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●Web × IoT メイカーズチャレンジ 2017

○Web × IoT メイカーズチャレンジ 2017

2018年2月17、18日に「Web × IoT メイカーズチャレンジ 2017 in 前橋」のハッカソンが、前橋市の前橋問屋センター会館にて開催された。「Web × IoT メイカーズチャレンジ 2017」は、全国5都市で開催され、前橋はそのうちの1つである。主催は、Web × IoT メイカーズチャレンジ 2017実行委員会と総務省で、総務省「IoT 機器等の電波利用システムの適正利用のためのICT人材育成事業」として実施されている。前橋大会では、運営事務局として、公益財団法人KDDI財団、一般社団法人WebDINO Japanが担当した。

前橋大会では、1月20、21日にハンズオン講習会、さらに2017年12月17日には、JavaScript初心者のために「はじめてのJavaScript 1DAY講習」も開催されている。一般的なハッカソンならば、技術力や完成度を競うことが目的となる。しかし、今回のハッカソンでは、実際に「一定期間内にチームでモノを作ってみる」というハッカソンでの経験により、参加者に学びの機会を与えることが目的であった。

さらに、ソフトウェアだけでなく、ハード(電子工作を含むハードウェア制作)とソフトの両方の知識があり、プロトタイピングのできる人材の育成も目標の1つであった。詳細は、公式ページを参照してほしい。

前橋大会では、Raspberry Pi 3上のWebブラウザでプログラミングと実行が可能なIoTプロトタイピング環境「CHIRIMEN for Raspberry Pi 3」が教材となった。今回のハッカソンでは、この環境下で物理デバイスをJavaScriptからコントロールする作品制作を課題とした。

具体的には、以下の条件が示された。

ネットワークサービスの連携、もしくはネットワークからのコントロールが可能なこと

Raspberry Pi 3を使って、Web GPIO APIあるいは Web I2C APIのいずれかを利用すること

審査基準は、以下の通り。

ソフトウェア・ハードウェアの実装力

アイデアの独創性・ユースケースの有用性

無線の活用度

プレゼンの良し悪しやビジネスへの応用は評価外である。また、1チーム25,000円までの材料費の補助が行われた。さらに、教材のRaspberry Pi 3が1チームに1台贈られる。

本稿は2日目のようすをレポートしたい。当日は、ファシリテータの前橋工科大学院工学研究科准教授の松本浩樹氏の開会の挨拶からスタートした。

●各チーム紹介

○各チーム紹介

前橋大会では、7チーム合計26名が参加した。参加者にスキルアップの機会を提供するハッカソンということで、大半がハッカソン未経験者や開発経験の浅いメンバーが多かった。

ハッカソンの作業が始まって目を引いたのは、若手エンジニア向けスキルアップのハッカソンらしく学生チューター以外に運営関係者もメンターとして加わり、積極的に参加者からの質問やトラブルに手厚く対応していたことである。なかには、イベント主催の運営委員長のKDDI高木悟氏やWebDINO Japanの代表理事・瀧田佐登子氏がみずから作業に勤しむ姿が見受けられた。

では、非常に簡単ではあるが、各チームの作品を紹介したい。まずは、Team A:生徒の味方の、API実装型授業高質化である。

授業の進行速度が合わないとき、生徒から直接、先生へ伝えるシステムである。生徒は、フットペダルを踏むことで、速すぎるや遅いといった感想を伝える。先生側は、PC画面だけでなく、LEDディスプレイでイメージ的にその情報を受け取ることができる。残念ながら、カメラが壊れデモはできなかったが、emotionAPIを使い、生徒の表情から授業の感想をデータベースに送ることも目指した。

