世界が注目するアフリカ随一の「ICT立国」ルワンダの驚異

写真拡大 (全3枚)

アフリカ大陸の赤道付近に位置するルワンダ共和国。日本ではあまり知られてはいないが、人口1200万人のこの小さな国が、ICT (Information and Communication Technology、情報通信技術)」分野で、欧米を始めとする世界の投資家から大きな注目を集めている。

毎年5月、ルワンダの首都キガリで、アフリカ最大のICT国際会議「トランスフォーム・アフリカ・サミット」が開催される。この会議では、ルワンダの若手起業家たちが、海外から参加した投資家たちと投資をめぐって対決する。

若手起業家たちが投資家たちに事業計画をプレゼンするこのセッションは、いつも立ち見客が出るほどの大盛況。「よし、私が10万ドルを出資しよう」「この点が修正できるまで投資は見送りだ、だが修正できれば50万ドルを出そう」と、ショーのような小気味よい進行も人気の秘訣だ。

しかしそれ以上に驚くのが、ルワンダの若者たちが、GISやAI、そしてIoTなど先端テクノロジーを駆使したプランを、シリコンバレーの起業家さながらのプレゼン術で訴えかけることだ。そこでは、欧米やイスラエルから訪れた投資家たちも思わず触手を伸ばす、高い水準のビジネスプランが披露される。


2017年の「トランスフォーム・アフリカ・サミット」の様子

治安もビジネス環境も良い

日本人はルワンダといえば、1994年のジェノサイド(大虐殺)を思い起こす。フツ族とツチ族の対立の末に、わずか約100日の間で人口の1割に当たる80万人以上が殺害された痛ましい出来事だ。

私が初めてルワンダを訪問したのは、悲劇から20年を経過した2015年。驚いたのは、ゴミひとつ落ちていない美しい街並み、家電製品が整然と並んだショッピングセンター、そしてなんといっても夜9時を過ぎた暗い街角を若い女性が1人でスマホを操作しながら歩いていたことだ。

アフリカでは、ナイロビ(ケニア)、ヨハネスブルク(南アフリカ)など、昼間でも日本人が市街地を歩けない都市が多い。ところがルワンダでは、国民から絶大な支持を集めるポール・カガメ大統領のリーダーシップのもと、アフリカ諸国では群を抜く政治的安定を維持し、類を見ない治安の良さと汚職の少なさを実現している。世界銀行が発表する「Doing Business 2018」では、ビジネス環境の良さでアフリカ大陸の首位に評価された。世界ランクでは第41位と、第34位の日本とさほど変わらないのだ。

ルワンダは石油や天然ガスなど地下資源に恵まれない。それだけでなく港を持たない内陸国であることから製造業に不具合だ。ところが、これらを逆手に取る形で「ICT立国」を国家戦略に位置付けた。アフリカでの知識集約型産業におけるハブとなる、さながらアジア地域におけるシンガポールを目指した戦略である。

政府機関の電子化が民間を率先する。日本国籍者が、ルワンダ入国に必要な査証(ビザ)を取得するとき、オンラインで申請すると、3日以内にメールが届き、渡航が可能となる。このシステムは外国企業でなく、国内IT企業であるルワンダオンライン社が運営している。

世界経済フォーラム(ダボス会議)が2015年に発表したレポートの中でも、「ICTの活用促進に最も成功した政府」として、第2位のアラブ首長国連邦、第3位のシンガポールを押さえ、ルワンダは世界一に選ばれている。

民間レベルでもICTの普及が着実に進んでいる。全国土に光ファイバーケーブルが敷設され、国民の携帯電話の普及率は75%に達する。電力網は国土の4割しか普及していないが、電気の通っていないところでは、基地局でディーゼル発電機が稼働することで人々に電波を届けるのだ。

しかも、携帯電話といっても首都キガリなどでは、ほとんどがスマホだ。街中を移動したいときは、スマホアプリでバイクタクシーを呼んで、オンラインで支払いまで済ませる。ATMが普及せず、ネットバンキングもないルワンダでは、携帯電話でのウェブマネー決済が一般化しており、小さな個人商店でさえも利用できる。

米有力ベンチャーキャピタル「500 Startups」との連携を起爆剤に、イノベーション都市を目指す神戸市は、ルワンダとの間でもICT分野でのビジネス交流を始めた。きっかけは、市内にある神戸情報大学院大学の存在だ。同校はICTでの社会課題解決をモットーに掲げ、ルワンダからの留学生が12名在籍している。日本国内のルワンダ人が約30名であることを考えると、神戸におけるルワンダ人の比率は特別だ。

彼らは日本政府による国費留学生であり、元官僚や起業家など優秀な人物ばかり。日本政府は、2013年に開催した第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で提唱した、アフリカの優秀な若者を日本の大学院修士課程で学ばせる人材育成プログラム「ABEイニシアティブ」を進めている。約5年間で1000人の留学生を受け入れる計画であるが、同時に彼らを国内の民間企業でインターンシップとして受け入れ、民間企業のアフリカでのビジネス発掘につなげる狙いもある。

2040年には、アフリカの人口が世界の4分の1を占めるという予測もあるが、この成長力に魅力を感じた神戸市は、アフリカ人留学生の受入れを契機に、アフリカでの人材育成とビジネス機会の発掘を方針に据えた。2016年には久元喜造市長がルワンダを訪問し、キガリ市との間でパートナー協定を締結するなど着実に足がかりを築いている。


久元市長が率いた初回のビジネスミッション

神戸市のルワンダへのビジネスミッションの呼びかけに対して、参加した民間企業は15社を超える。現地に代理店を置いてビジネス展開を始めた企業、ソフトウェアの開発業務を委託・発注した企業も出てきた。

アフリカとのビジネスというと、商慣習や治安といったこれまでも語りつくされた問題点と、ラストフロンティアとしての漠然としたチャンスは誰もが知るところだが、果たして本当にビジネスの舞台としての魅力は存在するのであろうか。次回は、私が実際に現地で見た、ルワンダという国が持つ驚異のポテンシャルについて、レポートしてみたい。

多名部 重則の「神戸市が500 Startupsと組む理由」
過去記事はこちら>>