3月1日は就職の採用広報活動解禁日。合同企業説明会も全国各地で開催される (撮影:尾形文繁)

いよいよ明日から2019年卒業予定の大学生の就職活動が本格的にスタートする。昨年に続き、売り手市場と言われているが、初めての就職活動、わからないことや不安を感じている就活生も多いだろう。今回、多くの学生、企業、大学のキャリアセンターに接してきた立場から、これから経験することや、陥りやすい勘違い、そして惑わされてはいけない、いわゆる“都市伝説”についても解説していきたいと思う。


まずはこれからのスケジュールをもう1度確認していきたい。明日3月1日はプレエントリーを受け付け、採用予定や募集人員などについて公表される「採用広報活動解禁日」で、6月1日が実際に採用面接などが実施される「採用選考活動解禁日」となる。これは3年連続で同じスケジュールだ。

企業の新卒採用の見通しは、リクルートワークス研究所「ワークス採用見通し調査(2019年卒)」によると、昨年より「増やす」企業が、「減らす」企業を10.7ポイント上回っており、ほとんどの業種で新卒採用者数は増加する見込みだ。われわれも多くの企業と接するなかで、高い採用意欲を感じている。

3社のうち2社が3月中に会社説明会を開始

採用意欲や求人倍率が高いため、企業側はいち早く学生との接触を図ろうとしている。広報解禁と同時に説明会の開催、エントリーシート(ES)の提出、適性検査の受検などのピークがやってくると思われる。

会社説明会を例にすると、3年前の2016年卒では、3月から開催を始める企業は47.7%という数字だった。しかし、2年前の2017年卒では63.9%、さらに昨年の2018年卒では66.8%と、3月に開始する企業が増えている(データはいずれも就職みらい研究所「就職白書」より)。今年も同様の傾向になると思われる。

企業情報の提供や個別アプローチも早々に始まる。中には事実上、開始している企業もみられる。インターンシップを通じて自社に興味を持った学生に、インターンのフォローアップを兼ねたイベントを開いたり、OBやOGを通じた企業研究のサポートを行っていたりする。目標とする人数の新卒採用を確保するため、解禁と同時に会社説明会に学生を呼び込む動きは、加速度的に増えていくと思われる。

ではそうした中でどんなことが起こるか。

何が起きるか1 インターンシップ参加者へのアプローチ

まず最も特徴的なのは、インターンシップを通じ自社への理解を深めた、いわば「話が早い」学生へのアプローチ。こうした活動を行う企業は現状でも少なくない。

2018年卒の場合、インターンシップを実施した企業の82.0%が参加者に企業説明会を案内。ESの提出や適性検査の受検を促すなど、何らかの採用につなげる活動(予定含む)をしている企業は、72.5%に達している(リクルートキャリア『採用活動中間調査2018』より)。

採用意欲は高く、3月以降の選考ももちろん重視

よくある誤解1「インターンシップ参加者で採用枠がほぼ埋まる」

そんな中、インターンシップ参加学生へのアプローチがあることから、「インターンに参加した学生は優先的に採用される」という話がまことしやかにささやかれている。

しかし、これはインターンシップに参加した学生は、結果として参加企業への応募率が高くなることが原因。実際に61.8%の学生がインターンシップ参加企業にプレエントリーしており、その結果、マッチングも多くなっているというのが実態だ。

インターンシップ実施企業は年々増え、2018年度は73.7%が実施している。しかし、通常業務の中で学生を受け入れるには、人員などの体制やスペース的にも限りがあり、インターンシップの参加者を絞り込む必要がある。また、学生がインターンシップに参加できる期間や日程に限りがあることは、企業も十分承知している。

空前の売り手市場で、自社の次代を担う若手への採用意欲は極めて高く、企業は1人でも多くのよい人材に巡り合いたいと考えている。そんな企業が「就活本番」の3月からのタイミングを軽視することは考えにくい。つまり、インターンシップの参加者のみから採用数の全てを満たすような戦略をとる企業など、ほとんどないといってもいいだろう。

もちろんインターンシップは、社会を知り、企業活動を知り、自分の適性を知るためにも積極的に参加したほうがよいのは確か。一方で、インターンシップの選考にもれても、インターンシップを受けていなくても、志望先から外す必要はまったくない。逆にインターンシップに参加したからといって、安心してしまうのも禁物だ。その後の自己研鑽を怠れば、ESを提出しただけで終わってしまうこともある。

何が起きるか2 ESの提出ラッシュ

昨年(2018年卒)の実績でみると、ESの提出締め切りは3月末に集中していたが、今年(2019年卒)のピークは、3月末あるいはそれよりも早まると見られている。減少傾向にあるとはいえ、ESの平均提出社数は15.82社(就職みらい研究所『就職白書2018』より)と、なお高水準。3月中には、プレエントリー登録や説明会の参加もあるので、同時進行でESを書いていく必要がある。

