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相手の態度は、ちょっとしたテクニックひとつで変わる。シンプルなのに効果満点な「心変わりの方程式」を6つの場面別に識者へアドバイスを求めた。第3回は「忙しいときに無理難題」について。ビジネス心理研究家の神岡真司氏に聞いた――。

■「今すぐ、お手伝いしたいところなのですが」

「今日中にこの資料を作成してくれないか」

手一杯なのに上司から突然のムチャ振り。キツイですよね。

真っ向から「ムリ」と部下が拒否するのは得策ではありません。上司は「部下に抵抗された」という現実が許せなくなり、ムキになり無理難題を押し通そうとするものです。

では、相手の気分を害さずに断るにはどうすればいいか。ポイントは3つあります。

まず、「よっぽどお困りなんですね」と、相手の状況を汲むこと。次に、「今すぐ、お手伝いしたいところですが新規事業の見積もりを今日中に出さなくてはなりません」と、自分の状況を冷静な口調でストレートに伝える。そのうえで、「だから、お受けすることができないんです」と自己主張するのです。

特に大事なのが「今すぐ、お手伝いしたいところなのですが」という“クッション言葉”。「お忙しいのは承知していますが」「お気持ちはよくわかりますが」とワンクッションをはさむことで、「断る」という自己主張の印象を和らげます。

■自然と人望が厚くなる、4つの「クッション言葉」

この断り方は“アサーティブな対応”です。アサーティブとは、「対等な関係における自己主張」という意味で、相手の感情や立場を尊重すると同時に、自分の感情や立場も尊重してほしいと冷静に主張することです。

不満を露わにすれば相手の感情を逆撫でしてしまう。かといって恐縮しすぎてしまっても、「こいつは何を言っても自己主張してこない」と相手に舐められてしまう。だからこそ、「断ることで嫌われたくない」という思考習慣を取り除き、アサーティブな態度を取る必要があります。そうすれば、ムチャ振りが減るだけでなく、たとえムチャ振りされて断ったとしても、「アイツはきちんとしているヤツだ」という好印象を相手に与えることができます。

気が弱くて断れないという人ほど、アサーティブな態度を取ることも仕事だととらえ徹底してください。意図的に対応を変えて繰り返せば、人格や気質は後天的に変えることができます。

それでも難しければ代替案を示すという手段もあります。

「今は手一杯なのですが2時間後であればできそうです」などと、代替案を出して、イエスかノーかの判断を相手に戻すのです。その時点で断る行為を取るのは自分から相手になるので、嫌われるリスクがなくなります。

とどめは、「お役に立ちたいのですが」と、さりげなく相手を持ち上げる言葉。同時に「今回は本当に申し訳ありません」と、丁寧に頭を下げます。誠意ある姿が相手の脳裏にはいつまでも刻まれることでしょう。

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▼「クッション言葉」をはさみ、状況説明する
・お手伝いしたいのですが←「尊重」しつつ
・ほかの仕事で手一杯ですから←「理由」を述べて
・今はお受けすることができません←きっぱり「断る」
・明日であればできそうです←「代替案」を示す

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神岡真司
ビジネス心理研究家
日本心理パワー研究所主宰。著書に『だから、「断ること」を覚えなさい!』『ヤバすぎる心理術』など。
 

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(ビジネス心理研究家 神岡 真司 構成=堀 朋子 写真=iStock.com)