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日本企業は利益に貢献しない製品をつくりすぎている。だが製品の種類を絞り込めば、営業現場は反対する。競合企業に「棚を明け渡す」ことになるからだ。どうすればいいのか。同志社大学の加登豊教授は、「どうせ棚に入るのは他社の売れない商品だから問題はない」という。「多品種少量生産」の呪縛を解く6つの対応策を紹介しよう――。(後編、全2回)

■(1)断捨離ルールを適用する(儲からない製品から廃番にする)

製品品種を絞り込む最も有効な方法は、整理整頓にヒントがある。「断捨離」のルールを適用するのである。具体的には、「製品品種を1つ増やす時には、既存品種5つを廃番とする」ことが推奨される。

会議に関しては、「1つ増やすなら、2つ廃止すべきだ」とすでに指摘した。しかし、会議の増殖以上に、品種の増加は深刻であり、「1増2減」では間に合わない。際限のない多品種化に歯止めをかけるには、「1増5減」でも不十分かもしれない。収益への貢献が期待される製品(収益性は、限界利益や売上高総利益ではなく、販売費・一般管理費も計算に入れた営業利益で判断する)を追加し、企業の収益を圧迫している製品を5つ廃番にすれば、企業収益は向上し、製品品種の削減もできるのである。

「いつか売れる」「私たちには供給責任がある」などが、廃番を阻止する典型的な言い訳だろう。これらの主張に対しては、「自社の利益を削る方策を支持することは、企業で働く者にとっていかがなものだろう」と反論すればいいだろう。企業の究極目標は、長期継続的な利益の獲得にあるのだから。

■(2)製品コードが際限なく増加しないシステム設計とする

企業の基幹情報システムは、将来に備えて柔軟な対処できるように設計されている。製品が増えても、それに対応できるように製品コードの増加が容易に行われるようになっているはずである。このことが、多品種少量生産へのチェックを甘くしている。

製品種類数の推移は、必ず毎月経営陣がチェックを行うとともに、現場レベルで新しい製品コード付けを制限することが必要である。そのためには、新しい製品コードの生成が承認なしに行われないように、情報システムの機能制限を行うと良い。やや強引だが、システムで処理できる製品種類数を強制的に削減するとよい。

■(3)正しい原価計算を行う、計算に経営判断を盛り込まない

製造間接費の製品別への帰属を行う配賦(割り振り)計算を実施する場合、ほとんどすべての企業が操業度関連の配賦基準を利用しているであろう。このような計算が、少量生産品の製造間接費負担を軽くし、見かけ上の高い利益貢献をもたらしていることは前編(売れないポテチの種類が増えつづける理由)ですでに述べた。

操業度関連の基準を用いて製造間接費の製品別帰属を行うことは即座に中止し、製造間接費の管理手法として有効なABC(Activity-based costing)活動基準原価計算の採用に踏み切ることが強く推奨される(ABCについては、原価計算の教科書を参照されたい)。正しい原価計算を実施すればわかることだが、製品戦略を抜本的に見直さなければならないことに気がつくだろう。合わせて、製品種類別収益性分析を徹底的に行う必要がある。

さらに、経営判断と称して計算結果を操作してはならない。期待の新製品であっても、発売当初から爆発的に売れることは少ない。したがって、計算の結果は、当初の期待や予想を大幅に下回ることになるだろう。このような場合に、しばしば採用されるのが、少しでも良い結果が出るように、計算に経営判断を盛り込む方法である。具体的には、製品原価の算定に当たって、製造間接費負担を一定期間免除したり、計算結果に一定率を乗じて、製品原価を低めに設定したりする。

経営判断の基礎となる数値の信頼性を損なわせるような処理を経営判断として行うと、製品別・事業別の収益性情報にひずみが生じて意思決定を誤ることになる。さらに、誰も計算結果を信頼しなくなり、経営の根幹が揺らぐ。

■(4)長期滞留在庫をすべて廃棄する

まずは徹底的な棚卸しを行うことから始めたほうが良い。ほとんどの会社では、倉庫に格納され、数カ月、場合によっては数年以上滞留している長期滞留在庫の多さに驚くことになるだろう。そして、長期滞留在庫の大部分は、特殊仕様の少量生産品である。「いつか売れる」は「いつまでも売れない」とほぼ同義である。ルールを決めて、長期滞留在庫を一斉廃棄すると良い。「いつか売れる」ものを、売れる数カ月、数年前に製造する必要はない。売れることがわかった時点で、製造すれば良い。

■(5)製造現場の製造状況を常にモニターする

工場で働いている作業者のすべてが、忙しく働いていることを是とし、製造数量が減少すると意気消沈する。そして、製造数量が減ってしまうと、本社の指示や当初の生産計画にないものを作り始める。将来売れるであろう、あるいは、数年に一度限られた数が必要となる製品を作り始めるのである。

ここで確認しておかなければならないことは、製造現場で働く人々の人件費は、固定費であり、埋没原価(sunk costs)であるという事実である。製造数量が多くても少なくても、人件費には変化かがない。変わるのは、製品単位あたりの労務費にすぎない。たくさん働いたからと言って、企業への貢献はまったくない。それどころか、残業代がかさみ、段取り替えが増加し、すぐには売れない製品の在庫関連費用が発生する。つまり、良かれと思って生産計画にない製品を製造することは、企業の大きなコスト負担を増加させるのである。

「生産計画にない製品の製造は決して行わない」ということを徹底することが、極めて重要である。しかし、いくら言っても、工場では、必要とされないものを作ってしまう。これを防止するのは、本社が工場の製造状況を常にモニターし、無駄なものを一切製造しないようにする厳密な管理を行う必要がある。「製造指図書のない製品は、製造されることはない」と本社では信じているが、それはルールであって、製造現場では、善意に基づいてルールは破られるのである。

■(6)御用聞き営業を廃止する

顧客の声を鵜呑みにすることも多品種化の原因の1つである。営業は、顧客接点であるからこそ、顧客の声に出した要望ではなく、真に何を欲しているかを探るのが仕事である。御用聞き営業からひと時も早く決別する必要がある。

取り扱い品種が少なくなれば、営業は難しくなる。換言すれば、品種を絞り込む提案に、営業は反対するだろう。「競合企業に棚を明け渡す」ことになるからである。しかし、利益貢献がほとんどない少量生産品を廃番にすれば、間違いなく収益性は向上する。棚を競合企業に奪われても、そこに並ぶのは、他社の少量生産品であり、それらは、競合企業の収益性を悪化させるものばかりである。品種を減らす効果は極めて大きい。

多品種化にはメリットはない。このことを肝に銘じて経営に取り組むだけで企業の収益性は驚くほど向上する。開発者は、本気で業務に取り組むようになる。営業は、少数の自慢の製品を顧客に販売することに努力するようになる。品種の絞り込みは、従業員のレベルアップにも貢献するのである。

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加登 豊(かと・ゆたか)
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
神戸大学名誉教授、博士(経営学)。1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。

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(同志社大学大学院ビジネス研究科教授 加登 豊 写真=iStock.com)