モデルベース開発を採用した「CX―5」(マツダ公式ページより)

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 量産型モノづくりの典型である自動車開発のあり方が、大きく変わり始めた。実機を試作して実験を繰り返すのではなく、数理モデルを用いてコンピューター上でシミュレーションし、さまざまな性能を高める「モデルベース開発(MBD)」という手法が主流になりつつある。

 自動運転や“つながる車”などで車載ソフトの大規模化が進めば、MBDへのシフトはさらに進む。その流れは、サプライチェーン全体の変革を引き起こすかもしれない。

 「2019年に出すEV(電気自動車)。そこで車全体に適用しようとしているMBDこそ、マツダの強みだ」―。17年8月、トヨタ自動車との資本業務提携の具体策を発表する会見で、丸本明マツダ副社長は強調した。

 マツダが自ら“強み”と位置付けるMBDは、苦しい中で磨いてきた開発方法だ。04年にMBDによる開発に着手。超円高のもと、12年3月期まで4期連続の当期赤字を計上していた時でも、コンピューターへの投資だけは続けた。

 12年2月に発売したスポーツ多目的車(SUV)「CX―5」から全面的に採用した「スカイアクティブ」技術で、エンジン、変速機、車体骨格、足回りと、主要部品を一気に刷新できたのはMBDで開発を効率化したからこそ。特にエンジン開発では「燃焼のメカニズムをモデル化できたことが一番のポイントになった」(足立智彦統合制御システム開発本部首席研究員)。

 当時、数理モデル化した項目は、エンジン燃焼などパワートレイン機器全体で約700項目にのぼった。現在進めている車1台丸ごとのMBDでは、さらにこれが数万項目に膨らむ。

 ここまで大規模化すれば、社外の力が必要になる。「取引系列を超えて部品のモデルをやりとりできるようになることと、人材育成。マツダのMBD戦略を実行する上で、この二つが不可欠」(同)。部品メーカーにとっても、取引先ごとに異なった仕様のモデルが必要になれば、膨大な工数の無駄を生むことになる。

 経済産業省が主要自動車メーカーや部品メーカーを巻き込んで策定し、17年3月に公表したガイドラインは、こうした課題を解決するためのものだ。仕様を標準化することで、一度作った部品のモデルが、さまざまな自動車メーカーをまたがって“流通する”ようになる。

 「モデルを使うことで、開発のできるだけ早い段階から部品メーカーと(車種ごとの)すりあわせ開発ができるようにしたい」(同)。モデルという“仮想的な部品”をやりとりしながら車の開発が進む世界が、現実のものとなりつつある。
(文=広島・清水信彦)