勉強したことを仕事に活かすには?(写真:FangXiaNuo / iStock)

仕事に必要なことをせっせと勉強しているのに、なかなか成果につながらない……そう悩む方は多いのではないでしょうか。成果につなげるには単に知識を習得するのでなく、それを成果に結び付けるための「実行能力」が必要です。座学だけで終わらせず、仕事に活かす力を身につけるための考え方をご紹介します。

成果につなげる「実行能力」

人生100年時代では、一つの会社、一つの仕事で一生を終えることは当たり前でなくなり、二毛作、三毛作が当たり前になると言われています。新しい知識や技術を学ぶ必然性が高まり、多くの方が意欲的に勉強されていることを私も実感しています。しかしながら、「せっかく学んだのに仕事に活かせない」というご相談をいただくことが多いのも事実です。


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私は人材開発のコンサルティングを専門としており、多くの企業で高い成果をあげるにはどのような能力が必要なのかを定義する仕事をしてきました。ハイパフォーマーと呼ばれる人たちが成果を出すために発揮している能力を分析し、ほかの社員が獲得するお手伝いをしてきたわけです。

一言で能力と言いましたが、実は3つのものから構成されています。「知識(ナレッジ)」「技術(スキル)」「思考・行動特性(マインド)」の3つで、これらをすべて活用して成果をあげる能力を「実行能力(ケイパビリティ)」という言い方をします。


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たとえば、新規事業の立ち上げという成果をあげたい場合。知識としては、顧客や市場の知識やITなどの専門知識や財務、法律など、さまざまな知識が必要です。また知識だけではなく、市場を分析したり、仮説を論理的に立てて検証したり、アイデアを形にしたり、それを伝えるためのプレゼンテーションスキルなど、知識を活用する技術(スキル)が必要です。さらには困難な状況の中でもあきらめずに達成しようとする思いや、顧客のことを徹底的に考え抜く行動特性などマインド面が伴わなければ、いくら高度な知識や技術があっても成果に結び付かないでしょう。


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もし、なかなか成果に結び付かない……と悩まれている方は自分の目指す成果をあげる実行能力として何が必要なのか、3つの力をできるだけ細分化してみてください。自分の周囲で成果をあげている人を観察してみてもよいですし、直接その人にどんな知識やスキルが必要なのか、どんなことを心掛けて仕事をしているのかを聞いてみてもよいでしょう。

実行能力を身につけるためのポイントは、この3つをどれだけ細分化するかです。細分化すると一つひとつが習得しやすくなるからです。体操の金メダリスト内村航平選手は、「わずか2秒程度の跳馬の技にチェックポイントが200個あり、それを一つひとつできるようにしていった」と話をされていました。ビジネスは毎回同じことをするわけではありませんが、どんな状況でも成果を出せる再現性をもって、細かいこと一つひとつができる状態になっているかが重要です。

3つの力が使える状態とは?

では、3つの力はどのような状態であれば使える状態になるでしょうか。

●知識:構造化して検索可能な状態にする

まず、知識ですが闇雲にたくさんの知識があればよいというものではありません。仕事で必要なときに引っ張り出せるよう検索可能な状態にしておく必要があります。何かをするときに、「ええと、あれは何だっけな?」という状態ではなく、「重要なことはこの3つ」など引っ張り出せるようにしておくわけです。

そのためには、知識を詰め込むのではなく、構造化しておきます。構造化とは全体と部分をはっきり認識できるようにしておくことです。今の時代、すべての詳細な情報を覚える必要はなく、パソコンのハードディスクに詳細な情報は任せておけばいいのですが、重要なことや本質的なことは自分の言葉でしっかりと構造化しておきましょう。

やり方としては、重要なことを3つにしぼったり、図解などで知識や情報を整理してみるとよいでしょう。図解は全体と部分をしっかりと目に見える形にするものですから、もし図解できないのであれば、それはまだ理解できていない状態だということで、到底仕事で使えるレベルではありません。

