息子3人と娘1人を東大理科三類に合格させた佐藤亮子さん

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 受験シーズンもいまがたけなわ。私立大入試は大詰めを迎え、今月下旬に国公立大入試が控える。そんな時期だが、まだ合格していない受験生をめぐり、一部で天と地をひっくり返したような騒ぎになっている。

 それは2月7日、東京大学が発表した「第1段階選抜合格者の最高点・最低点及び平均点」のなかの、とある数字をめぐってのことであった。

 東大は毎年、各類ごとに志願倍率が一定を超えると、センター試験の点数で“足切り”を行う。それが「第1段階選抜」だ。その通過者のセンター試験の最低点、つまり“足切り点”と一緒に最高点も発表されたのだが、理科一類の志願者の最高点が900点、すなわち満点だったのである。

「限りなく満点に近い点数をとった受験生は過去にもいましたが、満点は記憶にありません」

息子3人と娘1人を東大理科三類に合格させた佐藤亮子さん

 大手予備校は異口同音にそう言い、大学通信の安田賢治常務取締役も、

「どんなに優秀でも、センター試験で満点をたたき出した子はいませんでした」

 と脱帽。受験生の間でも、

「満点とかヤバすぎる」

 と、まるで同世代がノーベル賞でもとったかのような驚きようである。

センター試験の仕組み

 だが、満点がいかに快挙であるかを掘り下げる前に、今年は1月13日、14日に実施され、約55万人が受験したセンター試験について説いておきたい。

 正式名称は大学入学者選抜大学入試センター試験で、1990年に初めて実施された。しかし、高校の指導要領に沿った基礎的な内容が出題され、全問をマークシートで答える、といえばピンと来ないだろうか。要は、79年から89年まで実施された共通一次試験のマイナーチェンジ版である。

 ただ、共通一次は、ほぼ国公立大学の志願者のための試験だったが、センター試験は私大も利用でき、実際、8割の私大がこれを利用した入試を実施している。また国公立大も、大学ごとに受験生に課す科目を設定できるなど、より柔軟に運用されているが、国公立大学にとって、1次試験であることに変わりはない。

 さて、東大の場合、文科一、二、三類では、国語200点、数学IA100点、数学IIB100点、英語200点、社会2科目100点ずつ、理科100点の900点満点。理科一、二、三類では国数英は文類と一緒で、ほかに理科2科目100点ずつ、社会1科目100点が課される。ちなみに英語は、さらにリスニングが50点分あるが、東大では加算されない。

「精神年齢の高い子では」と佐藤さん

 とまれ、そこで満点が出たのだ。息子3人と娘1人を東大理科三類に合格させた佐藤亮子さんも、

「私が知るかぎりの最高点は891点。娘の理三の同級生に、これだけとった子がいて、入学後に噂になったそうですが、900点満点は初めて聞きました」

 と、驚きを隠さない。

「センター試験は2次試験にくらべ、問題自体は簡単です。とはいえ、すべての科目でミスなく、漏れなく、パーフェクトにこなすなど、普通はできません。特に満点をとりにくいのは国語と社会。国語には、どれが筆者の意図なのかを選ぶ問題があり、自分の主観を排して書き手の意図を客観的にとらえる必要がありますが、まだ、社会経験が浅い受験生は、主観に頼って誤った選択肢を選んでしまいます。つまり国語を完璧にこなすには年齢的な難しさがあって、満点をとった子は、大人のように一歩引いて物事を見られる、精神年齢の高い子だと思います」

 では、社会はどこが難しいのか。

「教科書に載ってはいても、小さな註でしか触れられていないような、マニアックな問題も若干混ぜて出されます。満点をとった子は細かいところまで、ていねいに網をかけるように仕上げてきたのだと思います」

 そして、こう総括する。

「ミスなく漏れなくパーフェクトにこなせる勉強をしてきた、精神力の強さがすごい。普通は苦手な科目で手を抜くなど、どこかで逃げてしまうものです。また、東大入試はセンター試験のウェートは低いので、多くの子は“この辺りでいいだろう”と、途中で見切りをつけます。満点をとった子は逃げずに、見切りもつけずに、正確性を追求してきたのでしょう」

果たして2次試験は…

 センター試験のウェートが低い、という話が出たが、事実、550点満点で競われる東大入試で、センター試験が占める割合は5分の1にすぎない。つまり、900点満点のセンター試験を110点に圧縮し、深い思考力が問われる記述式の2次試験との合算で合否が判定されるのだ。

 今年、センター試験で満点をとった受験生が志願する理科一類は、数学120点、英語120点、国語80点、理科2科目120点と、計440点の2次試験が課せられる。だからセンター試験が900点満点でも、平均点近くの800点前後の生徒とくらべ、12点ほどのアドヴァンテージがあるにすぎない。しかし、

「たしかにセンター試験と2次試験は質が異なるので、センターがよかったから2次もいいとはかぎりません。でも、センター試験でここまでとれる子が、2次対策をいい加減にやってきたはずがないでしょう」

 と佐藤さん。さる大学受験塾の講師も、

「センター試験で満点近くとれるほど基礎力が盤石な生徒に、応用力が足りなかったというケースは聞いたことがない」

 と話すのである。

「週刊新潮」2018年2月22日号 掲載