課題をいかに効果的に分解するかがキモです(写真:tkc-taka / PIXTA)

日本国内のネット通販でアマゾンジャパンと双璧を成す楽天。1997年の設立から20年で売上高は9444億円(2017年12月期)、連結従業員数1万4000人超という爆発的なスピード成長を果たした。金融、旅行などにも多角化し、売上高1兆円もうかがえる存在になってきた。
楽天はネット業界を中心としてさまざまな業界や企業で、その出身者が活躍する人材輩出企業でもある。在籍100人程度から1万人を超える大企業に至る過程を経験し、30代後半で楽天がアメリカで買収した企業の社長を務めた経歴もある小林史生氏が、著書『楽天で学んだ「絶対目標達成」7つの鉄則』の中から、スピード成長企業の目標達成に向けた仕掛けやネット通販における魅力的な商材の訴え方などのメソッドを明かす。

要素をバラバラに分解する「因数分解」

私が楽天の社内にいたとき、「因数分解」という言葉をよく聞きました。これは簡単に言うとビジネスを構成している要素をバラバラに分解することです。

私はその後、楽天を退社してからいろいろな企業に入り込んでコンサルティングをしてきていますが、この因数分解という言葉ややり方自体を知っている企業は多いものの、しっかりと結果につながるまで徹底してやっている企業はあまりないという印象があります。

インターネットショップで、ある商品を販売している業者が月商1000万円を1年後に2000万円へ引き上げようという目標を掲げたとしましょう。かなり難易度が高く感じられるかもしれません。たとえば広告費をこれまでの2倍投下するといった施策に走るケースがありえます。

この事例への施策は因数分解で考えられます。まずインターネット上の売り上げの構成要素が何から成り立っているかを考えます。

たとえば、

・売り上げ(1000万円)=アクセス人数(サイトに来た人の数)×転換率(来た人が購入につながる確率)×客単価(1人当たりの平均購入単価)

というふうに3項目に因数分解ができますが、必ずしもこれに限りません。違う視点、切り口でも考えられます。

・売り上げ(1000万円)=客数(購入したお客様の数)×購入頻度(購入してくれる頻度)×客単価(1人当たりの平均購入単価)

・売り上げ(1000万円)=新規顧客の売り上げ+既存顧客の売り上げ

・売り上げ(1000万円)=商品Aの売り上げ+商品Bの売り上げ+商品Cの売り上げ

などといった具合です。

これら分解した項目の1つを1年で2倍にできれば売り上げは単純に2倍となりますし、項目が3つあったとしてそれぞれ均等に約1.3倍ずつにできれば、2倍を超える計算になります。分解した中に上げるのが難しい項目が想定される場合は、それ以外の項目をいかに引き上げるかという点に着目して、具体的な施策を打っていけばいいでしょう。

4つのステップで考える

まとめると4つのステップで考えられます。

ステップ ^数分解する
ステップ◆,匹旅猝椶鬚匹譴阿蕕ぞ紊欧蕕譴襪を考えて目標を設定する
ステップ 具体的な施策(アクション)を洗い出す
ステップぁ‘付を決めて粛々とやる

ステップ△婆槁犬鮴瀋蠅垢觝櫃砲蓮△燭箸┐弌峺従の実力を把握するために直近3カ月の数字はどうだったのか?」「季節要因の影響を受ける場合は、去年の同月の数字がどうだったのか?」などの状況把握を正確に行う必要があります。それに対して、最も達成確率が高くなるように、各項目の目標を設定するのです。

ステップで具体的な施策を洗い出す際、楽天では上げるべきそれぞれの項目の行動を1つではなく、2つ3つと考えます。1つの施策がうまくいかないこともあるので、別の手立ても講じられるようにしておくことが、実はとても重要です。

