スウェーデンのタブロイド判全国紙「アフトンブラーデット(Aftonbladet)」のデジタル版は、サブスクリプション登録数で欧州でも有数の成功を収めている。

北欧のメディア大手シブステッド(Schibsted)傘下の同紙は、デジタル版のサブスクリプションプログラムを2003年に開始。現在、月額は7ドル〜12ドル(約750〜1280円)で、登録数は25万件に上っている(世界第1位のニューヨーク・タイムズ[New York Times]は155万人、日本の第1位は日本経済新聞で50万人)。スウェーデンの人口が約1000万人であることを考えるとなかなかの数字だ。先日発表した最新の財務状況によると、アフトンブラーデットは2017年、広告とサブスクリプションを合わせて2億5500万クローナ(約34億円)の収益を上げている。

アフトンブラーデットはフリーミアムモデルであり、300名の編集チームが作る一般ニュース記事とオピニオン記事は、すべて無料でアクセスできる。加えてプラス版に登録すると、突っ込んだ特集、舞台裏からの論説、深掘りした記事など、同紙が制作する記事がすべて届くようになる。アフトンブラーデットの全コンテンツのうち、プラス版登録者限定のものは6〜8%だ。こうしたプラス版向けプロダクトには、同紙編集チームのほとんどが記事を寄稿しており、さらに、16名からなるプラス版専任チームがあって、ニュースレターやプロダクトを制作したり、必要な場合にはフリーランサーを活用したりしている。プラス版登録者向けの記事は、毎日、25本ほど作られている。

82%がダイレクト流入



アフトンブラーデットは、どんなタブロイド判全国紙もそうであるように、一般ニュース、エンターテインメント記事、およびライフスタイル記事の掲載が多い。無料で読める記事は、「オランダ外相が辞任――プーチン氏との会合の発言は嘘だった」「物乞いの男性、資金洗浄で捕まる」といった、典型的なタブロイド仕立てだ。スポーツ記事は、登録者を増やすのに特に有効なことが判明しており、プラス版に登録すれば、「Sportbladet」の電子雑誌など、スポーツ関連の追加プロダクトを利用できるようになる。

タブロイド判にありがちなクリックベイト風の見出しは、Facebookで成績がよい傾向があるが、アフトンブラーデットはFacebookのトラフィックに依存していない。Facebookをはじめとするプラットフォームで記事を公開してはいるが、全トラフィックのうち、なんと82%が直接のトラフィックなのだ。

記事500本のプラス版は、1カ月の試用期間は1クローナ(約13円)で、その後は月額59クローナ(約780円)になる。プラスプレムアム版は、1カ月の試用期間は同じく1クローナで、その後は月額99クローナ(約1320円)。プラスプレムアム版に登録すると、ボニア(Bonnier)傘下の動画オンデマンドサービス、SFエニータイム(SF Anytime)とアフトンブラーデットの提携による映画の無料ストリーミングや、旅行ガイドのダウンロードといった特典がある。

CRMチームと密接に強力



プラス版の編集長、テッド・クディノフ氏によると、サブスクリプション成長の中核は、すべての部門に与えている登録コンバージョンの厳格な日次目標だという。ただ、具体的な目標数や、昨年の成長スピードについては、クディノフ氏は明かそうとしなかった。

「我々はこれを4年間続けている」とクディノフ氏。「日次目標は顧客ベース拡大に大きな役割を果たしてきた」と、同氏は語った。

当然、プラス版のチームが編集やプロダクトに取り組む際には、データ分析も中心的な役割を果たしている。シブステッドが開発した社内テクノロジーを使うことで、アフトンブラーデットでは、無料読者と有料登録者のどちらについても読む習慣を綿密にモニターできる。プラス版チームは、トラフィックが多い無料記事を調査し、トラフィックが大きく上昇している話題について、登録者限定の完結したニュースレターを別に制作することが多い。

「うちのジャーナリストたちは、その際、CRM(顧客関係管理)チームととても密接に協力している」と、クディノフ氏。「たくさんのトラフィックを集めている話題のほか、登録者へのコンバージョンに成功している話題がダッシュボードから分かるので、これを踏まえ、そうした話題が中心のニュースレターを制作している」。

世界でも類をみない成功



サブスクリプションで提供するコンテンツには動画も増えている。クディノフ氏によると、動画の本数はニュースの話題によって決まることが多いので、1日ごとや1週間ごとの制作本数を出すのは難しい。たとえば、プレミアリーグの開幕といったフットボールの日程の重要な出来事に合わせて、動画の制作を増やしているのだ。アフトンブラーデットは、スポーツのストリーミングの権利は一切持っていない。しかし、プレミアリーグのチームや地元スウェーデンのフットボールリーグを中心に、専門家によるスポーツ解説に力を入れている。動画のなかには45分間におよぶものや、有料会員限定のものがある。クディノフ氏によると、エンターテインメントなど、ほかの分野についても、プラス版登録者向けの動画制作をアフトンブラーデットは拡大していく計画だという。

アフトンブラーデットの有料登録数は、どの基準に照らしても大きく成長している。たとえば、英国なら、人口が6500万人なので、アフトンブラーデットの有料読者は150万人に相当し、米国なら、人口が3億2000万人なので、サブスクリプション登録者が800万人ほどいる計算になると、ロイタージャーナリズム研究所(Reuters Institute for the Study of Journalism)のリサーチディレクター、ラスマス・ニールセン氏は推計した。

「アフトンブラーデットのデジタル版でサブスクリプション登録が目覚ましく増えているのは、大衆紙であっても質の高いコンテンツにお金を払ってもらえるという、本当に励みになる証拠だ」と、ニールセン氏は語る。「エリート向けや高級志向のものでなくても、アイデンティティが明確で熱心なオーディエンスを獲得してさえいれば、サブスクリプションモデルはうまくいくのだ」。

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)