ブランデッドコンテンツへの支出が増加するなか、エージェンシー、パブリッシャー、ブランドは、みな広告業界よりむしろエンターテインメント業界向きの才能を備えた人材を探し求めるようになってきている。だが、実際にこういった人材を採用できているかといえば、必ずしもそうではない。

昨年11月、テック企業コンダクター(Conductor)は、マーケティング担当幹部500人を対象に調査を実施した。この調査では、76%が今年マーケティング費用の増額を予定していると回答した。一方、人材会社クリエイティブグループ(The Creative Group)が昨年12月にエージェンシーと一般企業の幹部400人を対象に実施した調査では、43%が必要な人材を確保できていないと回答した。後者の調査によれば、もっとも需要の高い人材はコンテンツマーケターであり、次いでインタラクティブ/ソーシャルメディア担当者だという。

いま求められるスキル



マーケターが求めているのは、ユーザー体験、体験型コンテンツ、デジタルデザイン、3Dモーショングラフィック、バーチャル効果、人工知能などのスキルを持つ人物だと、クリエイティブグループの戦略担当バイスプレジデント、サラ・パク氏はいう。

「従来の広告はふつう、掲載されたサイト上で閲覧され、シェアされるだけだった。だが、ブランデッドコンテンツはサイトの垣根を越えてシェアされる。たとえば、Facebook動画がインスタグラムでシェアされ、そこからTwitterに転載される、というように。そのため、クリエイティブ職はコンテンツをさまざまなチャンネルに合わせてどうデザインし、カスタマイズするべきかを理解しなくてはならない」と、パク氏は語った。

広告主がこういった目新しい才能を求めるのは、よりエンターテインメント性の高い広告をつくることを強いられているためだ。その背景には、人々がより多くのコンテンツを、スマートフォン、動画ストリーミングサービス、ソーシャルメディア、それにVR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった娯楽用に開発されたテクノロジーなど、多種多様な形態で消費するようになったことがある。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)やBuzzFeed、Viceなどのパブリッシャーの社内ブランデッドコンテンツ制作チームには、記事や動画の制作に際し、ブランドのスローガンや製品だけでなく、ブランドの背景にあるストーリーや、ブランドの物事に対する見解や立ち位置も斟酌することが求められている。

「従来の広告は、ディスプレイから娯楽性のあるブランデッドコンテンツにシフトした」そう話すのは、ファウンドリー(The Foundry)のシニアバイスプレジデント、クリス・マクローリン氏だ。同社はタイム(Time Inc.)が立ち上げたコンテンツスタジオで、現在はメレディスコーポレーション(Meredith Corporation)傘下にある。「消費者はいまや宣伝文句の洪水のなかにいる。楽しませなければ、注意を引くことすらできない」。

人材不足に陥る理由



アトランティック(The Atlantic)の記事で、執筆者のデレク・トンプソン氏は、歴史上はじめて広告業界の社員数が減少したという労働統計局のデータを取りあげた。この記事は、ブランデッドコンテンツへの投資拡大により、従来型の広告業界の仕事は減少したものの、ブランドは別の形でマーティングを行うようになっただけだと指摘している。

マクローリン氏によれば、ファウンドリーがとくに求めているのはライター、編集者、動画製作者だ。たとえば、同社のバイスプレジデント兼クリエイティブディレクター、ジョン・ゴドフリー氏は、ファッション誌『グラマー(Glamour)』、コンピューター雑誌『ファミリーPC(Family PC)』の元編集者だ。また、同社のブランデッドコンテンツ・パートナーシップ部門でクリエイティブ戦略責任者を務めるマイケル・リベラ氏は、ブランデッド・エンターテインメント・ネットワーク(Branded Entertainment Network)とワーナー・ブラザース・レコード(Warner Bros. Records)で長年音楽ライセンスに携わってきた人物だ。

だが、クリエイティブ職の人々がみなビジネス面への転向に積極的なわけではない。

「広告のプロは、ストーリーづくりで業界トップクラスとはいえない」と、ヒュージ(Huge)のエグゼクティブクリエイティブディレクター、フェデ・ガルシア氏はいう。「我々ははっきりいって二流だ。一流なのはテレビ番組のプロデューサーや、映画脚本家、小説家、漫画家、映画監督であって、広告クリエイティブではない。我々に必要なのは、アイデアを独創性よりも娯楽性の観点で評価できるクリエイティブ人材だ」。

勢いづく仲介業者



こういった人材の獲得競争の激化は、逆オファーの増加からも見てとれる。クリエイティブグループによる、広告・マーケティング企業幹部200人を対象とした別の調査で、14%が自社から提示するブランドコンテンツ戦略責任者の役職を含む逆オファーが過去半年間に増加したと回答。またアドエージェンシー幹部200人のうち19%が、過去半年間で逆オファーが増加したと回答した。

このような人材不足を背景に、ブランドやエージェンシーとコンテンツ製作者を結びつける仲介業者が勢いづいている。昨年10月、モバイル写真・動画編集アプリ「VSCO」は、ブランドやエージェンシーとクリエーターを結びつけるプラットフォーム「VSCO Content」をローンチ。ナイキ(Nike)、チョバーニ(Chobani)、ティンバーランド(Timberland)などのブランドが同サービスを利用しはじめている。新アプリ「ホリファイ(Hollyfy)」も、ブランドやエージェンシーと、セレブやSNSの有名人を直接つないでいる。

だが、最高の才能は、いくら金を積んでも手に入らないものなのかもしれない。

「有能な人材は存在する。だが、エージェンシー内にはもういないだろうし、雇い入れるのも難しいかもしれない。彼らは単純に、広告業界に興味がないのだ」と、ガルシア氏は語った。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)
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