チームの重森海斗氏は「予想しなかったことが起こったけれども、楽しかったです」とハッカソンの感想を語っていた。

Team B:あんぱんまんは、お知らせだるまくんと洗濯物を作成。

洗濯物が乾いたことを、だるまが暴れながら「かわいた」としゃべることで、お知らせする。洗濯物が乾いたかどうかの判定は、圧力センサーで検知する(乾燥すると軽くなる)。だるまの中と、圧力を調べる装置にそれぞれRaspberry Pi 3が入っていて、WebSocketで通信する。だるまの暴れ方が、なんともユニークな作品であった。

チームの古田樹男氏は、「最初はまったくわからない状態で参加したので不安でした。やり始めてみると、意外と最初の目標にしていたものに近づいてきたので、やってみるものだと思った」と、ここまでの感想を語ってくれた。

Team C:カーヴスは、センタクファイター vs 雨風を作成。

群馬では強風や秋のにわか雨が多い。その対策としての作品が、センタクファイター vs 雨風である。センサーを使い、雨や風を感知する。雨が降ってきたり、風が強い場合は、モーターが作動し、洗濯物を室内に回収する。風雨が収まれば、また洗濯物を野外に出す。光センサーも搭載し、洗濯物を最適な角度に調整する機能も実装予定。

Team Cからは、上原瑞歩氏にお話しをうかがった。「ぜんぜん、プログラムがうまくいかなくて、昨日は泣いてました。でも、ようやく一通り書き終わったので、ここから微調整をして、また泣くはめになるのかな。でも、良い経験ができたので、参加してよかったと思います。できなくて泣くのは悔しくて、なんとかできるようになりたい」と、非常に前向きな感想がいただけた。

Team D:前工大は、AQUA SENSORを作成。

AQUA SENSORは、熱帯魚の水槽を監視するシステムである。赤外線センサーでは、水の汚れを感知する。それ以外に、温度、水位、pHセンサーを用いて、水槽の環境を測定する。これらのセンサーは、マイコンに接続され、無線LANを経由してRaspberry Pi 3に送信される。Raspberry Pi 3では、受信したデータを解析してホームページでグラフを表示させる。あらかじめ設定した値から外れると、警告を発する。

Team Dでは、今村宏輝氏にお話しをうかがった。「今は、HPの微調整をしています。参加した感想は、とてもラフな感じで、緊張せずに自分の作りたいもの作れたと思います」と、語っていた。作品は、実用度の高い仕上がりになっていた。

Team E:繁盛感知!招き猫は、商売繁盛の縁起物である高崎の工芸品招き猫をモチーフとしたIoT作品である。

Team Eでは、音に注目した。音を検知して、それに対し音を返すIoT作品を考えた。お店が賑わっていると、当然、さまざまな音が発生する。この作品では、そういった賑わう音をセンサーで検知して、「ニャー」と鳴く。

Team Eでは、酒井優氏にハッカソンの感想をうかがった。「プログラミングを始めて6か月程度ですが、今までは画面の中で計算をしたり、写真を表示させるくらいでした。プログラミングでモノを動かす動的な部分にはふれてこなかった。今回は、プログラミングを使って音を感知して、それが音という動きになることが体感できたことが大きい。また、これまではんだ付けをやったことなかった。今回、そのスキルが身に付いてよかった」と語っていた。

Team F:チーム フィクサーは、見守りちょうちんクンを作成。

チョウチンアンコウのぬいぐるみに、Webカメラ、マイク、スピーカー、サーボモーターを取り付けたRaspberry Piを内蔵する。目的は、子どもやペット、高齢者の様子をリアルタイムで閲覧(スマホやPC)し、場合によっては、記録として画像保存も可能とした。カメラはちょうちん部分に設置され、サーボモータで向きを変えることも可能。

Team Fでは、和田健伍氏にお話しをうかがった。「あとはうまい具合に調整して、実際に動くかチェックすれば完成です。自分は、こういった開発をするのは初めてで、いろいろなものを受け取り、今後に活かせそうです」と、語っていた。

