デイリ−NKジャパン

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カナダは過去5年間に、北朝鮮出身の難民申請者165人を国外追放したと米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

カナダ国境サービス庁(CBSA)は、VOAの取材に対して、国外追放処分を下した北朝鮮出身の難民申請者の数は、2013年に17人、2014年に71人、2015年に44人、2016年に24人、2017年に9人の合計165人で、いずれもすでにカナダから出国していると明らかにした。また、95人の北朝鮮出身の難民申請者が、国外追放と関連した審査を受けているとも明らかにした。

一方、アルジャジーラは19日、脱北者の活動家の話として、カナダが追放した脱北者は2000人にのぼると報じたが、これについてCBSAは「引用した数値の出処がわからない」と否定している。

カナダは2012年12月に、安全が保証された国の国民が難民申請をできないようにする制度を導入し、2013年5月末から韓国をその対象とした。これにより、脱北して韓国に定着した後に、カナダに難民申請をした人々が受け入れの対象外となった。

そして、韓国国籍を取得したことを隠して難民申請をしたことが判明し、国外追放される人が相次ぐようになったのだが、この措置は新たな人権侵害を生んでいる。

前述のアルジャジーラのインタビューに応じた脱北者キム・テグン氏は、4人の子どものうちカナダで生まれた2人だけがカナダ国籍を持っているため、国外追放により家族が生き別れになる危機に瀕している。このようなケースは他にもあると思われる。

カナダ脱北人総連合会は昨年末、カナダ政府に対して集団で嘆願書を提出している。その中で「獣以下の奴隷生活を強い、人権を蹂躙する北朝鮮独裁政権に抗って脱北したが、韓国でも定着できずさまよう脱北者が多い」と説明した上で「10年前からカナダに定住し、2世(子供たち)もカナダでの生活に適応しているのに、分断国家の特殊性を考慮せず、カナダ政府は政治的利害により脱北者の強制追放という基準を振りかざしている」とカナダ政府を批判した。

(関連記事:在カナダ脱北者の間で広がる「国外追放」への懸念

カナダは元来、難民受け入れに積極的なことで知られている。公共放送CBCによると、2017年の1月から9月までの難民申請の認定率は70%に達し、過去5年で最高を記録した。また、州によってはこれより高い数字も出ている。それもあって、多くの難民がカナダに入国する。

カナダ政府の統計によると、2017年の1年間で2万593人が難民申請を行った。その多くが祖国の紛争から逃れて米国に到着したが、トランプ政権が難民の受け入れに消極的であることから、国境を越えてカナダのケベック州に密入国した人々だ。

ニューヨーク・タイムズによると、年間2万4000件の処理能力を遥かに超える4万700件の難民申請が出されているため、申請者は審査を受けるまで、平均16ヶ月待たされる状況だ。また、モントリオール市は、殺到する難民を収容するためにオリンピックスタジアムに1500台のベッドを設置し、シェルターとして使用するなどの対応に追われている。

カナダの脱北者に対する「冷遇」には、このような背景があるものと思われる。