2月7日の「Tリーグ」参加チーム発表記者会見の様子。左から藤重貞慶理事長、丹羽孝希選手、早田ひな選手、松下浩二専務理事(編集部撮影)

「世界一のリーグを目指しています。世界のトップの選手達を集めたいですね」

2月7日に開催された「Tリーグ」理念・ロゴ・参加チーム発表会の場で一般社団法人Tリーグの松下浩二専務理事は熱く宣言をした。松下氏は1993年に日本人初の卓球プロ選手としてヨーロッパのプロリーグで活躍し、現役引退後はTリーグの実現に向けて先陣を切って取り組んできた。

卓球への期待感が近年高まっている

2016年のリオデジャネイロ・オリンピックや2017年の世界選手権でのメダル獲得ラッシュや若手選手たちの活躍などで日本国内での卓球人気は加熱し、2年後に迫った東京オリンピックに向けての期待感が高まっている。

現在日本人選手たちは世界のトップクラスの選手たちと戦うべく、中国、ドイツ、ロシアなどのプロリーグに参戦して腕に磨きをかけている。


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だが、日本国内に世界レベルのリーグはない。自国のリーグで育成を強化して卓球界全体を盛り上げて成長産業にすることがTリーグ設立の目的でもある。

日本のプロスポーツリーグは、プロ野球のセ・パ両リーグ、サッカーのJリーグ、バスケのBリーグがある。これらのリーグに次ぐ新たなプロリーグ誕生となる。

今年10月に開幕が決定した国内初の卓球プロリーグ「Tリーグ」は、2010年3月に「日本卓球リーグ発展プロジェクトチーム」が立ち上がりリーグの実現に向けて着々と準備が進められてきた。

2016年12月に日本卓球協会で「Tリーグ」の設立が承認されると、2017年4月に一般社団法人Tリーグが設立された。公益社団法人日本卓球協会の藤重貞慶会長が理事長に、松下氏が専務理事に就任し、リーグ開幕に向けて動きを加速している。


会見で話した松下専務理事(編集部撮影)

Tリーグ参入の主な条件は、

入会金2000万円
年会費1500万円
年2億〜3億円の収支がある事業性であること
チーム名に地域を入れる(企業名の併記は可能)
2千人規模のホームアリーナがあること
登録選手の中に世界ランク10位相当の選手を1人入れること
6歳以下の育成機関があること

となっている。昨年9月15日、「Tリーグ」参入チームの募集を開始すると、すぐに水谷隼選手や張本智和選手の契約先である木下グループが男女2チームで参入申請を表明した。募集は11月末まで行われ、今回参加が決定したのは、次の8チーム。

男子は、木下グループ(東京)、チーム埼玉、チーム岡山、琉球アスティーダ(沖縄)で、女子は木下グループ(神奈川)、日本生命(大阪)、日本ペイントホールディングス(大阪)、トップ名古屋だ。

今年の10月からに半年に渡って開催される初年度の「Tリーグ」は、男女各4チームによるトップクラスの「Tプレミア」が実施される。試合数は7回戦総当たりで各チームがシーズン21試合のリーグ戦を行い、上位2チームによる優勝決定戦を行う予定だ。

Tリーグの最上位に位置するTプレミアリーグは、サッカーのプレミアリーグや野球のメジャーリーグのように、世界中からトップ選手が集まるリーグにしたいという野望がある。卓球の強豪国である、欧州のドイツ、アジアの中国のトップ選手もTリーグに参戦可能だ。たとえば、中国のスーパーリーグとも開催時期をずらしていることから日本人選手と、海外選手がTリーグの舞台で戦うことのできる「世界一を目指すリーグ」(松下氏)に向けた土壌は整えつつある。

トップクラスの選手をいかに集めることができるか

「参加チームが決定したので、(チームが)選手にアプローチをかけて契約すると思います。」と松下氏が言うように、選手の所属先はこれから決定するが、チーム数が限られているため早めに決まる見通しとなっている。各チームは、日本人トップクラスの選手たちや世界トップクラスの選手がいる中国側へは積極的に接触をしていくとのことだ。