構造化しようとすると、自分が理解していると思っていたことが実は単に「知っている」だけのレベルであることに気づくことも多いものです。勉強したのに仕事に活かせない人の多くは「知っている(つもり)」レベルであることが多いので、ぜひ構造化して深い理解レベルを目指してみましょう。

自然に体が動くレベルにしておく

●技術:技化(わざか)していつでも再現可能な状態まで

技術(スキル)も知っているレベルにとどまりがちですが、スキルはいつでも再現可能な状態を目指しましょう。できれば、自然に体が動くレベルにしておくことをおすすめします。私はプレゼンテーション研修の講師などもしていますが、もともとは人前で話すことはかなり苦手でした。駆け出しのコンサルタントのときに教えてもらったのは、自己紹介を完璧にすることでした。どんなに緊張した状況で頭が真っ白になったとしても、自己紹介では言葉がつまることもかむことも声がうわずることもないくらいまで、何度も練習をしたのです。その結果、発声、滑舌、姿勢、表情など多くのことを体得することができました。

一度体得したものは、その後しばらくしても再現可能ですし、自信につながります。体を使うスキルだけではなく、たとえば、資料作成やプログラミングなどの仕事の進め方を意識しなくても頭や手が動くところまで極めるのです。すると次に新しいことにチャレンジする際には、その部分は力を入れる必要がなく楽にできるので、差分やより本質的なことに集中することができます。

私は、これを「技化(わざか)」と呼んでいます。文字どおり自分の技として体得するという意味です。毎回毎回試行錯誤ではなく、この部分は意識しなくてもできるという得意技が増えてくると仕事にも余裕が生まれ、楽しくなります。今度の仕事ではこれを技化しよう、この1年でこれを技化しよう……などテーマと期間を決めて技を身につけ、積み上げていくとよいでしょう。

成果をあげる人には強いマインドがある

●思考・行動特性:明文化していつでも自分の気持ちに着火できるようにする

思考や行動の特性=マインドはなかなか身につけるのが難しそうと考える方も多いと思いかもしれません。しかし、これも意識的な行動の積み重ねで身につけることができます。 

私の経験でお話しすると、独立して執筆をメインに仕事をしていくことになったときに、もっと早くもっとよい本を書くにはどうしたらいいかを研究しました。セミナーに通ったりもしましたが、本を書いている方に会うと毎回同じ質問をしたのです。「どういう気持ちで本を書いていますか?」という質問です。

さまざまな答えをいただきましたが、自分の心に響いた言葉は「自分の子どもに読んでもらいたい、読んだときに助けになるような本を書きたいと思うと、つらくても書ける」というものでした。ほかにも「誰かわからない大勢に向けてかっこいいことを書こうとしてはいけない。ただ一人の人の役に立ちたいと思って書くと結果的にみんなの役に立つ」という言葉もありました。これらは今私が本を書くときの気持ちに着火する言葉になっています。


マインドというと気合のように思われるかもしれませんが、成果をあげる人はやはりしっかりとした指針があります。それらを聞き出し、明文化しておくことでつらくなったときやあきらめそうになったときに気持ちの着火剤の役目を果たしてくれます。周囲の尊敬する人の言葉でもよいですし、歴史上の方の言葉も助けになります。スピードスケートで見事金メダルを獲得した、小平奈緒選手の座右の銘は「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」というインド独立の父マハトマ・ガンジーの言葉だそうです。

コンサルタント時代の戦友とも言える友人は、「魂の言葉集」と銘打って、大勢のコンサルタントたちから、自分を励ます言葉をアンケートで集めていました。その胸を打つ言葉の数々を見ていると、やはり成果をあげる人には強いマインドがあり、それを支えるのは言葉なのだということに気がつきました。自分の気持ちに着火する言葉をぜひ探してみてください。

ご紹介したこれらの方法が皆様の次の一歩を踏み出すものになることを願っています。