人の所在地や移動距離を知るにはGPSを使う方法がありますが、GPSが利用できるのは衛星の電波が届く範囲に限られます。GPSに頼るのではなくセンサーを利用して位置情報を得る方法も存在しますが、低価格のシステムでは正しい計測ができないのがこれまで欠点とされてきました。そんな中、ユタ大学の院生が、靴底に仕込んだセンサーを使って低価格であっても正確に位置情報を取得できる装置を開発しました。

Accurate Navigation Without GPS - IEEE Spectrum

https://spectrum.ieee.org/tech-talk/transportation/sensors/accurate-navigation-without-gps

この装置は国際固体素子回路会議(ISSCC)で発表されたもの。ユタ大学の研究チームはジャイロスコープ・磁気計・加速度計の3つを含む慣性計測装置(IMU)をベースとしたナビゲーション・システムを構築しました。ハイエンドのIMUは飛行機のパイロットのナビゲートにも使われていますが、ユタ大学のエンジニアであるDarrin Young氏はよりポータブルなIMUを開発したいと考えたとのこと。ただし、小さなIMUは正確な計測を行うことが難しく、「じっと座っている時、これらの装置は0という値を示すべきです。しかし、イスに座ってから5〜10分が経過すると、低価格なIMUは『数百メートル移動した』と認識する可能性があります」とYoung氏は語っています。

Young氏が大学院生のQingbo Guo氏に「センサーで測定を続ける方法を考えてほしい」と頼んだところ、Guo氏は生体力学を使った解決方法を提示してきたそうです。

人間が歩く時、かかとは100ミリ秒ほど地面に固定されます。この一瞬の「静止」を利用することで、IMUのはじきだす間違ったデータを修正することができるとGuo氏は考えました。つまり、1歩踏み出すごとに計算する位置計算をリセットすることで、IMUが示す「誤ったモーション」を修正するという仕組みです。

Guo氏は歩を測定するためのMEMS圧力センサーをIMUと共にブーツの靴底に設置。靴底に入れるという設計上、いくつかのセンサーは壊れることを考慮して、Guo氏は1000個のセンサーが必要になると見積もりました。そして、IMUが示すデータと圧力センサーのデータを統合するためにカスタム回路を作り、必要なアルゴリズムを準備しました。プロトタイプではカスタム回路はブーツ側面のプリント基板の上にとりつけられたとのこと。外側に基盤をとりつけたのはデバッグ時のアクセスを簡単にするためであり、ブーツの靴底や内側に設置することも可能だといいます。

Guo氏はIMUが仕込まれたブーツを履き、システムをバックパックの中に入ったノートPCにつなげ、テスト歩行を開始。ブーツの構造と実際に履いて歩いている様子は以下のような感じです。



ソルトレイクシティを3kmにわたって歩き回るというテストを10回行い、GPSデータと比較したところ、最大エラーはわずか5.5mでした。加えて、Guo氏はゴールデン・ゲート・パークでより長い距離のテストを行っています。



長距離のテストの結果、システムは土地の種類に関わらず機能することが示され、「パフォーマンスはGPSに匹敵します」とGuo氏は語っています。