(環境省COOL CHOICE HP内特設サイト「Non温暖化!〜赤鬼化を止めろ!〜」より)

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 香川県の「うどん県」、大分県の「シンフロ」など、この数年、地方自治体が競ってPR動画を制作し、話題となった作品も多い。スマートフォンで手軽に視聴できることが人気の背景にあり、動画共有サイト「YouTube」での再生回数が200万回を超える大ヒット作も登場した。

 そんなブームにあやかろうという狙いなのか、環境省が2月2日にユニークなPR動画をインターネット上にアップした。それがCOOL CHOICE PR動画「Non温暖化!〜赤鬼化を止めろ!〜」だ。地球温暖化対策に向けた取り組みのひとつである省エネ家電への買い換えやLED照明への交換を訴える内容で、3部構成となっている。

 2日に第1弾「赤鬼、古い冷蔵庫を開けっ放す!」と第2弾「赤鬼、5つ星エアコンの下で改心!」が、7日に第3弾「赤鬼、LEDの前で元の人間に戻る!」が公開された。

 温暖化を象徴する存在として赤鬼と化した女性が登場。冷蔵庫を開けっ放しにしたり、エアコンの温度を無造作に上げたりと、やりたい放題の赤鬼の前に立ちはだかるのが子どもたち。赤鬼を退治して改心させ、最後は元の美しい女性に戻って「Non温暖化!」と訴えるというストーリーだ。

 第3弾の終盤には素顔の女優がメイクを施されて赤鬼に変身していくメイキングが紹介されていて、その変貌ぶりがおもしろい。女優の正体は第3弾で明らかになる。朝の連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)でブレイクした「のん」(旧芸名は能年玲奈)だ。

●節分に合わせて公開した狙いは?

 そもそも、COOL CHOICEとは何か。

 環境省のウェブサイトによると「関係省庁をはじめさまざまな企業・団体・自治体等と連携しながら、低炭素型の製品、サービス、ライフスタイルなど、地球温暖化対策に資するあらゆる賢い選択を促す国民運動」だそうだ。今回の動画は省エネ家電買い換え促進の一環として制作した。

 PR動画制作の狙いについて環境省の担当者に話を聞いた。

「世論調査で若年層の温暖化対策への関心が薄いという結果が出ましたので、SNSを活用した方法で対策の必要性を訴えるために動画制作に取り組みました。節分の時季に合わせて公開したのは、“鬼”という単語での検索でサイトに来てくれるのではという思いがありました」

 思惑通り、公開から5日後に再生回数が1万回を超え、2月7日に第3弾の公開となったわけだが、反響はどうか。

「第1弾、第2弾を公開して再生回数が1万回を超えたら第3弾を公開するとしていたのですが、予想よりも早く公開後5日でクリアしました。赤鬼を演じていただいた女優さんがかわいい、素顔がキレイといった感想をはじめ、さまざまな反応があります。これまで温暖化に関心がなかった層にも訴求できたとみています。目標は3部合わせて再生回数が10万回を超えてくれることです」(前出の担当者)

 出だしは順調。このままいけば再生回数10万回超のクリアも可能だろう。しかし、今回の動画は、SNSを使いこなしている若い世代には訴求力があるが、省エネ家電への買い換えという点では、「もったいないから壊れるまで使い続けよう」と考えがちのシニア世代、省エネ効果はわかっていても経済的余裕がなくて買い換えができない独居老人などへのアプローチは難しいのではないか。

「確かに、そこが課題のひとつです。シニア層の取り込みに関しては、自治体を通じた啓発活動、生涯学習講座などで訴えていきたいと考えています」(同)

●キャラクターを使ったアプリや温暖化の危機を伝えるテレビ番組も

 環境省のウェブサイトをもう少し探検してみよう。

 官庁のウェブサイトは、情報やデータを文書やPDFで閲覧するケースが大半だが、環境省は可視化にかなり力を入れている。スマホ向けの「COOL CHOICEアプリ」やPCなどで視聴できる『COOL CHOICE TV』。いずれも温暖化の現状、問題点、対策などが映像でコンパクトにまとめられている。

『COOL CHOICE TV』のコンテンツの視聴ランキング上位は、「“ねぶた”をLED化!未来に誇れる<ねぶた祭>」「感染症のリスクを高める蚊が増加? 迫りくるマラリアの危機!」「早まる桜の開花と遅れるかえでの紅葉。高知で起きている異変とは?」「大量発生するオニヒトデからサンゴを守ろう!」「国の天然記念物ライチョウを追い詰める動物の正体は?」 となっている。

 ライチョウの危機を訴える番組を視聴してみた。

 2分35秒の番組の中で、富山県立山に生息する300羽のライチョウに忍び寄る危機をレポートしている。1980年代に700羽生息していた南アルプスのライチョウが現在では推定300羽となり、深刻な被害が報告されている。シカやイノシシが高山植物を食い荒らしたためだ。立山黒部アルペンルート沿いに赤外線カメラを設置したところ、室堂付近の標高2350メートルの高山帯で初めてニホンジカが確認された。温暖化で中山間部の積雪量が減り、ニホンジカが高山地帯へ侵入していると見られている。立山のライチョウへの影響が懸念され、早急の対策が必要だと訴える内容だ。

 文書による報告でなく視覚に訴えるものなので、わかりやすく説得力がある。全国各地で起きている異変を知るうえで格好のコンテンツだ。

 こうした意欲的な取り組みを、いかに多くの国民に知らせていくか。せっかく貴重なコンテンツが豊富にそろえられていても、それを見て、考え、行動に移す人が増えなければ意味がない。多額の税金を使って制作しているのだから、学校教育の現場で活用したり、市民講座などで公開するなど、国民に向けて積極的にアピールしていくことが必要だろう。
(文=山田稔/ジャーナリスト)