今シーズンに向けた思いを語る愛媛マンダリンパイレーツの正田樹投手(撮影:松本隆志)

「松坂世代」が日本中を沸かせた翌年、1999年の甲子園優勝投手、プロ野球で通算25勝を挙げた2002年の新人王は今も現役のプロ野球選手としてマウンドに上がっている。
2014年から愛媛マンダリンパイレーツに所属する正田樹――独立リーグの若い投手陣を支えるサウスポーは過去4年間で3度も最優秀防御率のタイトルを手にしている。
19年目のシーズンに臨むベテランが目指すものは何か? マンダリンパイレーツの地元・愛媛で創刊したスポーツマガジン『E-dge』で今シーズンにかける思いを語った。

タイトルを3度獲ったベテラン

1999年夏の甲子園で桐生一(群馬)を日本一に導いたサウスポーは36歳になった今も、現役を続けている。

1999年のドラフト会議で1位指名を受けて日本ハムファイターズに入団(当時)。2002年には9勝を挙げ新人王に輝いた、その後、阪神タイガース、台湾プロ野球、独立リーグ(新潟アルビレックス)に所属したのち、東京ヤクルトスワローズで2年間プレイした。NPBでの通算成績は25勝38敗4ホールド、防御率4・70。

2014年からはマンダリンパイレーツのユニフォームを着て、先発投手として、チームを支えてきた。2014年には最優秀防御率のタイトルとリーグの後期MVPを獲得。翌年も最優秀防御率を取り、リーグ年間MVPも手にした。中継ぎに回った2017年は、防御率1・38で3度目の最優秀防御率のタイトルを得た。

プロ19年目のシーズンに臨む正田はチームの中心選手であり、若い投手陣の精神的な支えでもある。

「昨年はチームとしてリーグ3連覇を目指したのですが、それができず、悔しいシーズンになりました。河原純一(元読売ジャイアンツ)監督の1年目で、育成重視という方針を掲げてスタートしましたが、学生だった選手たち、野球から一度離れていた人たちがプロとしてスタートするにあたって、技術も体力も、メンタルの部分もまだまだ十分ではなかったと思います。まず体力をしっかりつけようということで、投手陣はよく走りました」と正田は語る。

正田がプレイするマンダリンパイレーツは、四国アイランドリーグプラスという独立リーグのチームだ。プロ野球というカテゴリーにはあるものの、日本プロ野球(NPB)と比べれば、待遇では大きく差がある。プロ野球選手になる夢を追う若い選手が腕を磨く場所だ。

正田はそこで若手の「生きた教科書」として、黙々とマウンドに上がり続けている。

「走って体力をつけながら、技術の向上にも取り組み、結果を出すのが僕たちの仕事ですから。当たり前のことを当たり前にできる者が上にいける、それがプロの世界だと僕は思っています」と正田は続けた。

野球の楽しさと勝つことの喜び

2017年、先発投手から中継ぎに役割が変わっても、正田は正田らしいピッチングを披露した。36試合に登板し、1勝1敗6セーブ、防御率は1・38。

65試合のうち半分以上の試合に登板した正田は昨シーズンについてこう振り返る。

「それまでと違って、リリーフでの登板が僕の役割でした。年間を通して、ゲームから外れることなく、最後まで戦うことができました。愛媛に来てからはずっと先発で投げさせてもらっていましたが、去年はまた違ったピッチングができたように思います」

成長途中の選手の背中を押すのも正田の役割のひとつだ。

「練習も試合もずっと一緒にいますし、たまにはプライベートで食事することもあります。若い選手は、聞きたいことがあってもなかなか質問できないと思うので、なるべく話しかけやすいような雰囲気をつくるように心がけています。聞かれたことについては、自分のわかる範囲で、経験を踏まえて答えるようにしています。彼らが悩んでいること、苦しんでいることはよくわかりますから」と正田は言う。

NPB、台湾などでプレイしたプロ19年目のベテランは今シーズン、何を目指すのだろうか。

「僕のプロ野球選手としての目標は昔から変わりません。野球は本当に楽しいし、1年でも長く選手でいたい。毎年、シーズンが終わる頃にはいろいろ考えますけど、ずっとユニフォームを着ていたい、野球をしていたい。何かきっかけがあれば、まだ自分は変われるんじゃないかと思っています。2018年はマンダリンパイレーツの優勝を目指してやるだけ。

日本のプロ野球、独立リーグ、台湾、アメリカで野球をしてきましたが、野球というスポーツには変わらないすばらしさがあります。野球の魅力って、何でしょうか……試合で投げると楽しいし、勝つことには喜びがあります。試合に向けての準備、目標を立ててそこに向かっていく過程は特に面白いですね。目標に到達できた達成感はたまらないものがあります」

自分を超えることが一番の目標

今年で37歳になる正田は、まだまだ自分に期待している。だから、フレッシュな気持ちで新しいシーズンに臨むことができるのだ。


正田樹(しょうだ いつき)/1981年11月、群馬県生まれ。桐生一のエースとして、1999年夏の甲子園で全国優勝を果たした。1999年ドラフト1位で日本ハムファイターズ入団。2002年には新人王に輝いた。阪神タイガース、台湾プロ野球、新潟アルビレックス(独立リーグ)、東京ヤクルトスワローズでプレイしたのち、愛媛マンダリンパイレーツへ(撮影:松本隆志)

「キャッチボールの大切さをはじめ、昔なら気づかなかったことがわかるようになりました。若い時のようにいつも全力で投げていたらケガもします。

ピッチングのコツをつかめば、体に負担をかけることなく、長く投げられるんじゃないかなと思っています。もう少しピッチングのバリエーションを増やしたい。頭をさらに鍛えれば、ピッチャーとしてもっと成長できるんじゃないかな」

正田はさらに高いところを目指している。

「カッコよくバッターを打ち取りたいと気持ちは今でもあります。ユニフォームを着ている以上、いつまでもそれは持っていたい。

2018年の役割がどうなるかわからないので数字的な目標は立てにくいのですが、これまでで一番いい成績を、自分にとってのキャリアハイを目指します。過去の成績を上回れるように。自分を超えることが一番の目標です」

(文中敬称略)