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●Webデザイナーは時短就労と相性がよい仕事

○産休・育休を経て退社した女性は即戦力

人手不足が社会問題になる昨今、欲しい人材が見つからないと頭を悩ませている人事担当者は日本中にたくさんいる。特に中小企業は適切な能力を持った人物を探し出すのに四苦八苦している状況だ。また、新しい人材を発掘したとしても、離職率の高い状態が続くなど、人事担当者の苦労は絶えない。しかし、働きたいと考える人は決して減っていない。つまり、就職の需要と供給がうまくいっていないのだ。そんな時は、これまで雇用したことがない「新たな人材」を探してみてはどうだろうか。

安倍内閣は女性の社会進出を政策の重要項目に掲げ、待機児童の解消、職場復帰、再就職支援、女性管理職の増加などを後押しする政策を進めている。しかし、企業側ではこうした状況に対応しきれていない。出産や育児が離職につながり、女性が職場復帰や再就職が困難な状況を生んでいる。もちろん、制度をきちんと運用している企業もあるだろうが、すべての企業が成功しているわけではない。

ここで、企業側は考え方を変えてみてはどうだろう。以前は働いていたが、今は働いていない育児中の女性の中には、状況が整えば再び仕事をしたいと考える人は多い。こういう人々はやる気があり、前職で仕事の経験もあり、さらに人生経験も豊富だ。円滑にコミュニケーションが取れ、ある程度社会の仕組みも知っている人材は即戦力になりやすい。こうした人材を活用できれば、人材確保の幅が広がることは間違いないだろう。

○「時短就労」は企業も従業員もお得な関係

出産を経て復職するとなると、出産前とは就労時間に対する考え方を変える必要が出てくる。保育園や幼稚園に子供を預けることができたとしても、子供の送り迎えなどを考えると、就労時間は長くても午前9時や午前10時から、遅くても午後4時までといった限られた時間になる。また、緊急のトラブル対応などが求められる職種においては、出産前と同等の責任が伴う業務を任せてもらうことは難しいだろう。

しかし、こうした限られた状況においても、自分の能力を活かした仕事をしたいという要望を持つ女性はたくさんいる。

一方、フルタイムで業務に従事する技術職を1人新しく雇用するとなると、厚生年金や社会保険、年間の給与や賞与などを加味すると相応の経費が発生する。その上、雇用した従業員が希望に添うような能力を持っていなかったとすれば、企業としては頭の痛い話だ。

就労時間が午前10時から午後4時まで、週に3日〜5日といった就労の場合、企業としては支払う給料をフルタイムの従業員よりも抑えることができる。雇用者と被雇用者の双方が限られた時間を効果的に利用できれば、職場復帰や再就職したい人は育児と並行して働くことできる職を手にでき、企業は時間内に効率よく仕事を進めてくれる有能な人材がリーズナブルに手に入ることになる。どちらにとっても好状況というわけだ。

○時短就労と相性のよい仕事、そうではない仕事

もちろん、時短就労と相性のよい業務とそうでない業務がある。例えば、WebデザインやWebページ作成は時短就労と相性のよい業務だ。製作物の納期は決まっているが、ある程度、自分で時間を調整して仕事ができ、自宅でもできる。また、毎日出社する必要もない。簡単な連絡であれば、メールやチャットなどで対応できるし、Skypeが使えるなら、リモートでの打ち合わせも可能だ。

企業にとってWebは情報発信のための必須のメディアだが、すべての企業が、フルタイムで専属のWebエンジニアを雇用できるわけではない。大抵の場合、必要に応じてWebページ制作を外注しているはずだ。しかし、外注では円滑な意思疎通が難しいケースも多く、費用の割には満足なものができないこともある。

意思疎通を図りたいがフルタイムでの雇用は費用の面で難しい。そんな時は時短就労だ。毎日出社しなくてもよいが、コミュニケーションは取りたいので週に2、3回は会議には出てほしいし、定期的に制作状況を報告してほしい。こうした業務は、時短就労やリモート就労の双方とかなり相性がよく、出産後に復帰を希望する女性にうってつけの業務となりうる。

●労働経験・意欲がある育児中の女性は金の卵!?

