「モノのサービス化」は、どのようなビジネスを生み出すのか。


「モノのサービス化」という言葉を、よく目にするようになりました。モノである商品を売り切るのではなく、サブスクリプション(月額や年額などで定額料金を支払う仕組み)や従量課金(電気料金のように使った分だけを支払う方式)で提供し、長期継続的にお客様に使い続けていただくビジネスモデルと理解されています。

 しかし、その本質は、モノを使用する現場とものづくりの現場を直結・連係させることにあります。決して、収益の上げ方が変わるだけの話ではありません。現場の変化やニーズをいち早くものづくりの現場に反映し、現場に成果をフィードバックする仕組みとも言えるでしょう。

 そのためには、人間の意志や操作にかかわらず、センサーによって現場のデータをリアルタイムに送り出し、分析・活用する仕組みであるIoTが不可欠です。

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モノを使う現場にリアルタイムに介入

 また、「モノのサービス化」は「モノのソフトウエア化」を前提とします。

 いま、モノは徹底してシンプルに作る方向にあります。そうすれば開発や生産のコストは安くなります。また、生産地のグローバル展開や変更も容易です。さらにトラブルは少なく、メンテナンスにかかる手間やコストも減らすこともできます。

 その代わり、機能や性能はモノに組み込まれたソフトウエアによって実現しようというわけです。これが「モノのソフトウエア化」です。

 モノがソフトウエアによって機能や性能を実現できる割合が大きくなれば、ものづくりの現場はネットワークを介してアップデートすることで、即座にモノを使う現場に介入できます。つまり、センサーで現場での不具合を直ちに捉え、ソフトウエアを変更することで、即座に修理できるようになるのです。

 また、使われ方のデータを解析して現場のニーズを捉え、ソフトウエアを変更することで、お客様が買った後でも、使用の現場で機能や性能の改善を図ることができるのです。

 このような仕組みが「モノのサービス化」です。つまり、「ハードウエア×ソフトウエア×サービス」が、一体となってモノの価値を生みだすのです。これを収益面で支えるためには、「モノ=ハードウエア×ソフトウエア」を一括で売却してしまっては、それに続くサービスの価値を提供し続けることが難しくなります。

 そこで、「モノ=ハードウエア×ソフトウエア×サービス」を一体として捉え、その全体の価値への対価として、サブスクリプションや従量課金という収益モデルが必要となるのです。

 見方を変えれば、マーケティングとものづくりの一体化とも言えるでしょう。また、お客様のビジネス成果に直接貢献できるものづくりでもあります。

「モノのサービス化」を、モノをサービスのようにレンタルで使用しサブスクリプションや従量課金で収益を上げるビジネスモデルと捉えるのは一面的です。ここに説明した本質があってこそ、モノのサービス化は、その真価をお客様に届けることができるのです。

「モノのサービス化」が新たな競争力に

 このような「モノのサービス化」を生かした、新たなビジネスも登場しています。

(1)ロールス・ロイス

 航空機用のジェット・エンジンを製造・販売する英ロールス・ロイスは、エンジンという「モノ」を販売するのではなく、実際に使用した時間と出力の積に応じて、利用者である航空会社に利用量を請求する「Power by the Hour」というサービスを提供しています。

 エンジンに組み込まれたセンサーが、使用状況や各部品の消耗具合、不具合などを検知し、ネットを経由してそのデータを送ります。そのデータは解析され、修理・点検の必要性を個別に判断し、故障で動かなくなる前に対応できるようになります。

 これにより、より安全な運行が実現し、機材の稼働率が上がることでユーザーの満足度は高まります。さらに保守・点検のタイミングや必要な部品の在庫、エンジニアの稼働が最適化され、サービスコストの削減が可能になります。

(2)ミシュラン

 仏タイヤメーカーのミシュランは、運送会社向けに走行距離に応じて、タイヤの利用料金を請求するビジネスを始めています。さらに、燃料を節約できる走行方法のアドバイスを運転手に提供したり、省エネ運転の研修を行ったりと、これまでのタイヤメーカーではあり得なかったビジネスに踏み出しています。

 このサービスによって、運送会社は投資を抑えることができるばかりでなく、運行コストも削減でき、経営体質強化に貢献することができます。

(3)コマツ

 建設機械大手のコマツは、無人ヘリコプターのドローンで建設現場を測量し、そのデータと設計データを使って、建設機械を自動運転し工事をするサービスを提供しています。

 これまで熟練者に頼っていた精密な測量や難しい工事を、経験の浅い作業員でもこなすことができ、人手不足に悩む業界にとっては大きな助けとなっています。また、現場で変更が生じた場合には、サービスセンターが遠隔から設計データを変更し、建設機械の作業指示データを書き換えてもくれます。

 これらは、モノ単体としてみれば、これまでも売られていた商品であり、決して目新しいものではありません。むしろ成熟した商品として、機能や性能だけでは決定的な差別化を生みだしにくいとも言えるでしょう。

 そこにセンサーが組み込まれネットにつながることで、モノそのものではなく、モノを含むサービス全体が新たな価値を生みだすことで、新たな差別化を可能にしたと言えるでしょう。

「サービスとしてのモノ」は、モノに新たな価値を与え、新たな競争力の源泉になる可能性を与えてくれるのです。

筆者:斎藤 昌義