専業主婦はオワコンなのでしょうか?(写真:プラナ / PIXTA)

結婚生活の理想と現実――。恋愛と結婚は別物であるという意識は、一般的に未婚者よりも既婚者の方が高いのですが、それだけ既婚者は結婚生活の現実をまざまざと経験しているからでしょう。


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今や「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という専業主婦型夫婦の形は大幅に減少し、「共働き・共家事・共育児」というのが現代の夫婦の形とも言われています。

専業主婦世帯と共働き世帯、現在の日本における夫婦の実情を見ると、すでに共働き世帯がマジョリティです。厚労省「厚生労働白書」によれば、1980年から2016年にかけてきれいに世帯数が逆転していることがわかります。ざっくり言えば、専業主婦世帯は共働き世帯の約半分です。

「共働き派」台頭の背景

では、専業主婦という形態はもうオワコンなんでしょうか?

専業主婦世帯と共働き世帯の数が逆転した時期は、ちょうど1990年代のバブル崩壊時期と重なります。共働きを能動的に選択したというより、経済的な理由によって共働きせざるをえない状況に追い込まれたというのが正直なところかもしれません。


さて、実態はそうであるとしても、個々の意識はどうでしょうか? 2014年に内閣府が実施した「女性の活躍推進に関する世論調査」の質問項目の中に、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方への賛否を聞いているものがあります。対象は全国20〜70代未既婚男女3037人です。「賛成」もしくは「どちらかといえば賛成」と回答した人を「専業主婦派」とした場合、その割合は男女でどれくらい差異があるかについて見てみたいと思います。

まず、全年代合わせた結果では、「専業主婦派」が男性46.5%、女性43.2%となり、男女とも4割以上が「専業主婦派」です。男性のほうが若干高いものの、それほど差異はありません。2015年の国勢調査によると専業主婦世帯(夫が就業者で妻が非就業者の世帯)の割合は約36%ですから、共働きでも本音では専業主婦形態を希望する人が男女ともにある程度いるということです。

年代別にみると、やはり男女とも60代以上が高く、高齢男性は半数以上が「専業主婦派」です。70代以上では女性ですら過半数が賛成しています。しかし、20〜50代で見ると、男女ともそれほど差分も変動もなく、ほぼ40%前後になっています。婚姻状態別で見ると、男女とも既婚のほうが「専業主婦派」の割合が高く、いずれも全体平均を上回っています。未婚では女性に比べ男性の「専業主婦派」割合が高いですが、全体的には低い値です。


「結婚への意欲」と「結婚生活の理想」

では、今の未婚男女の結婚生活の理想とは、はたして「専業主婦」or「共働き」、どちらの形態でしょうか? ここで気をつけたいのは、内閣府の調査の未婚は状態としての未婚であり、必ずしも「結婚に前向き」な人たちの意識であるとは言えない点です。「独身の9割が結婚したい」説の根本的な誤解という記事でご説明したとおり、未婚男性のうち結婚に前向きなのは4割にすぎないのです。

そこで、私が主宰するソロもんラボでの2016年調査データを使用します。対象は20〜50代未婚既婚男女2万人です。その中で、「結婚前向き度(未婚者20〜30代のみ抽出)」と「結婚生活形態に対する希望(既婚者は20〜50代対象で、現在の状況に関係なく望ましい形態)」を聞いています。

今回、そのふたつの設問をクロス集計して、結婚に対する意思の前向き度と結婚生活後「専業主婦派」なのか、「共働き派」なのかを明らかにしてみました。対象エリアは1都3県(千葉・埼玉・神奈川)となるため、対象が全国の内閣府の傾向とは多少違います。

※結婚前向き度は、「結婚する予定がある」「絶対に結婚する」「結婚したい」を前向きとし、「今は結婚するつもりはない」「結婚したいと思わない」「結婚しないつもりだ」を後ろ向きとしました。「現状結婚したいかどうかわからない」は除きます。


結果を見ると、結婚したい未婚女性は過半数の51%が「専業主婦派」であるのに対して、結婚したい未婚男性は56%が「共働き派」であることです。結婚したい未婚者に限ってみると、男性より女性のほうが「専業主婦」志向でした。

