よっし / PIXTA(ピクスタ)

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 ビジネススキルを高めるための演習をしていると、メール返信を止めるタイミングがわからないという質問に接したことがあります。つまり、以下のような状況です。

Aさん:依頼
Bさん:依頼への回答
Aさん:早速回答いただき、ありがとうございました
Bさん:こちらこそ、よい機会をいただきありがとうございました
Aさん:またよろしくお願いします
Bさん:こちらこそよろしくお願い申し上げます
Aさん:返信いただきありがとうございました
Bさん:こちらこそ、ありがとうございました

 基本的には、最初にメールを出したほうが止めればよいので、相手からの返答があったり、自分が御礼のメールをして相手から返礼があったりしたらそこで止めればよいだけのことです。

 ただ、相手が目上だったり、取引先だったりした場合に、相手からのメールに返答しないのは、失礼だと思い返答する。そのように思っている場合に、これが延々と続いてしまうのです。そのメールで相手は満足してくれたか、好印象を持ってくれたかということに懸念がある場合に、メールを止められないという事態が起こりやすいようです。

 目上の側がメールループを止めれば、目下のものはそれに合わせて、その後は返信しなければよいでしょう。

 しかし、目上が止めなかった場合にはどうすればいいのでしょう? そんなメールのループを止めるいい方法があります。

◆メールを止める「必殺のフレーズ」

 目下の者が、延々と続くメールのループを止める効果のある方法は、次の機会に触れるフレーズを入れることだ。例えば、「次にお会いする機会を楽しみにしています」「○日の会合ではよろしくお願いします」……というように、次の機会に言及することです。

 この方法は、メールのループを止めるだけでなく、次の機会へビジネスをつなげる、ブリッジの役割を果たすというメリットもあります。

 アンカリング効果のあるフレーズを入れることも、メールを終了することに効果があります。アンカリング効果のあるフレーズとは、船の碇が海底にずしりと響いて落ちるように、相手の心にずしりと響く効果のあるフレーズのことを言います。相手に、「なるほどそういうことか」、「印象に残った」と思わせるフレーズです。

 アンカリング効果は、形式的な表現には出にくく、飾らない言葉や自身の内なる声に含まれやすいものです。アンカリング効果を高める演習もあります。例えば、2人1組になり、聞き役が「この商品は何ですか」と聞きます。他方が「この商品は○○です」と答えます。聞き役がまた「この商品は何ですか」と聞きます。他方は別の答えを答える。これを2分間続けていき、何回応えられるか、印象に残った答えは何か聞き役は書き留めていく方法です。

◆アンカリングあるフレーズで印象度を高める

 2分間で演習していくと、商品にもよるし、人によっても異なるが、20回くらい答える人が出てくる。

 5回目くらいまでの答えは、ありきたりの一般的な商品説明の内容だ。

 10回目くらいになると、パンフレットに書かれているやや詳しい内容が答えになってくる。

 15回目を超えるようになってくると、たいてい、言葉に詰まりつつも、パンフレットにも説明書にも書いていないような、自分自身のその商品に対する思いのようなフレーズが出てくる。そうしたフレーズに、相手になるほどと思われせるアンカリング効果があるのです。

 通常の形式的なメールのやりとりや御礼のやりとりには、アンカリング効果のあるフレーズが含まれることはまずありません。しかし、そのフレーズを入れることで、相手に強い好印象持っていただくことができるので、メールを終了することの懸念が小さくなるに違いありません。

 もちろん、アンカリングある表現力は、メールで相手を引き付ける、対話で相手を巻き込むことにも効果のあるスキルです。

「この商品は何ですか」という質問を「このサービスは何ですか」と変えてスキルを高めることもできます。「あなたは誰ですか」という質問に変えて、自己紹介のフレーズのアンカリングを高めることもできます。

 ぜひ参考にしてみてください。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第72回】
<文/山口博>

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。