清水建二『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)

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周りから好かれ、信頼される人はどこが違うのでしょうか。コミュニケーション術を研究し、企業や官公庁向けにコンサルティングを行う清水建二氏は、「ウソをついていると思われないために、避けたほうがいい話し方がある」といいます。誤解を避けるために注意すべきところとは――。

※本稿は、清水建二『ビジネスに効く 表情の作り方』(イースト・プレス)の第3章「『ノンバーバル・スキル』をビジネスの場へ!」の一部を再編集したものです。

■自己アピールの場面で「しないほうがよいこと」

就職や転職での面接のときなど、なんらかの自己アピールが必要な場面では、自分の思いや感情を適切に伝える方法が必要です。ここでは、そうした際に「したほうがよいこと」ではなく、「しないほうがよいこと」を紹介します。なぜなら「しないほうがよいこと」をしてしまうと、相手にウソをついているという印象を与えてしまうためです。

特に面接官は応募者のウソを見抜くことが求められます。しかし多くの面接官はウソのサインについて科学的な知識もなく、専門的なトレーニングも受けていないため、応募者の単なる緊張を意味する動きをウソのサインと誤解してしまうことがあるのです。

「ウソつき」と誤解されるほど悲しいことはありません。そこで、ウソのサインと誤解されてしまいやすいサインを学び、誤解を防ぐヒントをご紹介します。

■疑われる「緊張・熟考のサイン」

面接官に「ウソをついている」という印象を与えてしまうとき、多くの場合、応募者の表情やしぐさからは緊張や熟考のサインが出ています。緊張と熟考のサインの中には、確かに科学的にウソのサインだと実証されているものも含まれているのですが、多くの場合は単なる緊張や熟考のために表れてくるサインであり、ウソとは関係ありません。それでは、緊張や熟考を示すサインとはどんな種類があるのでしょうか。

ここでクイズに挑戦していただきたいと思います。面接官になった気持ちで答えてください。

【問題】面接でのウソのサイン
面接に訪れた応募者が、さまざまな回答をする中で次の(1)〜(4)のサインを見せました。この中で科学的に実証されているウソのサインはどれでしょうか?

(1)まばたきが増える
(2)目をそらす
(3)身ぶり・手ぶりが減る
(4)顔や鼻を触る

答えを発表する前に、ウソを見抜こうとするときの私たちの性と能力について紹介したいと思います。深刻なウソと隣り合わせで生きていない普通の生活を送る私たちは、「正直バイアス」というものを持っています。「人は正直なものだ」という性善説的な考え方の傾向のことです。これにより、私たちは普段、人の発言を聞いているとき、それを正直なものだと仮定して聞いています。

一方で、深刻なウソと隣り合わせ、あるいはウソを見抜かなくてはいけないプレッシャー下にある警察官や面接官は、「ウソバイアス」というものを持っています。これは正直バイアスの逆で、「人はウソつきだ」という性悪説的な考え方の傾向のことです。

「正直バイアス」もしくは「ウソバイアス」を持ちながら、私たちは日々、他者の発言の真偽を推定しているのです。それでは実際の正答率、つまり私たちのウソを見抜く能力はどれくらい高いのか。諸国の大学の研究室などで行われたさまざまな研究が、ほぼ同じ見解を示しています。それによれば、私たちのウソ検知の正解率は、54%です。この数字は高いのでしょうか。それとも低いのでしょうか。

■疑り深い面接官に誤解されないために

ウソをついているか本当のことを言っているかは、単純に考えれば50%の確率で生じます。ですから、目の前の相手がウソをついているか否かをヤマ勘で答えたとしても、半分は当たるということになります。つまり、54%という数字は「ヤマ勘よりは少し良い」という程度なのです。この数字は、警察官の場合は60%程度と多少高くなるという研究も存在しますが、ウソに多く接している仕事をしている人でもあまり私たちとウソを見抜く能力には違いがないことがわかっています。