「自己PR」や「学生時代に力を入れていたこと」は、履歴書やESである程度共通している項目だが、「志望動機」はそれぞれの企業に向けてのメッセージになる。それは全て共通というわけにはいかない。企業研究や業界研究ができていなければ、書くこともないという事態すら考えられる。

志望動機を書くためにも企業研究は大切

よくある誤解2 「会社説明会で聞いたことを書いたESは人事に好まれる」

毎年多くの学生と接しているが、企業の採用情報サイトにある「希望する人材」や「社員のキャリア紹介」などからコピペした志望動機を提出する人が残念ながら、散見される。

またESの書き方講座では、「説明会で『やりがいについて教えてください』と質問して志望動機を書く参考にする」ことが、しばしば推奨されている。技術的には一理あるかも知れないが、これも誤解を生みやすい都市伝説の一種だ。決して、聞いたままを書けばよいという意味ではないことを、知っておいたほうがいいだろう。実際に人事担当者から「サイトのコピペ、説明会コメントの完コピ」に対するため息が多く出ている。

サイトの情報や説明会の話を手掛かりにするのは、とても有意義で重要なこと。ただ、そこから自分が感じたこと、考えたことを、見落とさないでほしい。感じたこと、考えたことこそが、書くべき志望動機のヒントになる。

さらに言えば、今からでも時間を作って業界研究、仕事研究を進めるのが一番だといえる。志望動機は面接では必ず出てくる質問事項で、誰でも準備しておくことができる。たとえ、その企業の面接に進まず別の業界に就職したとしても、他業界や他社について一定の理解と知識をもっていれば、大きな強みになるはずだ。

何が起きるか3 怒涛の面接ラッシュ

就活プロセスの最後の山場が面接。ここでもピークの早期化が予測されている。本来、面接選考解禁は6月1日だが、その時点ですでに内々定が出ているケースも少なくない。

連日のように面接に臨み、早い企業だと、その日のうちに結果を連絡することもある。不採用通知を受け取ることもあるだろう。

それが1次であっても、最終面接であっても、人と直接会って不採用と判断されるのは、ショックなもの。自分を否定されたように思ってしまいがちだが、ぜひ必要以上に悲観しないでほしい。たまたまアプローチの仕方が合わなかっただけかもしれないし、その企業が求める人物像と合致していなかっただけかもしれない。

ただ、就職活動をした多くの先輩たちも、同じ経験をしている。『就職白書2018』(就職みらい研究所)によると、面接など対面での選考を受けた社数は平均9.26社。そして内定は平均2.54社。つまり、面接を受けた企業のうち平均で約7社は内定に至っていないことになる。

よくある誤解3 ネット情報の「あの会社、採用終わりだってさ」の間違い

今は、SNS(ソーシャル・ネットワーク・システム)社会ともいわれ、同じ企業に応募している学生の情報も、大量に流通する。志望業界や業種、あるいは大手なら企業単位で、志望者のコミュニティができているケースもある。情報交換をし、励まし合ったり刺激し合ったりする分にはよいが、ネガティブ情報だけは気を付けておきたい。

企業が一斉に内定を出すのは難しい

たとえば、同じA社を志望していた1人が「内々定もらった!」とつぶやけば、「A社採用活動終わりだってさ」と、さも人事から聞いたかのように情報が流れることがある。だが、数百人を採用する企業では、最初の1人に内々定を出してから最後の1人に内々定を出すまでに、数日間から数週間の時差が生まれるのは当たり前だ。

さらに、企業から就職活動生へのアプローチは、ここ数年多様化している。つまりいくつもの採用ルートを持っているということ。新卒紹介サービスを通じた求人や、企業側が就活生に面接や説明会のオファーをする逆求人の導入なども行っている。インターンシップ参加者へのアプローチや、OB・OGなどのリクルーターからの推薦も、その中のひとつのルートにすぎない。そんな多様な採用ルートを持つ企業が、全ての人に同時に内々定の連絡をし、採用活動を終了するということは考えにくい。

就活期間が短縮し、限られた時間の中でさまざまな判断が求められるからこそ、発信者の責任の所在が明らかでない情報や、信頼していいのかわからない情報には、惑わされないほうがよいだろう。

多くの企業が、自社のサイトで採用活動スケジュールをオープンにしている。さまざまな都市伝説や根拠のない情報に振り回されるよりも、ぜひ自分で確認し、自分で考え行動することを、大事にしてもらいたい。

就職先が決まるのが早いか遅いか、親が知っている会社か知らない会社かよりも、ずっと大事なことは、自分自身が納得する会社に出会えるかどうかだ。今からやれることに集中してもらいたい。就活を通して貴重な出会いがあるはず。みなさんの挑戦を心から応援したい。