イスラエル発交通アプリ「Moovit」が扱う世界1500都市のビッグデータ

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日本以外の世界の国々では、バスや電車など公共交通機関の時間の正確さや情報に期待できない国が多い。そんな中で急成長しているのが、イスラエル発の交通ナビゲーションアプリ「Moovit」だ。わずか5年間で1億ユーザーに達し、これはグーグルに2013年に11億ドル(約1200億円)で買収されたWaze(ウェイズ)とほぼ同じ数字である。今後の成長の鍵となるのは、収集した交通移動に関する大都市のビッグデータを彼らがどう扱うかだ──。

サンフランシスコから東へ50km弱、カリフォルニア州ダンウィルに住むピアノ教師のジャニス・モンコウスキーは、典型的な郊外居住者だ。普段の生活に自家用車を使う彼女は、これまで公共交通機関の利用など考えもしなかった。「テクノロジー恐怖症」を自認する彼女だが、最近「Moovit(ムービット)」との出会いが彼女を変えた。

サンフランシスコでの友人との待ち合わせや、クラシックコンサートの開始時間に間に合うように夫と出かける際、このアプリがバスや電車を使った移動プランを教えてくれる。「ムービットは駅に向かうバスに乗るための停留所、そこまでにかかる徒歩の時間を教えてくれる。路線バスに乗ったのは10年から15年ぶりだと思う」とモンコウスキーは言う。

サービスを無料で利用できる代わりにムービットは利用者の移動履歴を追跡する。車のドライバーに最適な経路を教えてくれるナビゲーションアプリ「ウェイズ」と同様、利用者のロケーションデータを収集、周辺のアプリ利用者への公共交通機関を使った2点間の最適な移動手段の提示に利用する。

「公共交通機関の利用者はドライバーよりももっと困っていると思う」。イスラエル出身のシリアル・アントレプレナーでムービットを2012年に共同創業したニア・エレズ(52)は言う。「待っているバスの正確な到着時間も分からなければスムーズな乗り継ぎ方法も分からず、また徒歩や自転車の方が早いかどうかも判断がつかない」。エレズはテルアビブの自宅で取材に答えた。「だいたいは、情報がよくないんだ」。

ムービットは日本語を含む44か国語78か国に対応し、北米の各都市をはじめ、ロンドン、モスクワ、ハノイまで世界1500都市のユーザーが通勤・帰宅時に利用している。ロサンゼルスでは、ユーザーの40%がスペイン語版を利用している。2016年夏、ムービットはリオデジャネイロ五輪の公式交通ナビゲーションアプリに認定された。同社によると、アップルやグーグルに競り勝っての認定だったという。目的地まで利用できる公共交通機関がない場合、アプリはシェア自転車サービスを提案することもある。

同アプリの人気は、有名投資家を魅了した。エレズが50万ドルを出資して立ち上げた同社は、セコイア・キャピタル、アシュトン・カッチャーのサウンド・ベンチャーズ、BMWアイ・ベンチャーズなどから約8400万ドルを調達した。ピッチブックによると、同社の評価額は4億5000万ドルに達したという。前出の投資家たちは、1日あたり5億件生成されるデータポイントを含むムービットのリアルタイム交通ナビゲーション情報に、収益可能性を見出した。

これからムービットは、それらのデータをどうキャッシュにするかを示さねばならない。同社によると、ちょうど今損益分岐点に差しかかっているところで、収益を開示する気はないという。フォーブスの試算では、同社の収益はまだごくわずかだと見ている。しかし、エレズと投資家たち曰く、売上を増加させることは難しくなく、今同社は適切なポジションにいて時勢もよい、と信じている。

世界中の都市は交通渋滞と公害に苦しみ、「スマートシティ」のコンセプトは一層注目されている。あらゆる形態のセンサー、AIやクラウド関連テクノロジーを通じて収集されたデータが、ますます複雑化する都市システムをマネジメントする助けとなるだろう。