発表会には、リオオリンピック卓球男子団体で銀メダルを獲得した丹羽孝希選手(スヴェンソン)と、1月の全日本卓球選手権の女子ダブルスで「みまひな」ペアとして伊藤美誠選手(スターツ)とともに優勝した早田ひな選手(日本生命)がゲストとして訪れた。

丹羽選手は「国内で世界のトップ選手達と戦える機会が今までなかったので凄く楽しみです。リーグで力を付けてリオでは銀メダルだったので次は金メダルを目指して頑張っていきます」と話し、早田選手は「沢山の方に観戦していただいて卓球の面白さを知っていただきたいと思います。リーグに参加してもっともっと強くなって東京オリンピックで団体と個人で金メダルを獲れるように頑張りたいと思います」と意気込んだ。


記者会見の会場にかけつけた丹羽選手(左)と早田選手(右)(編集部撮影)

そして、会場には張本智和選手からビデオメッセージも届いた。「Tリーグが始まることは僕たちの世代にとってもとても嬉しいことです。僕自身も参加できたらもちろんプレーしたいと思います。リーグで卓球の面白さを知ってもらって日本の卓球がもっと盛り上がってくれたら最高です。」現在、張本選手は木下グループと契約をしているが、Tリーグに正式に参加するかは未定である。前出の丹羽選手もスヴェンソンが参加チームにないため、どのような形で参戦するかは現時点では決まっていない。

これまで日本の卓球界を40年も支えている国内最高峰の日本リーグとの共存もまた不可欠である。Tリーグはリーグ開幕に向けて日本リーグへ参加打診をしているが、2020年まで日本リーグを継続予定で正式な参加は2021年となる見通しだ。

女子の日本生命は日本リーグから離れTリーグへの参戦表明をしているが、日本リーグとTリーグが互いに協力することでより高いレベルのリーグとなれば卓球界全体が盛り上がるはずだ。2021年以降も期待をしたい。

「卓球の最近の盛り上がりが凄いので、少しでも沢山の人にTリーグを知ってもらうためにも地域に根差した企業活動を行っていく必要があります。Tリーグを通じて何かできないかということで参加をしています。やるからには全力で協力したいです。」と参入チームの関係者は言う。

多少見切り発車的なところもあるかもしれないが、日本人選手のリオオリンピックなどでのメダル獲得ラッシュや東京オリンピック・パラリンピックに向けての流れを考えると今がまさにチャンスである。

今後の展望はどうなるのか

Tリーグは理念で掲げているように、世界ナンバーワンの卓球リーグの実現を目指している。そのためには世界トップクラスの選手たちが参戦するのはもちろんのこと、チーム関係者、観客、ファンなど多くの人を巻きこむことが必要であるし、どこまで卓球ブームに火を付けることができるのか注目したい。

トップ選手の参戦を起爆剤に、将来的にはTリーグと参入チームが関わる自治体、地域と連携を組み、社会貢献活動や卓球教室の開催などを通じて卓球に興味を持つ機会を増やすことができれば、固定ファンを獲得して老若男女どの世代もが楽しめる卓球環境となるはずだ。

「卓球は健康的なスポーツであります。卓球をやることにより動体視力を養い脳の神経が発達し反応が速くなります。ボケの防止にもなり、足腰を鍛えて動くので非常に健康です。現役選手で最高年齢が93歳の方もいますし、卓球を国民的スポーツにしたいですね。」と藤重理事長が説明するように、卓球の普及が成功すれば健康寿命の延伸が期待され豊かな人生を楽しむことも可能となる。


会見で今後のビジョンを話した藤重理事長(編集部撮影)

Tリーグが開幕する10月まで時間はない。各チームの選手決定、試合会場選び、観客動員、リーグスポンサー獲得、テレビ中継、地域貢献事業など解決すべき課題がまだまだ多いように思えるが、松下氏の表情は明るい。

「Tリーグは開かれたリーグなので、日本リーグと一緒になって盛り上げていけると良いですね」(松下氏)

日本卓球界で初めてのプロ選手となって海外のプロリーグで戦ってきた1人の侍は、日本が世界一の卓球大国となるための道筋を作り、挑み続けている。

Tリーグ成功の鍵は、松下氏の腕に掛かっているといっても過言ではない。