Team G:トゲアリトゲナシトゲトゲでは、ぐんまちゃん 2.0を作成。

小さなぬいぐるみのなかに、人感センサー、カメラ、マイク、スピーカ、タッチセンサー、温度センサーなどを搭載した。これらのセンサーにより、話ができそうな人がくると、会話をすることができる。作品発表では、実際にぐんまちゃんの指示に従い、焼きまんじゅうを作るデモが披露された。

Team Gでは、赤澤悠太氏にお話しをうかがった。「正直、進捗はあまり芳しくない。今回、初めての参加ですが、普段、ふれることのないものにふれることができたのはおもしろい、2日間、集中してできるのもよかった」とのこと。

●審査結果

○審査結果

2日目、14:30から審査が開始された。審査員は、以下の3名である。

石黒隆氏太陽誘電株式会社 開発研究所 機能デバイス開発部 主席研究員

鎌田一郎氏上毛新聞社 取締役事業局長

高木悟氏Web×IoTメイカーズチャレンジ 2017 実行委員会 前橋運営委員会 委員長KDDI株式会社 技術企画本部 技術開発戦略部 マネージャー

発表は、審査委員長である高木氏から行われた。まず、今回の目的は失敗してもらい、そこから次はこうしたいという楽しみを見出してもらうことだ。その意味では今回、みんな失敗してくれてありがとうございますと、感想を述べた。そして、最優秀賞には、Team AのAPI実装型授業高質化が選ばれた。その理由であるが、100%完成はしなかったが、仕組みやコンセプトがよく考えられている。WebのメカニズムやWebで可能なことを的確にとらえている点も評価ポイントになった。さらに、ブラッシュアップすれば、もっとしっかりとしたものになるのではないかという期待もあったとのことだ。

ここで、サプライズが発表された。最優秀チームには、3月24日に開催される「ぐんまプログラミングアワード」の“ファイナルステージ”で作品発表のチャンスが与えられる。さらに、作品展示も可能となった。また、作品展示も1チームだけでなく、さらにもう2チームにも権利が与えられた。今回は、これを特別賞として、Team Gのぐんまちゃん2.0とTeam Bのお知らせだるまくんと洗濯物に与えられた。

受賞の理由であるが、Team Gは、ハイテクぐんまちゃんの捉え方がよかった。鎌田氏は、においという集客力の高さに大きく期待していると述べた。お知らせだるまくんと洗濯物は、インパクトがあり、ビジュアルが最高であった。一般の方にとって、IoTはまだまだなじみが薄い。しかし、この作品の意味するところは、非常にシンプルでわかりやすい。石黒氏は、優れた作品はシンプルであることが多い、「こんなIoTなら私もできる」という印象を持たせられることも重要であると述べた。

その後、松本氏から参加者に修了証の授与が行われた。

ハッカソンの締め括りとして松本氏から、失敗を探るヒントになるよう、システム設計の基礎が解説された。また、優れたエンジニアに求められる要素などについても話があり、ハッカソンの終了となった。

その後、全員による懇親会となった。乾杯の音頭をとったのは、総務省国際戦略局通信規格課長の中溝和孝氏である。

中溝氏は感想として、大きな可能性を感じた。この経験は、将来、社会人になったときに必ず役に立つだろうと語り、参加者とスタッフの労をねぎらった。最後に、このようなイベントの成功は、地域のコミュニティの熱意が大きい。今後も地方での人材開発の場が広がることを期待したいと述べた。

今回のWeb × IoT メイカーズチャレンジ 2017は、全国5か所、あえて地方で開催されている。都心で開催されるハッカソンであれば、高いスキルと経験を持つ参加者が集まり、また違った盛り上がりのハッカソンになったであろう。しかし、IT系の勉強会やハッカソン自体が多くはない地方での開催で、かつ、若手人材育成にハッカソンという場を活用するとした今回のようなイベントは、参加者はもちろん、運営をサポートする地元関係者にとっても有意義であったように思う。関係者からは、次回も開催したいといった声も聞かれたので、チャンスがあればぜひ挑戦してほしい。