小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)

写真拡大

業態を変えながら成長を続ける会社と、あれこれ手を出して失敗する会社の分かれ道は、どこにあるのでしょうか。中小企業の経営コンサルティングなどを手がける武蔵野の小山昇社長は、「社長が『あれもやりたい』『これもやりたい』では、会社はダメになる。『やらないこと』を先に決める社長がいい社長」と説きます――。

※本稿は小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)の第2章「右肩上がりの経営を行なうための10の口ぐせ」の一部を再編集したものです。

■ほかの業界の成功事例を取り入れる

「今と同じやり方」「今と同じ考え方」「今と同じ人」を捨てて、「新しいこと」を取り入れなければ、会社を変えることはできません。

そう言うと、多くの人が「誰もやっていないこと」をやろうとしますが、それは間違いです。ここでの「新しいこと」とは、「誰もやっていないこと」の意味ではなく、「他社は成果を出しているが、自社がまだやっていないこと」「他業界では常識でも、自分の業界ではまだ常識になっていないこと」「すでにあるものの組み合わせを変えること」です。

会社に変化を起こすには、今までの考え方や常識を捨てて、「業界の非常識(ほかの業界の成功事例)」を積み上げていく必要があります。他業界でうまくいっていることを、自分の業界で最初に実行する。サービス業なら、製造業で常識となっていることを自社に転用する。製造業なら、エンタテインメント業界で成果の出ている取り組みを取り入れる。これが大事。

ライバル企業と同じことをしていては、差は縮まりません。同業種の場合、どうしても既存の枠組みから抜け出すことができないのです。

■「真似」は最高の創造かつ最高の戦略

武蔵野が伸びているのは、業界の非常識を、社内に取り入れているからです。

私は、自称「パクリの天才」です。これまでにも「『株式会社武蔵野』の正式名称は、『株式会社盗品見本市』」と冗談めかすくらい、他社の真似ばかりしてきました。わが社のしくみは、100%どこかの真似であり、自社で考えたものは、何ひとつありません。

個性が尊重される時代にあっては、「真似すること」は「恥ずかしいこと」だと思われがち。「独自性で勝負することが正しい」と考えられています。ですが、私はそうは思いません。とくに中小企業は、真似することが正しいことなのです。

「学ぶ」は「マネぶ」。真似は最高の創造であり、真似は最高の戦略です。愚直に真似をして3年も続けたら、それはもうオリジナルです。

多くの会社が、0から1を生み出そうとします。ですが、経験や実績が不足しているために、結局は「1」を生み出すことはできません。だとしたら、すでにでき上がっている「1」を真似るほうが近道です。独力で頑張って成果を出せないより、「人に聞きながらでも成果を出すほうが正しい」と私は思います。

■「お客様」と「ライバル」だけがマーケットにいる

「会社の仕事を誰に教わりましたか?」と質問すると、多くの人が「上司」と答えます。

ではその「上司」は誰に仕事を教わったのでしょう? 「上司の上司」でしょうか? では「上司の上司」は誰に仕事を教わったのでしょう? 「上司の上司の上司……」?

違います。私たちが仕事を教わるのは、「上司」でも「社長」でもありません。正解は、「マーケット」です。そしてそのマーケットには「お客様」と「ライバル」しかいません。

「お客様」は、会社にとって「一番大切な人」であり、「ライバル」は、「なんとしても勝たなければいけない相手」です。

「リンゴを50、梨を100売る」計画を立てたとします。ところが実際は、「リンゴが80」も売れましたが、「梨が30」しか売れませんでした。

このような場合、多くの会社は、「梨」の売上を伸ばそうとしますが、お客様が欲しいのは「梨」ではなく「リンゴ」であることは明らかですよね。

「お客様の声に合わせて自社を変える」。この原理原則がわかっていれば、リンゴを「さらに売れる」ように梨にかかった経費を追加して販促し、梨は「成り行きで売る」ように変更するのが正しい対策です。

「ブラウス」を売ろうとして売れなかったとき、「じゃあ、今度はパンツを売ろうか」と勝手な臆測で動いてはいけません。「どうしてブラウスを買わなかったのか」、お客様に正解を聞いてみる。そのとき「欲しい色がなかったから買わなかった。ピンクがあれば買った」という答えを得たのなら、「ピンク色のブラウス」を売るのが正しいのだとわかります。

