浅草は遠い。普段、城南地区で遊んでいる大人たちにとって、浅草という街は物理的距離というハードルがある。しかし、そのハードルを逆手に取るのも一興!

東京随一のグルメがあることはわかっている!ならばその道中をいかに楽しむかがキーとなる。

そこで今回は船にゆられながら浅草へ向かうという水上バスデートプランを提案!とあるマンネリカップルの心情を元にストーリー形式で紹介する。



いつからか、週末のデートがありふれた日常になっていた。付き合いたての頃は、待ち合わせ直前に何回も鏡をみなおすような高揚感を覚えたものだ。

そして、彼が選んでくれるステキなお店で乾杯。シャンパンの美味しさが女心にしみた。そんな幸せにも慣れて早5年。

彼は変わらずいいお店に連れていってくれる。東京には名店が山ほどあるから、恋人だけど美食仲間みたいな関係にもなり最近は食べてばかり。贅沢なマンネリだ。



今年で私も33歳。友達の結婚報告がLINEでくる回数も増え、今日もまた爐めでとう!〞を即レスすれば、否が応にも自分の将来も考える。

そんな私の気持ちをつゆ知らず、銀座で落ち合った彼は今日も爽やか。

「どこ行くの?」と聞くと、「とりあえずタクシーに乗ろう」とごまかされ、クルマは汐留方面に向かった。



浜離宮で停車すると、そのまま浜離宮入園!?

園内を10分ほど散歩し、辿り着いたのは、まさかの船着き場だった。

電車の切符を買うように、彼は浜離宮発、浅草行きの水上のバスチケットを買った。



“道灌(どうかん)”という名の1920年代のアメリカをイメージしてデザインした船。2階建ての後部にはデッキベンチもあり、3箇所の違った眺めを楽しむことができる


浅草って地下鉄で行くものだと思っていたから、水路というのが新鮮すぎる。

そもそも、浅草に行くこと自体が久しぶりだ。

2階建ての船内に入ると、意外や内装がクラシックで趣がある。



いよいよ出航し、すぐに東京タワーとレインボーブリッジが一度に見えて、はしゃぎながら写真を撮った。

5分後には勝どき橋をくぐる瞬間がやってきた。2階席のガラスの天窓越しに橋の裏側が見えて迫力満点だ。

グーグルマップを開けば現在地が川を北上していて、それも初めての体験。船はいくつもの橋をくぐり、日本橋浜町や両国を進んでいく。


彼が予約を入れたのは昭和初期創業の老舗鳥料理店



船から見える東京の街並みはいつもの東京と印象が異なり、私たちに旅に来ているような刺激を与えてくれた。

キラキラ輝く水面も美しく、カモメやサギなど普段見ることのない鳥も見られた。

徐々に近づくスカイツリーを隣に、ふと彼が「水辺のマンションもありかもね」と言った。その発言にドキッとしていたらもう浅草で、最後に赤い吾妻橋を目前に船は岸に到着した。



浅草に降り立った途端、気持ちが高鳴る。どちらともなく「散歩しよう」ということになり、観光気分で浅草を歩いた。

身体が少し冷えた頃、辿り着いたのは、『鳥多古』という一軒家の店。



最初にわりしたを鉄鍋に入れて沸騰した後、手羽先を投入。手羽先の旨味が出たら、主役の鳥もも肉の団子を煮込み始める。その旨みをまとった〆のうどんも絶品。たたき鍋コース(¥5,720)要予約


「ここの鳥たたき鍋が美味しそうでさ」と彼は言い、実際に鉄鍋で食べる鳥の団子は絶品!

情緒溢れる店で女将さんと話す彼を見て、なんだか安堵感を覚えた。

それは、爐海Δい人は滅多にいない〞と、付き合いたての頃の気持ちを思い出した瞬間でもあった。



TOKYO CRUISE

東京都観光汽船が運行する水上バスは、浜離宮と浅草をつなぎ、日の出桟橋やお台場海浜公園行きの船もある。浜離宮から浅草までは約50分。乗船は出航の5分前。チャーターも可能で、春には隅田川沿いに咲く桜を眺められる、お花見船もある。

中央区浜離宮庭園1-1(浜離宮営業所)
0120-997-311
10:35〜16:05
無休(天候により欠航や時間変更あり)
大人ひとり¥740
http://www.suijobus.co.jp



『鳥多古』

名物の鳥たたき鍋は昭和初期の創業時から変わらず提供。鉄鍋に、鳥もも肉をミンチして作った団子を入れ、甘めのわりしたで仕上げている。その絶品団子を久慈の生卵にくぐらせて食べれば、旨みを卵のコクが包み、牛鍋にも負けない満足度がある!