○主婦・母親向けの教育コースを提供するデジタルハリウッド

では、そういった人材はどこで得られるのかということになるが、本稿ではデジタルハリウッドの取り組みを紹介しよう。

デジタルハリウッドは2013年から「Webデザイナー専攻 主婦・ママクラス」を開講している。これは、主婦を対象とした講座で、育児をしながらデザインやWeb技術などの学業に取り組むことができる。

具体的には、PhotoshopやIllustratorといったグラフィックソフトウェアの操作方法、Webページの制作技術(HTML5、CSS3、JavaScript、jQuery)を学べるカリキュラムになっており、コースを修了すると、スマホサイトから大型Webサイト、Web広告まで手がけることが可能なスキルが身につくという。週に1回は出席が必要だが、それ以外はリモートで学業に取り組んでもよい。また、教室には子供が遊べるキッズペースも用意されており、子連れ授業に参加する人もいる。なんとも、育児中の女性としては助かるコースである。

デジタルハリウッドは先日、仕事マッチングイベント「主婦・ママ卒業制作展」を開催した。

同イベントは、「Webデザイナー専攻 主婦・ママクラス」を受講した卒業生の卒業制作を展示し、企業の採用担当者に見てもらうというもので、卒業生と企業のマッチングを狙ったイベントとなっている。人材を求める企業はこのイベントに参加して制作物をチェックし、気になった作品の制作者と技術や就職に関して議論できる。企業としては目の前に成果物があり、相手の力量や要求を踏まえた上で雇用を検討できるため、相互利益の関係を構築しやすい。

2013年に開講された「主婦・ママクラス」は、当時の卒業生や企業の要望を受けて設立したものだった。企業側も常にフルタイム就労の従業員を必要としているわけではなく、時短就労の従業員を求めていることがある。また、卒業生が出産で産休や退職することも多く、要望を受ける形で誕生したのが同クラスというわけだ。

「主婦・ママクラス」はこのところ募集をかけても定員に達することが多いという。メディアを通じて知名度が上がってきたこともあるが、こうしたコースを必要としている女性が多いということが潜在的な背景としてあるようだ。

○解消したい時短就労者とフルタイム就労者の不満

時短就労を希望する人が不安に感じることの1つが、フルタイム従業員に対する気遣いだ。時短就労とフルタイム就労の区別ができていない環境では、時短就労で終わらなかった業務がそのままフルタイム就労側にシフトすることがある。こうなると、時短就労側は責任を他人に押しつけたような形になり、また、フルタイム就労側は仕事の尻拭いをしている気分になる。時短就労が雰囲気がよくない職場作りを担ってしまうというわけだ。

時短就労とフルタイム就労で業務内容を完全に分離できるなら、それは1つの解決策だ。お互いに自分の業務に責任を持ちやすく、完結させることができる。業務の分離が可能であれば、リモート就労の可能性も模索できる。こうした作業が可能であればラッキーだろう。

時短就労とフルタイム就労が同じ業務内容になってしまう場合、逆に時短就労側が納得のいかない状況になることもある。同じ量の業務を時短就労とフルタイム就労でこなしている場合、業務効率は時短就労のほうが高いにもかかわらず、給与はフルタイム就労よりも低いという状況になる。フルタイム就労側は残業手当も出るなど、さらに不公平感を煽ることになる。

こうした摩擦は表面には現れないものの、従業員間で密やかに共有されることがある。不満なんてどこにでもあるものと割り切ってしまうのも手だが、できれば解消して気遣いが最小限で済む仕組みを作ることが、すべての従業員が意欲的に働くことができる大きな一歩になるだろう。

○育児中の女性という人材の宝

新卒学生の就労が長く続かないと言われているが、これは根性や能力の問題というよりは、就職に求めるものが雇用者と被雇用者で合致していないことが大きな原因だろう。雇用しておいて数年で辞められてしまうと企業としては損失が大きいし、働く側も不本意な仕事を数年も継続するのは不幸だ。

産休・育休を取得して、仕事を辞めて育児に専念している女性は就労時間や条件が限られるかもしれないが、企業勤めの経験があり、高い労働意欲を持っている。就労に向けて学業に取り組むなど、努力家でコミュニケーションスキルも期待できるケースが多い。人材として検討するには魅力的だ。これまでこうした層を自社の人材としてとらえたことがないのであれば、新たな人材として検討してみてはどうだろう。