先週書いた「Me Too」運動により、演劇界の大御所、演出家のイ・ユンテク氏が告発された後、彼の裏の顔が怒涛のように暴かれ始めている。

 韓国演劇界のために尽くしたという表の顔とは裏腹に、自分が立ち上げた劇団の中で王のように君臨した。

 若い女性団員たちへのセクハラ、性暴力を続け、ある女性団員は彼のせいで望まない妊娠、中絶をしたといった告発もあった。

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同情を買う会見が火に油注ぐ

 これについてイ・ユンテク氏は謝罪会見を行い、セクハラに関しては認め謝るが、決してレイプはなく合意の下でのことであったと述べた。

 それを見た被害者たちはさらなる告発に踏み切った。

 また、イ・ユンテク氏の記者会見は事前に練習を重ね、同情を買えるような演技をしてみせたという内部告発もあり、ついに彼が率いていた劇団は解散、彼自身は演劇協会から除名された。

 だが、それだけではすまなかった。その劇団に関連していた人間国宝もレイプ犯として告発されたのだ。

 韓国の演劇界は現在、告発合戦が続き混沌とした状態に陥ってしまった。

 特に、イ・ユンテク氏が問題視されるのは、彼が文在寅(ムン・ジェイン)大統領の高校の友達であるからだ。

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領のブラックリスト第1号だったと言われるほどで、文大統領が大統領候補の際、応援演説を買って出ている。

韓国の病院に蔓延する「テウム」

 それだけに、文大統領への影響も懸念されていた。しかし、現段階では杞憂のようである。

 さて、韓国では西暦の1月1日を年の初めとしているが、昔ながらの陰暦の1月1日を大事に考え、中国の春節のように連休が組まれている。

 そこで、今年は平昌冬季五輪の開催中である2月16日が旧正月であったが、その日、ある大型病院に勤める女性看護師が自殺した。

 平昌冬季五輪の華やかなニュースに埋もれてしまった事件だったが、婚約者と名乗る男性がネットに彼女の自殺の要因を投稿したことで一躍注目の的になっている。

 それは、看護師たちの中で行われている陰湿ないじめ問題である。

 韓国の医療界では「テウム」と俗称で呼ばれ、現状の韓国医療界で蔓延している風潮だという。

 「テウム」とは、「燃やす」という意味で、先輩看護師が新人の看護師が焼け焦げるまで燃やすように苛め抜くことを意味する。

先輩看護師が新人を延々罵る

 新人看護師が大型病院に就職すると、先輩看護師と一緒にプリセプター(マンツーマン指導を行うためのチーム)を組まされる。

 本当は、そこで新人看護師を先輩看護師が指導するわけだが、実際は指導はあまりなく、ミスをしたりする場合延々と罵られるという。

 特に、今回自殺した看護師は、集中治療室に配属された際、間違って薬を投与したことを苦に自殺してしまった。

 先輩看護師たちの言い分は、「自分も新人の頃は厳しく躾けられた」「普通の会社におけるミスとは違って人の命を左右することだから厳しくて当然」というものだ。

 確かに、通常の会社でミスをしても人の命がかかわることは少ないが、病院でのミスは人の命に直結する。

 だから、いじめられる側もあまり言い返せない。そこにつけこんで先輩看護師が新人看護師をいじめるわけだ。

 なぜ、こんな看護師間での「テウム」が発生するのか。

慢性的な人手不足が原因

 専門家たちは、韓国の全体的な問題として看護師の人手不足を挙げる。しかし、実際には大手病院の構造的な問題に原因があるようだ。

 看護師のきつい仕事や処遇問題によりキャリアを積んだベテラン看護師が病院を辞めていくことが日常茶飯事化していることがまず1つ。

 その際、病院側は新たにベテラン看護師を雇って補充するのではなく、コスト削減のために賃金の安い新人看護師を雇うケースが増えているという。

 つまり、恒常的な人手不足を解消しないために大きなストレスが看護師にたまり、新人の指導にまで手が回らない中で「テウム」が発生しているというのだ。

 韓国看護科学会が発行する学術誌(JKAN・Journal of Korean Academy of Nursing)の最新号によると、新規看護師は2009年の1万1709人から2014年には1万5411人と、32%も増えた。

 しかし、2010年から2015年まで看護師の水準が改善された医療機関の割合は、19.1%に過ぎない。看護師の数は増えても能力が伴っていないのだ。

声を上げ始めた韓国の女性たち

 看護師が増えた調査対象病院の70.1%は看護師水準に変化が見られず、10.3%はかえって悪化したという。

 今回のテウム問題が露呈した看護師業界では、「Me Too」運動と同じく、テウムの被害に遭った人たちがネットを通じて被害状況を訴えている。過酷な労働環境にある女性看護師がネットを使って声を上げ始めたのだ。

 看護師に限らず、今、韓国の女性たちはこれまでの男社会への不条理に対して一斉に声を上げ始めた。韓国ではこうした女性の社会運動が新たな潮流になっている。

筆者:アン・ヨンヒ