会の型式試験を受ける必要がある。しかし、1月末までは旧規則の台で型式試験を受けることができ、適合を受けた旧規則の台は今後も市場に出ることになる。

 つまり、2月以降に新規則で型式試験を受けて適合を受けた台が登場するのは、まだまだ先のこと。「おそらく、秋以降になるのではないか」とAさんは言う。

「旧規則の台を完全に撤去しなければいけないのが21年の1月末なので、『それまでの3年間で段階的に台の入れ替えをしなさいよ』ということ。それまでは認定(公安委員会の許可)の3年以内であれば、基本的に設置しておける。そう考えると、劇的に変わったって気はしないでしょ?」(同)

 認定期間の3年が終了しても、再度認定を得ればさらに3年の設置が可能になるため、ホールは購入した台を最大6年間使用することができる。ただし、21年2月までに全ホールの全台を新規則の台に入れ替える必要があるため、再認定の許可が下りることは考えにくい。

 つまり、16年1月に認定を得た台は19年1月に撤去となり、同様に17年1月に認定を得た台は20年1月にはホールから消えることになるはずだ。

「高稼動率で長らく全国のホールの売り上げに貢献した『真・北斗無双』が16年3月導入だったから、設置できるのはあと1年くらい。そういった旧規則の台が認定切れになるにつれて、ホールの経営はいっそう厳しくなるんじゃないかな」(同)

●東京五輪の前後で“トドメ”を刺される可能性も

 パチンコ・パチスロ業界が今すぐ破綻するということはないが、右肩下がりの傾向が変わることはなく、「19年から20年に大きなヤマが来る」とAさんは考えている。

「旧規則の台の認定切れも大きいけど、もっと怖いのは20年の東京オリンピックだね。16年の伊勢志摩サミットでも話題になったけど、大きな国際イベントの際は警備・警護などで警察官が手一杯になるから、パチンコの新台の検査・立ち合いには手が回らず、新台入れ替えは自粛することになる。

 オリンピック期間の前後を含めて半年くらい新台が入らないとなれば、お客さんは『新台がないなら、打つのやーめた』となってもおかしくない。しかも、その頃は出玉的魅力の少ない新規則の台が多くなっているはずだから、新台で目新しさをアピールしないと、お客さんなんて呼べやしない」(同)

 東京オリンピックでは、多くの外国人観光客が来日することが予想されている。その外国人観光客の目に入るとマイナスになるのが、「風俗店」「パチンコ店」「コンビニの成人向け雑誌」といわれている。「オリンピック」を錦の御旗に、業界の監督省庁である警察庁が「パチンコ店を完全に掌握しよう」と考えたとしても、なんら不思議ではない。

 今すぐ業界が危機に瀕することはなくても、衰退が続くなかで迎える東京オリンピックの前後で“トドメ”を刺される可能性はおおいにある。

「19年に買う新台は最大2年、20年に買う新台は最大1年しか使えないわけだから、ホール側はどの台を買うか慎重にならざるを得ない。1台30万円前後かかるわけだから。むしろ、『弱小メーカーの台は一切買わない』という選択肢も出てくるかもしれない。そうすると、今度は売り上げの激減によってメーカーが倒産することもあり得るよね」(同)

 聞けば聞くほど、業界の未来は暗い。それでも、Aさんは業界を離れる気はないという。

「パチンコ・パチスロ業界は今まで何度も大きな壁に突き当たってきたけど、こうして大きな市場規模を維持しているわけだから、今回だって乗り越えられるはず。まぁ、今回に限ってはメーカーやホールの力だけでなんとかなる問題ではなく、行政やユーザーを含む、みんなの知恵や行動が求められているといっていいんじゃないかな」(同)

 希望は捨てていないが、突破口はいまだ見つからず――。東京オリンピックまで約2年半、旧規則の台の全撤去まで約3年。残された時間が決して多くないのを感じ、戦々恐々とする業界人が増えていることは間違いない。
(文=山下辰雄/パチンコライター)