婚活の現場では「専業主婦になりたい女性」と「専業主婦になってほしくない男性」とのせめぎ合いが繰り広げられることがありますが、これは、「独身男が『結婚コスパ悪い説』を信奉する理由」の記事でも紹介したように、男女において結婚のメリットが相反し、かみ合っていないため起きる現象です。

経済的メリットのために女性は結婚したがるのに対して、経済的デメリットのために男性は結婚を避けるという構造で、未婚化が進んだひとつの要因でもあります。ちなみに、結婚する気のない未婚男女は互いに「共働き派」が6割で、非常に気が合っているといえます。

しかし、一番興味深いのはそこではなく、既婚者と未婚者との違いです。既婚男性は「専業主婦派」54%と過半数を占め、結婚したい未婚男性より14ポイントも高い結果になりました。一方、既婚女性は61%が「共働き派」で、結婚したい未婚女性より13ポイントも高いのです。未婚と既婚とでなぜその意識が正反対になるのでしょうか。

年収別に見た「理想の結婚生活」

その前に、年収階級別の意識の違いも見てみます。「専業主婦」を志向するにはそれなりに夫の経済力が必要となるからです。本人の年収によって「専業主婦」意識は変わるのかどうか、世帯年収ではなく個人年収で見てみます。


未既婚問わず、完全に男女で異なります。男性は年収が上がるほど「専業主婦派」が増え、女性はその逆です。明らかなのは、結婚したい未婚男性はその年収の多寡に関係なく、圧倒的に「共働き派」が多いということです。決して自分の年収が低いから「共働き派」ということではないようです。むしろ女性が個人年収300万円を超えると未既婚関係なく「専業主婦派」が激減する点が気になります。つまり自ら稼いでいる女性は「専業主婦になりたくない」のです。

今回の調査で明らかになったのは、未婚と既婚、男性と女性の意識が正反対であるということです。これは未婚者の「結婚生活の理想ルート」が現実を前に大きく迂回を余儀なくされているということです。

データ上、未婚男性は年収の多寡に限らず「共働き派」が多数ですが、はたして「子育て」というハードなタスクを抱えたときも考え方が変わらないのかは不明です。むしろ未婚男性に限らず最初の子が生まれるまでは既婚男性ですら、子育てというものをあまり自分事としてとらえていないように思います。

夫婦全体での専業主婦率は36%ですが、これは子の有無を勘案しない全体の数字です。末子が0歳の時の専業主婦率は61%、1歳の時も52%です(2015年国勢調査より)。子どもが小さい時には、過半数の夫婦が専業主婦形態をとらざるをえないというのが現実なのです。

既婚者たちはそうした現実を経験したうえで、「やはり育児と仕事の両立は大変だ」と「専業主婦派」に鞍替えする層もいるでしょう。結婚前の希望や理想は、結婚生活という現実の前にいや応なく修正を迫られ、適応した姿が現在の共働き世帯の多さではないかと思います。

「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という専業主婦型の考え方にしても、それを時代遅れの価値観と切り捨てられません。夫婦それぞれの事情の中で了解し合い、互いに相手の役割を尊重していかれるなら、むしろ専業主婦型は理にかなった形態かもしれないからです。

「働く専業主婦」にならないために

一方で、子が生まれても仕事を継続したいと願う女性もいるでしょう。そうした場合に、夫婦だけの閉じた世界だけで解決しようとすると、結局どちらかの(多くは妻側の)自己犠牲の上に成り立つ解決策しか生まれません。見かけ上「共働き」であっても実質「働く専業主婦」となっている女性も多いでしょう。

極端な話、家事や育児という部分をすべて家事代行サービスやベビーシッターに外注してしまうという発想もあると思います。もちろん、そのためには、社会的制度による費用負担の改善、企業側の協力意識、サービス事業者側の安全面、など検討すべき課題は山積みです。

が、夫婦間での無償行動だけしか解決策がないと窮屈に考えず、「外注できるものは外注していいんだ」という考えも選択肢とする。そのために夫婦二馬力で共働きする。夫婦間だけの自己責任論にするのではなく、外とつながり稼いだおカネを循環して解決していく。そんな方向を模索していくべき時期がそろそろ来ているのではないでしょうか。