大都会ニューヨークの元警官で退職後にガードマンに転職したジョン・マコーネル氏は、1992年のある深夜、仕事先から帰る途中で、とある電器店に押し入った強盗団と鉢合わせした。

驚いた強盗団のひとりがライフルを撃ってきたので、マコーネルもハンドガンで応戦したが、レジの陰にいた別のひとりに不意撃ちされて、その場に倒れた。

 

それでもなんとかまた立ち上がると発砲したが、今度はライフルを連射され、銃弾が6発たてつづけに体に食い込んだ。うち1発は背中から入って、左肺と心臓、さらに赤血球を心臓の右側から肺臓に運んで酸素を受け取る主肺動脈を切り裂いた。

 

ようやく遠くから警察車のサイレンが近づいてくるや、強盗団は慌てふためいて逃亡し、マコーネルはただちに病院に緊急搬送されたが、結局、命は助からなかった。

 

マコーネルは家族をこよなく愛していて、とりわけ大きくなっても怖がりやの末娘ドリーンには、こういい聞かせるのが常だった。

 

「何が起ころうと、パパはいつもお前を見守っているからね」

ジョン・マコーネル警官の孫、ウィリアムの幼年時代の写真

 

マコーネルが死んでから5年目、結婚したドリーンは長男を授かって、ウィリアムと名づけた。だが、ウィリアムは生来の虚弱体質で、しょっちゅうひきつけを起こしては、母親を心配させた。

 

病院の診断では、ウィリアムの病気は肺動脈弁閉鎖症といい、これは肺動脈の開閉弁の形状がちょっと異常なせいで、血流がスムーズに肺臓まで移動していかない病気だという。さらに、心臓の右心室も弁に問題があって、ちょっと奇形化していた。

 

ウィリアムは外科手術を数度にわたって受けた。内用薬は不断に服用する必要があったが、おかげで健康はすっかり回復した。

 

ウィリアムの体には生まれたときから、祖父が致命傷を負ったのと同じ部位に、その傷口とそっくり同じ形状のアザがあった。リーインカーネーション専門の研究家が「生まれ変わりの具体的証拠」と見なすいわゆる“誕生痕”である。

 

それに加え、ちょっと大きくなって言葉を話せるようになると、ウィリアムは会ったことなどないはずの祖父の人生について、あれやこれや口にするようになったのだ。

 

 

前世の死と生まれ変わった日を正確に答えた!

ウィリアムが3歳になったある日、騒ぎ回るのをいつまでもやめないので、見かねた母親が思わず、「ちょっとおとなしくしなさい。でないとお尻ペンペンしますよ !」と声を荒らげてみせた。

 

すると、幼いウィリアムは不思議な答え方をした。

 

「ママがちっちゃいとき、ボクはママのパパだったけど、ママがいくらいけない子になっても、ボクはママをぶったりしなかったよ !」

 

ウイリアムの母親は呆気にとられた。だが、わが子が自分の祖父(母親の父)の人生をさらにあれこれ具体的に語るにつれ、ドリーンは自分の父親が本当にこの世に帰ってきたような気がして、心がほのぼのと温かくなった。それからもウィリアムは何度も祖父になりきっては、数人の男に銃で撃たれて殺されたときの様子を繰り返し物語ったのだ。

 

またあるとき、ウィリアムは母親のドリーンにこう尋ねた。

 

「ママがちっちゃな女の子で、ボクがママのパパだったとき、ボクのニャンちゃんは何て名前だったっけ?」

 

「マニアックのこと?」

 

「ううん、それじゃないほうだよ。白いほう」

 

「ボストン?」

 

「そうそう、ボクはボスって呼んでたよね?」

 

正解だった。ジョン・マコーネル家では、猫を2匹飼っていたのだ。そして家長のジョンだけが白猫のほうを、名前のボストンを省略し、いつも“ボス”と呼んでいたのである。

 

