「開会式」(NHK)の視聴率28.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を皮切りに、フィギュアスケート男子フリー(NHK)が33.9%、「女子団体パシュート決勝」(日本テレビ系)が23.3%、「スピードスケート女子500メートル」(TBS系)が21.4%と、日本選手が金メダルを獲得した中継で高視聴率を連発。その他も「女子スキージャンプノーマルヒル決勝」(NHK)が24.8%を記録したほか、女子カーリングも放送されるたびに高視聴率をたたき出すなど、平昌五輪のテレビ中継が盛り上がっています。

 しかし、報道されるのは、そんな華々しい高視聴率だけではありません。連日ドラマの低視聴率に関する厳しい報道がネット上に飛び交っているのです。平昌五輪の放送期間中、「アンナチュラル」(TBS系)が9.0%、「もみ消して冬 〜わが家の問題なかったことに〜」(日本テレビ系)が7.1%、「きみが心に棲みついた」(TBS系)が6.9%、「海月姫」(フジテレビ系)が5.0%、「anone」(日本テレビ系)が5.5%、「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系)が4.6%と、それぞれ最低視聴率を更新しました。

 最低視聴率を記録した理由は、単に「面白くないから」というより、「この日は平昌五輪のほうが興味を引かれた」、または「録画したから」のどちらかでしょう。ドラマは元々、録画率が高く視聴率が抑えられる傾向にあり、それが平昌五輪の中継によって顕著になったという見方が自然なのです。

 しかし、「平昌五輪閉幕後の残り1カ月間で再浮上できるかどうか」は別の話。25日の閉幕後、視聴率だけに関わらず、話題を集める作品はどれなのでしょうか。

最も結末が気になるのはラブストーリー

 まず注目したいのは、終盤に強いジャンルはどれなのか。

 最も強いのは、視聴者に「主人公の恋は成就するのか」「ハッピーエンドが見たい」と思わせるラブストーリー。その点、王道の三角関係を描いた「海月姫」と「きみが心に棲みついた」は、終盤に向けて話題を集めるとともに、最終回の放送時はSNSでのコメントが増えるでしょう。

 また、「隣の家族は青く見える」も、不妊治療に挑む夫婦がどんな結末を迎えるのか、注目必至。すでに「ヒロインの深田恭子さんが幸せになる姿を見たい」という応援にも似た声が上がり始めているだけに、視聴率とは別次元の盛り上がりが期待できそうです。

 一方、法医学ミステリーの「アンナチュラル」とホームコメディーの「もみ消して冬」は、ジャンルこそ異なりますが、一話完結というドラマの構造は同じ。一話完結型の作品は、「一話見逃しても影響しない」「終盤もそれほど内容が変わらない」ため、元々五輪の影響を受けにくく、終盤の盛り上がりも限定的になりがちです。

 制作サイドとしても、「他の番組に左右されない安定感があるから、平昌五輪開幕前の視聴率には戻るだろう」というのが既定路線。今後シリーズ化を狙っていくのなら、無理に盛り上がりを作るよりも、一定の人気をキープしたまま終わるほうがよいのです。

 これは同じ一話完結型の「99.9%-刑事専門弁護士-」(TBS系)や「BG〜身辺警護人」(テレビ朝日系)も同様。視聴者自身、次のシリーズも視野に入っているためどこか冷静であり、だからこそ高視聴率をキープしているのです。

「最終回で謎が明かされる」作品に期待

 まったく未知数なのが「anone」。そもそも同作の持ち味は、「ドラマのジャンル自体が何なのか」明らかでない不思議な世界観であり、視聴者は「どんな終盤を迎えるのか」「どんな結末を期待すればいいのか」、分かっていないのです。

 それこそが同作の脚本を手がける坂元裕二さんの真骨頂。坂元さんは1年前に放送された「カルテット」(TBS系)でも、最後まで結末がイメージできない物語を続け、視聴率こそ低迷しましたが、視聴者・識者の双方から絶賛を集めました。「anone」は同作よりさらに難解なだけに、「最後まで熱狂的なファンだけで盛り上がった」という作品になるかもしれません。

 前述したように、やはり終盤に強いのは、「追いかけてきたテーマの答えが最後に出る」「最終回で謎が明かされる」タイプの作品。その意味では、主人公の復讐劇を描いた「FINAL CUT」(フジテレビ系)、キスでタイムリープするという謎が解き明かされそうな「トドメの接吻」(日本テレビ系)にも期待できそうです。

 最後に、見逃されがちなこぼれ話を一つ。ネットメディアの視聴率に関する記事は、なぜ「低視聴率」や「ドラマ」がテーマのものばかりなのでしょうか。バラエティーや情報番組の視聴率が報じられるのは大型特番の時が大半で、日ごろ書かれるのはドラマばかりであり、しかもたたかれてばかりなのです。

 その理由は、「録画視聴率を掲載しない」という姿勢を見る限り、「報じるべきデータだから」という前向きなものではなく、「ページビューが稼げるから」という利己的なもの。視聴率に関する記事は、ビデオリサーチ社のデータを掲載するだけで記事化するのが簡単であり、責任も負わず、特に低視聴率に関してはページビューが稼げるようです。

 そんな厳しい状況の中、一つでも多くのドラマが終盤に向けて盛り上がることを心から願っています。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)