世界的な投資家ウォーレン・バフェット氏が1年に一度、株主に対して記す書簡が24日に発表された。書簡と言っても、形式的な短い手紙ではない。17ページにびっしりとバフェット氏の思いが詰まっている。

 投資会社バークシャー・ハサウェイの会長であり、個人としては世界第2位(フォーブス長者番付)の資産家であるバフェット氏。

 その言葉だけに株主だけでなく、世界中の投資家や金融関係者が注目する。今年はどんなことを述べたのか。ネット上で閲覧できるので、主要点を4つにまとめた。

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トランプ減税のおかげで大増益

 1点目は書簡の筆頭にも挙げられた米国の減税についてである。

 昨年末、ドナルド・トランプ政権が成立させた減税が、バークシャー・ハサウェイの業績も大幅に上昇させていた。

 昨年はウォールストリートの株式市場が好況だったことで、減税を抜きにしても増収増益だった。同社が2017年に増やした資産評価額は653億ドル(約6兆9870億円)。2016年比で23%も増えている。

 バフェット氏は書簡の中でトランプ減税について述べている。

 「653億ドルのうち、かなりの部分はバークシャー・ハサウェイが生み出した利益ではありません。確かに利益として計上されてはいますが、企業が稼いだのは360億ドルだけです」

 「残りの290億ドルは昨年12月、連邦議会が通過させた減税によるものでした」

 バフェット氏は今年1月、トランプ政権の税制を批判していたが、実際は「トランプ減税」によって巨額の利益を得る結果になった。

キャッシュフローは12兆円超

 今回の税制では、一般勤労者が主な対象者と言われたが、富裕層(大企業)も大きな恩恵を受けたわけである。

 昨年の増収増益で、バークシャー・ハサウェイの総資産は3580億ドル(約38兆3000億円)まで伸びた。さらに驚くのはキャッシュフローが昨年末の段階で、1160億ドル(約12兆4000億円)に達したことだ。

 書簡にはトランプという名前は出てこない。トランプ政権の経済政策に批判的な立場でいるためか、「昨年12月、連邦議会が米税制を改正した」と記されているだけである。 

 2点目は12兆円ものキャッシュフローを抱えていながら、最近は大型のM&Aに動いていないことである。

 バークシャー・ハサウェイが巨大金融企業に成長していった理由の1つは企業買収だった。ニューヨーク・タイムズ紙も「バークシャーが大きく成長した要因の1つは多額の資金を割いて企業買収に動いたからである」と今月24日に書いている。

 だがバフェット氏が買収に動かないのは、理由があるからだ。買収を控える戦略を立てているわけではない。近年のM&Aはコストがかかりすぎると判断しているのだ。

 「2017年に買収を検討したすべての案件で、適切な買収額には至りませんでした」と書くように、好条件が整えば積極的に買いに走るはずである。

 バフェット氏が最後に巨額の買収をしたのは2015年のことである。飛行機部品メーカーのプレシジョン・キャストパーツ社を、債務を含めて370億ドル(約4兆円)で買収している。

バフェット氏、後継者を指名

 億万長者であり、会社も12兆円超のキャッシュフローがあるので、どんな企業も買えそうだが、バフェット氏は堅実である。副社長のチャールズ・マンガー氏と共通する経営信念がある。

 「私たちは不必要な企業を買収するために、いまあるものを失うリスクは取らないということです。それはあまりにも馬鹿げています」

 M&Aについては現在、優良案件を物色中ということである。「バークシャーの余剰金を生産性のより高い資産(企業)に再投資すれば、我々の笑顔はさらに大きくなる」と、書簡ではユーモアのある表現を使っている。

 モルガン・スタンレーのアナリスト、カイ・パン氏は指摘する。

 「バークシャーが今後、巨額のキャッシュフローをどう再投資していくかは企業の収益率にとって大変重要です」

 「近年は(買収対象の)企業の資産評価が高まると同時に、他ファンドとの競争が激しくなっているので、バークシャーといえども簡単に買収ができにくくなっています」

 3点目がバフェット氏の後継者が指名されたことである。後継者の話はすでに数年前から漏れ伝わっていたが、年次書簡の最後でアジット・ジェイン、グレッグ・アベレ両氏のどちらかが将来のリーダーになると示唆した。

 ジェイン氏はインド出身でIBM出身の66歳。バークシャーの保険部門副社長に就く。

 一方のアベル氏(55)はカナダ出身で、会計の専門家だがエネルギー業界に長く、今後は非保険部門副社長に就任する。

 ただ87歳のバフェット氏がすぐに引退するという話は出てきておらず、両氏のどちらかがバフェット氏を引き継ぐのは少し先になりそうだ。

株の長期保有はリスクではない

 4点目は投資家に対するアドバイスである。

 バフェット氏は昨年の書簡でも述べているが、過去も将来も株式市場のチャートの上げ下げや金融評論家の分析に頼るのではなく、優良普通株を長期間持ち続けることが大切であると強調する。

 一般投資家にとって、アクティブ運用型投資信託はリスクばかりか手数料も高いため、金融機関に儲けさせるだけと考えている。そのため投資信託であれば、インデックスファンドを購入すべきだとする堅実路線をとる。

 「長期にわたって債券を持つことの方が、優良株を持つことよりリスクが高いこともあります」

 また長期間、株を保有することをリスクと捉えるべきではないとも指摘する。

 バフェット氏は短期間の利率の高い投資に手を出すより、長期間にわたって堅実な投資をすべきとの立場である。

 バフェット氏はバークシャーの会長として億円単位の年収を得ていても不思議ではないが、給与は過去何年も10万ドル(約1070万円)のままだ。ボーナスやストック・オプションはゼロ。

 ただコンペンセーション(年間報酬)という形で38万7000ドル(約4140万円)を給与とは別に受け取っている。つまり会社からの総年俸は5210万円だ。

 伝説的な投資家は超のつく億万長者でありながら、一般人の価値観も持ち合わせている点で稀有である。バフェット氏の次なる一手が気になるところである。

筆者:堀田 佳男