Image: Media Ambition Tokyo 2018

2018年2月9日から25日まで開催の、テクノロジーカルチャーの祭典Media Ambition Tokyo(通称MAT)に行ってきました。

MATは、都内各所でアート作品の展示やトークイベントを行なうショーケースで、今回見てきたのはメイン会場となる六本木ヒルズの東京シティビュー。テクノロジーアート、メディアアートをはじめとして、数十個のインスタレーションが六本木ヒルズの52階に集まっています。

有名な出展者でいうと、筑波大デジタルネイチャー研究室の落合陽一さんや、クリエイティブ集団Rhizomatiks(ライゾマティクス)が参加しています。

感想:硬派なメディアアートだけどわかりやすい

まずは全体の感想からいうと、脳汁じゅわじゅわって感じで、会場を出たときの満足感と余韻は十二分。それぞれの作品はどれもハイコンテキストすぎず、テクノロジーすぎずで、硬派なメディアアートながらも誰でも楽しめる展示でした。

いわゆる“バイラル”や“インスタ映え”ではないアートが、これほど集結するイベントは中々ないのではないかと、私のなかでは大絶賛です。こんな会期終了間近に言われても…って感じですが、テクノロジーによる問題提起や批評とかに興味がある人はぜひ見に行って欲しいです。

MATを見る前に:良いメディアアートってなんだろう

アートって難しいですよね。コンセプチュアルすぎる作品だと批評家っぽく鑑賞するしか術がないですし、ビジュアルが先行しすぎても深みが足りない作品に見えてしまいます。とくにメディア/テクノロジーアートの場合ですと、作品に含まれるメディアやテクノロジーが、作品のコンセプトを提起し、ビジュアルまで担保しなくてはなりません。つまり、コンセプトとビジュアルに一貫性があり、それを橋渡しするテクノロジーに「なるほど、そういう仕組みなのか!」という発見があると、それは良いメディアアートだと思います。

下では、それに該当すると私が感じたMATの作品を紹介します。

オススメ作品

『CD Prayer』──勝本雄一朗

Photo: 山本勇磨

手のひらサイズの仏像の背中に、CDとCDプレーヤーのピックアップ(読み取りレーザー)をつけた作品。「Prayer」というスペルに気がついた方もいるかと思いますが、そうなんです、音楽ストリーミングサービスによって衰退しつつあるCDの仏像なんです。

Photo: 山本勇磨

作者の勝本さん本人のコンセプトがしっくりきますね。

情報技術は日進月歩で進化し、記録メディアもまた盛者必衰から逃れられない。しかし、彼岸へと去りゆくメディアにも慈悲を願うのが人間だ。そこで私はCDのための造仏を始めた。

(勝本雄一朗)

『山、11万4千個の多角形』──ジョアニー・ルメルシエ

こちらは、ジョアニー・ルメルシエという、フランス人アーティストによる作品。ヨーロッパで有名なAntiVJというビジュアルスタジオの創設メンバーでもあります。

壁一面に描かれている山の風景が、朝から晩へと有機的に移り変わるビデオインスタレーション。しかしこの作品の面白いところはそこではなく、実はこの山、壁に印刷されたメッシュ状の線に、プロジェクターが明暗を投影する仕組みで描かれているんです。

つまりはこういうことです。

Photo: 山本勇磨
近づくと、各グリッドに投影されていることがわかる

この仕組みを知るまで、私はグリットと光の明暗を見て、山の風景を錯覚していたわけですね。この作品は、それを逆説的に考え、私たちの周りにある風景がすべて数学的なシミュレートだったら?という自然世界とコードの関係性を提起する作品になっています。

『Morpho Scenery』──落合陽一

Photo: 山本勇磨

同じく、視覚から得る情報について提起した作品では、落合さんの作品も外せません。内容とコンセプトを簡単にいうと、私たちが見る風景というのは、本来の風景がもつ物質性を失った二次元的な映像であるというのが落合さんの考え。そこで、物質と映像の間に光学装置を挟み込み、風景がもつ物質性を喚起させるのが、この作品の目的です。

Photo: 山本勇磨

SNSでも良く見かけていたので気になっていたのですが、シンプルな構成なのに、そのダイナミックな映像体験に驚きました。この作品が言わんとすることは、体験して感じるべし。

Photo: 山本勇磨

ちなみに落合さんによると、こうして地平線同士を合わせるのがインスタ映えする撮り方だそうです。

『Imaginary Soundwalk』──Qosmo

Image: Media Ambition Tokyo 2018

私たちは1枚の写真をみれば、その画にふさわしい音まで想像できますが、それをコンピューターに想像させるのがこの作品。テクノロジーアートを中心に手がけているクリエイティブ集団Qosmo(コズモ)が制作しています。

真ん中のタブレットからマップで場所を選び、その場所で「鳴っていそうな音」が右側にあるスピーカーから流れます。鳴っていそうな音というのは、その場所の情報からマシンラーニングで弾き出した音とのこと。

Photo: 山本勇磨

つまりImaginary Soundwalkの音は、その町の要素を因数分解して鳴らしているわけで、現実の場所で聞こえる音よりも、その場所らしい音なのではないのか?とも考えてみたり…。

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他にも、企業とコラボしたコミッションワークなど、多種の側面を持つメディアアートがたくさん展示されています。詳しくはこちらをどうぞ。


Photo: 山本勇磨
Image: Media Ambition Tokyo 2018
Source: Media Ambition Tokyo(1, 2, 3)

(山本勇磨)