ここに問題があります。もし目の前にいる面接官がウソバイアスを持っており、ウソに関する知識がなく、見抜くトレーニングも受けていない場合、応募者が本当のことを話していても緊張や熟考のサインに過剰に反応し、ウソだと誤解してしまう可能性が高まってしまうということなのです。だからこそ、こうした誤解を与えないための準備が必要なのです。

それでは先の問題の答えと解説をしながら、準備をしていきましょう。正しい知識と適度な身体コントロールが要となります。

(1)まばたきが増える

これは緊張のサインです。私たちは緊張するとまばたきが増えます。ウソをついていても緊張しますが、ついていなくても緊張すればまばたきは増えますので、まばたきの増加というサインでウソを見抜くことはできないのです。しかし「緊張している=ウソをついている」という図式が浸透しているため、こうした誤解が流布してしまっています。

面接という場面では確かに緊張しますが、模擬面接を含め何度も面接を受けるようにし、面接という場に慣れ、極度に緊張しないようにする、あるいは緊張して自分のまばたきが増えていることを感じたら、「すみません。緊張してしまいまして。少し落ち着く時間をください」など言葉を添え、緊張=ウソだという面接官の図式を完成させない努力が大切です。

また、過度にまばたきをしない身体コントロールを練習すれば誤解を回避できます。自分が普段1分間にどのくらいまばたきをするかカウントし、そのベースからあまり外れない程度にまばたきの量をコントロールできるようにするのも一つの手です。

(2)目をそらす

これは熟考のサインです。集中して物事を考えるとき、目の前にある視覚情報が邪魔になるため、目を上もしくは下にそらします。上には天井があり、下には床があります。上と下は視覚情報が少ないため、集中しやすくなるのです。確かにウソをつくときも頭を使いますが、そもそも面接で想定外の質問をされたら熟考せずにいられません。したがって、目をそらすという動きは必ずしもウソを意味するわけではないのです。

しかし、この目をそらすという動きもウソのサインという誤解が広がっています。熟考する必要があるときは、目をそらすと同時に「少し考えさせてください」「難しい質問なので回答を整理する時間をください」というような言葉を添え、誤解を避けるようにしましょう。

ところで、目をそらすことがウソをついているという誤解を与えるならば、目をそらさないで相手を見つめようと考える方がいるかもしれません。しかし、これはオススメしません。なぜなら私たちは人にじーっと見つめられると落ち着かなくなるからです。相手を見過ぎても、見なさ過ぎても不信感を与えてしまうのです。

(3)身ぶり・手ぶりが減る

これこそウソのサインです。普段から身ぶり・手ぶりを用いて話をしない人にとっては、それがベースの状態ですが、ウソをついた人とついていない人とを比べると傾向的には、ウソつきは身ぶり・手ぶりが減ります。これはビジュアル化する情報を持っていないためです。本当に見ていないものを「見た」と言い、想像だけでビジュアル化するのは難しいですよね。

(4)顔や鼻を触る

これは緊張あるいは熟考のサインです。もっと広い意味で言えば、感情がブレている、不安定であることを示すサインです。これもよく誤解されるサインです。顔や鼻を触ると安心できるため、緊張したり、感情が不安定になったりすると無意識に触ってしまうのです。自分のこうした動きに意識的になり、面接などで顔や鼻を触っていることに気づいたなら、緊張していることを言葉で伝えたり、過度に顔や鼻を触ったりしないように身体をコントロールできるようにしましょう。

以上、面接官に誤解を与えてしまうサインおよびその対処法を紹介してきました。これらの対処法を知識として知ることと実際にできるようになることには、雲泥の差があります。自分の動きを撮影したり、模擬面接などで他者に指摘してもらったりするのがいいでしょう。自分の変な動きのクセがあるならば、それをしないように意識したり、たとえそうした動きが出てしまっても誤解を避ける言葉を添えられたりするように、日々練習することが大切です。

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清水建二(しみず・けんじ)
空気を読むを科学する研究所 代表取締役
1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。現在、官公庁や企業向けに研修・コンサルティングを行っている。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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(空気を読むを科学する研究所 代表取締役 清水 建二 写真=iStock.com)