ステップい覇付を決めて粛々とやる際に重要なのは、PDCA(Plan-Do-Check-Act)のサイクルを意識して、それを高速に回してやり切ることが必要です。

これらの入り口が因数分解なのです。数値目標に対して因数分解ができれば50%は解決したも同然。なぜなら課題が見えれば後は施策を考えて実行するだけだからです。

これ以外にも楽天で学んだ目標達成に必要な考え方があります。楽天には、楽天大学という部署があります。楽天大学は、主に楽天市場の出店店舗向けに、インターネットで商品を売るためのさまざまなノウハウを講座として提供しています。現在では、オンラインクラスといった形に進化しているようですが、私が楽天市場に在籍していた頃は、楽天のオフィス内で講座を開いており、店舗さんに会社までお越しいただいていました。

この楽天大学にはさまざまなクラスがあります。それぞれマーケティングの基本をしっかりと押さえたオリジナルカリキュラムで、一方的に知識を教えるというよりも、今でいうコーチングのメソッドが使われています。そのため楽天市場の店舗さんに受講いただくと、「目からウロコ」とおっしゃる人たちが続出していました。

数ある講座の中に、「魅力的な商品ページのつくり方」という講座がありました。ネット販売において、商品の記載されているページは、お店でいうと、接客の場です。

FABとは

そこで楽天大学ではFABという考え方を教えています。FABとは、「Feature(特徴)、Advantage(差別化)、Benefit(その商品の先にあるメリット)」の頭文字を取った略語で、これらの情報をしっかりと商品ページに載せましょう、というのが1つのポイント。ただし、ほかにも重要なポイントがあります。

それは、このFABの何を優先させるかです。Benefit、Advantage、Featureの順番で考えることがキモなのです。

ページ上でいきなり「他より安い」「商材の質がダントツ」(Advantage)、「とても軽い素材を使っています」(Feature)などの差別化ポイントや特徴をアピールする前に、その商品を購入した先にあるメリット(Benefit)を伝えるのが最優先ということです。

メリット(Benefit)とは、たとえばその商品を購入すると家族の団欒の場がつくれたり、恋人とのデートで素晴らしい時間を過ごせたりするなどの具体的な体験のイメージです。それを何よりも先に、ページの冒頭で画像やキャッチコピーでしっかり伝えることが重要なのです。

今でいうリスティング広告などのランディングページは、ほとんどこのアプローチが取られています。結果にコミットする流行のダイエットプログラムのサイトなどでは、最初にメリット(Benefit)をしっかりと出しているのがよくわかると思います。

営業時でもまず、FABのBenefit から伝える

このFABの手法は、自分自身の営業活動でも大いに役立ちました。また今でもよく使います。たとえば私は、楽天市場でECコンサルタントをしていた時代、店舗さんへの広告販売目標を毎月達成し、未達のことは一度もありませんでした。その勝因の1つに、営業時でもまず、FABのBenefit から伝えていたことがあります。

広告枠を購入したことがない店舗さんには、いかにこの広告枠が他の広告枠より良いか、いかに値段的にお得か、を伝えても、広告の必要性を感じない人には、まったく刺さりません。


まず相手が中小企業や創業間もない社長であれば、「広告がうまくいって事業が成功してまとまったお金が入ったらどうしますか?」「会社のかっこいい車を買いますか?」「社員みんなでハワイ旅行に行きますか?」といった話で一緒に盛り上がります。まさにBenefitを想起させるわけです。

相手が出世を狙っている管理職だったら、「〇〇さん、この広告を出してここでガツンと成果を出してみませんか?」というのがBenefitだったりします。相手がそれで前向きになれば、次にその広告がなぜいちばん良いか、という話になります。ここまでくればもう広告販売は間違いなくできます。

こうしたFAB、とくにBenefitを相手に想起してアクションを起こしてもらうアプローチは、明日からすぐに成果を出せる営業のアプローチとして非常に有効です。付け加えるならばFABの手法は人材のモチベーションを引き出すマネジメントにもまるごと適用が可能です。