さらにある日のこと、ドリーンはウィリアムに、生まれてくる前のことを何か憶えているかと聞いてみた。ウィリアムは自分が死んだのは木曜日で、すぐ天国に昇ったという。

 

「そこには動物たちがいて、神様にもそこで出会ったよ。ボクは神様に、いつでも地上に戻れますって答えたの。そしたら、火曜日に生まれたんだ」

 

ドリーンはひっくり返りそうになるほど驚いた。ウィリアムは幼すぎて、まだ曜日の区別などつかないはずだったからだ。そこでドリーンはウィリアムを試すために、わざと間違えてみた。

 

「それじゃ、キミが生まれたのは木曜日で、死んだのは火曜日ね?」

 

ウィリアムは間髪を入れず即答した。

 

「ううん、ボクが死んだのは木曜日の夜で、生まれたのは火曜日の朝だよ」

 

この回答は、深い意味で正しかった。祖父のジョン・マコーネルが強盗犯に撃たれて死んだのは木曜日の夜で、孫のウィリアムとして生まれ変わったのは、5年後の火曜日の朝だったのである。

ウィリアムの前世は、祖父ジョン・マコーネルだったのだろうか?

 

 

人は転生するまでにいろいろな場所に行く

またウィリアムは、前世で死んで現世に転生するまでの期間(ちなみに仏教では文字どおり“中有”という)についても、母親にこんなふうに説明した。

 

「人は死んでも、すぐには天国に行かないんだよ。あっちこっち、いろんなところに行くんだ。あっちの場所、こっちの場所って――」

 

ウィリアムは手で、高さの違う場所をいろいろ示してみせた。

 

「動物も人間もみんな生まれ変わるんだ。天国にはいろんな動物がいたよ。嚙みついたりも引っ掻いたりもしない。みんなおとなしかった。ボクは今度、生まれ変わったら、動物のお医者さんになりたいな。動物園で大きな動物の世話をするのもいいね」

 

ドリーンの話では、父親のジョンは前世や生まれ変わりを否定するカトリック教徒だったにもかかわらず、個人的にはそれを信じていたそうだ。ウィリアムは母親に、さまざまな形でそんなジョンのことを思い出させた。

 

たとえば、ジョンはかなりの読書家だったが、ウィリアムもまだろくに字も読めないのに、なぜか人一倍の本好きで、大人向けの難しい書物をよく持ち歩いては、ドリーンにその本の読み聞かせをせがんだりした。

 

ウィリアムが母親に連れられて祖母のマコーネル夫人を訪ねたときには、初めてきた家なのにだれにも教えられずに自分から、生前のジョンが使っていた書斎に入るなり、何時間も出てこなかった。

 

さらにウィリアムは、祖父がやはりそうだったように、一見関係なさそうな別々の物事を巧みに結びつけるのが得意で、話しだしたら止まらないお喋り好きだった。

 

しかし、ウィリアムがドリーンに、父親のことをいつも強く連想させたのは、「ママ、心配しないで。ボクが必ずママを守るからね」と何かにつけて口にしたことだ。

 

これこそが、ウィリアムの祖父でありドリーンの父親であるジョン・マコーネルが、生前しょっちゅう口にしていた、いわば十お八は番この決めゼリフだったからである。

 

父親が銃弾を浴びて非業の死を遂げたために、心に深い悲しみと重い永遠の傷を負わされたドリーンだが、その愛する父親の魂が思いがけなくもわが子に生まれ変わったことを知ったおかげで、彼女は父親を早くに失った悲しみをなんとか乗り越え、これからの長い人生を大きな安堵と光明とともに歩んでいけるにちがいない。

 

また、このウィリアムのケースで注目される“誕生痕”の現象は、リーインカーネーション現象の真実性を裏づける極めて重要な状況証拠であるとともに、この特異な超常的心霊現象を解明する重要なキーワードのひとつでもあるといえるだろう。

月刊ムー 2018年3月号

 

(ムー2018年3月号総力特集「生まれ変わりの遺伝子『ソウルゲノム』の謎」より抜粋)

 

文=南山宏

 

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