ソルガムきびの原料。世界には2000以上の種類があると言われる(写真:中野産業)

アレルギーに悩む人は少なくないが、特にアレルギーを持つ子どもを持つ親にとって、毎日の食事の食材など、日々頭を悩ますことが多い。そのような中、一つの食材が注目されている。「ソルガムきび」だ。

ソルガムきびは、最近人気が高まっている「グルテンフリー」の食材の一つで、日本では「たかきび」と呼ばれている。食物繊維やミネラルが豊富で、最近では抗酸化作用も注目されている。世界的なテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手がコンディションを保つためのグルテンフリー食材の一つとして紹介し、アスリートから人気が広がった。

以前から知る人ぞ知る食材だった

米国が全世界の25%を生産していることもあり、米国内ではソルガムきびを使ったグルテンフリーのパンやケーキなどがつねに店頭に置かれているほど、消費者に浸透している。日本ではグルテンフリー食材としてはコメ粉が主流になっているが、幅広い食材を望む消費者が増えるなかでソルガムきびも選択肢の有力候補として浮上している。

実はソルガムきびは、アレルギーに悩む子どもを持つ親にとって、すでに十数年前から知る人ぞ知る食材だった。2000年ごろ、ソルガムきびは食物繊維がたっぷりで、コメや小麦アレルギーの人に安心な食材との報道がなされた後、「問い合わせが殺到した」と打ち明けるのは、製粉事業を手掛け、米国からの食材輸入も行う中野産業(香川県高松市)の中野恵子専務だ。同社は1999年ごろから、ソルガムきびを米国から輸入し販路を拡大してきた。

当初、酒原料やパン、スナック菓子の原料として売り込みを開始してきたが、日本初の食材の採用にメーカーは及び腰で販路開拓に苦労していた。ところが、「小麦アレルギーに安心」との報道が、道を切り開いた。「わが子にお菓子をつくってあげられる」との声を聞き、アレルギーに悩む子どもたちのためにと、ソルガムきびによる商品開発に本腰を入れ始めた。

「ソルガムきび粉をつかったレシピを提供する一方で、実際にどのように料理されているのか、顧客に取材していた」(中野氏)。アレルギーは、症状が人それぞれ。どんな食材とともに、どのように料理されているのか、アイデアを聞いて回ることから始めたという。

中野産業が販売する商品は当初のソルガム粉からパン粉ミックスやパスタ、お菓子など数十種類に拡大。どれもが顧客の声を十分に吸い上げたものばかりだ。なかでもマカロニの開発が消費者に受け入れられる契機になったという。


消費者に浸透する契機となったマカロニ。食感も普通のマカロニと変わらない(写真:中野産業)

「ほかの子どもと同じようにマカロニを食べさせてあげたい」というある母親からの要望が、開発のきっかけだった。この母親にマカロニができたことを伝えると、「穴は空いていますか」と聞かれたという。「空いていますよ」と伝えると、この母親は「わが子に普通のマカロニを食べさせてあげられると、涙声でお礼を言われたことは忘れられない」(中野専務)。

中野産業は2017年11月、蒸しパンの販売を開始した。ソルガムきびをつかった商品は、何もアレルギーを持つ消費者に限ったものはない。蒸しパンは水を入れて電子レンジにかけるだけで食べられるようにし、手軽にソルガムきびを味わってもらえるようにした。

栄養価の高さも魅力

アメリカ穀物協会によると、日本でソルガムきびを常時扱っている企業などは25社と、まだ多くはない。とはいえ、この2〜3年の間に徐々に広がっている。

ソルガムきびなどグルテンフリーの食事を求める外国人が多いホテルやレストラン・カフェなどでは、ソルガムきびを使用したメニューを提供するところが増えているという。穀物協会には家庭でもどんな料理を作ることができるかとの問い合わせも増え、同協会はホームページなどによるレシピの提供に注力している。

東京・下北沢のカフェレストラン「inning+」(イニング・プラス)では、ソルガムきび粉を使ったマフィンを提供している。マフィンは4種類、小麦粉を使った場合より栄養価が高く、人気メニューの一つだ。オーナーの米野智人さんは元プロ野球選手で、自身も健康のためにグルテンフリーの食事を中心にしている。レストランで提供できるグルテンフリーの食材を探していたところ、ソルガムきびを知ったという。

マフィンはソルガムきび粉に加え、玄米粉とアーモンド粉を使用。ソルガムきび粉を入れることで、小麦粉に近いふわっとした感じに仕上がる。また、表面もさくっとした食感を得られるという。「何よりも栄養価が高いことは魅力」(米野さん)。

2017年10月に大阪市でアメリカ穀物協会が主催した試食会とシェフによるデモンストレーションには多くの飲食・宿泊業関係者が集まるなど、ソルガムきびなどグルテンフリーの提供を真剣に考える業者が増えている。アレルギー対策の必要性と健康志向は高まり続けており、食卓でのソルガムきびの存在感も高まりそうだ。