■ライバル会社は、自社の不足を教えてくれる存在

お客様からの注文が来なくなったら、それは「ライバルにお客様を取られた」ということです。

例えば行きつけの居酒屋に飲みに行き、店主とけんかしたとします。そうなれば、二度とその居酒屋には行かなくなるということはあるでしょう。

ですが、二度と居酒屋に行かなくなるかというと、そんなことはありません。ほかのお店で飲むはずです。

ダスキンのマットを扱うわが社の場合で考えると、マットを使っているお客様が解約したら、そのお客様はもうマットを使わないわけではありません。「解約」と聞くと、「このお客様は、もうマットは使わない」と決めつけてしまいがちですが、実はライバル会社のお客様が、1件確実に増えているということにほかならないのです。

ここで大切なのは、「ライバル会社は、お客様を奪いながら、サービスの不足を教えてくれている」と認識することです。

武蔵野の経営計画書に「ライバルに関する方針」と「お客様に関する方針」があるのは、現場の事実(数字)に基づいた経営の見える化をしているからです。「お客様」と「ライバル」は、こちらの都合に合わせてはくれません。だから武蔵野では、その変化を察知して経営計画書を毎年書き換えています。

■「やりたいこと」を優先してしまうのはダメ社長

多くの社長は、「あれもやりたい」「これもやりたい」という思いをたくさん持っていますが、「やりたい、やりたい」という「思い」ほど、「重い」ものはありません。経営計画書に、さまざまな「方針」を盛り込むと、社員は「放心」状態になってしまうでしょう。

社員に「社長の思い」を浸透させたいなら、「やりたいこと」ではなく、むしろ「やらないこと」を明確にすべき。「やらないこと」をはじめに決めると、自分のテリトリーが見えてくるのです。

現在の武蔵野が「同じお客様に繰り返し向き合う仕事」と「こちらから訪問する仕事」しかやらないのは、「製造業はやらない」「店舗を持たない」と「やらないこと」を決めたからです。

社長に就任して3年目のとき、他社に先駆けて提案型の営業ビジネスを立ち上げたことがあります。「クリエイト」という事業です。

ところが結果は大失敗。2億8000万円投資をして、売上は3000万円。それだけでなく、事業を撤退させるのに、銀行から3000万円の借入を受けました。

失敗の原因は、市場ができていなかったことです。ライバルがいない代わりに、軌道に乗るまでにどのくらいの期間を要するかも読めない。当時のわが社の体力では、リスクが高すぎる事業でした。

この失敗から学び、私は「やらないこと」を決めました。

今はもう「一度売ったらそれでおしまい」というビジネスにも、「ライバルのいないビジネス」にも手を出しません。武蔵野は、「同じお客様に、同じ商品を、定期的に、繰り返し売るビジネス」にリソースを集中させて成功しているのです。

■鉄砲ではなく、弾を売るビジネスを目指す

ビジネスモデルには、大きく分けて2つあります。「鉄砲」を売るビジネスモデルと、「弾」を売るビジネスモデルです。「鉄砲」は、一度手に入れたら、通常はしばらく購入しません。2丁め以降を買うのは、持っている商品が劣化したときや、新機能のモデルが欲しくなったときの買い替えです。単価は高いが、次の購買につながりにくい。したがって、常に新規顧客を獲得しなければなりません。

一方で、「弾」は消耗品です。鉄砲を買った人は必ず弾を使い、鉄砲を利用し続ける限り、補充します。したがって、弾を扱うビジネスは、同じお客様に、同じ商品を、定期的に、繰り返し販売することができます。「鉄砲は売らない、弾を売る」が、利益の安定するビジネスモデルと言えます。

儲かるしくみをつくりたいなら、はじめにテリトリーを絞り込んで(やらないことを決めて)、メインの事業を明確にしたほうが得策です。

自分の身の丈を考えて「やらないこと」を決めると、むやみに事業の間口を広げることがなくなります。そして、自社の強みを生かした仕事ができるようになります。

他社の真似ができない。お客様とライバルに学ぶことができない。やりたいことを優先している……。業績を出せない“ヤバイ会社経営”にみられる傾向は、プライドが高く独創性を叫ぶばかりのこんな社長がいることなのです。

----------

小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野社長 1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー(現在の武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に武蔵野に復帰。1989年より社長に就任し、現在に至る。主な著書に「社長の決定シリーズ」の『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『右肩下がりの時代にわが社だけ「右肩上がり」を達成する方法』(すべてKADOKAWA)などがある。

----------

(武蔵野社長 小山 昇 写真=iStock.com)